1. TOP
  2. Weps うち明け話

Weps うち明け話 #1190

獲る人、来る人(2024年2月5日)

 

 今季の新加入選手11人(すぐパッと言えますか?期限付き移籍からの復帰を含みます)のうち、石原広教、佐藤瑶大、井上黎生人の3人には共通点がある。

 最もわかりやすいのは、昨季Jリーグベストイレブンに選ばれた右サイドバックの酒井宏樹、センターバックのショルツとマリウスらのポジションに挑戦する形で移籍してきたという点だ。

 「挑戦」と言い切ってしまうのは正しくないかもしれない。3人ともすでに前のチームの主軸になっているか、なっていきそうな存在だったのだから、初めから「下」に見ているような表現は失礼だろう。

 ただ3人とも、挑戦と見られることは百も承知だし、不快感を示すことはない。そして、もう一つの共通点は、3人とも自分が彼らにかなわないとは思っていない。上回っている部分がある、という自信を持っていることだ。

 じゃないとレッズに来ないか。

 

 本人たちのストロングポイントは開幕後のMDPで紹介していくので、今回はそれぞれ別の話を紹介する。

 

 石原は1999年2月26日生まれで、現在25歳。2024年度、つまり今年の4月以降、26歳になっていく学年なのだが、この年代は大久保智明、伊藤敦樹、オラ ソルバッケン、佐藤瑶大、安部裕葵、石原広教と32人中6人もいる今季の「最大派閥」だ。ノルウェー人のオラに「おんなじ学年だよ」と言って通じるのかどうかわからないが。

 このことについて石原に聞くと「最初入ってきてすぐは、喋る人とかにも気を使うから、同い年が5人もいれば誰かしら普通に喋れるし、おそらくこれからシーズンが始まって誰かが悩んだ時とかに助けられるのは同い年の組だと思う」と語っている。

 今後、年齢に関わらずいろいろな選手と、それぞれ違った関係ができていくだろうが、そんな中でも「同い年」というのは自然と仲間意識が生まれるものなのだろう。

 

 佐藤からは面白い話を聞いた。

 彼は国立市生まれで、埼スタへよく試合を見に来ていたらしい。味スタのある調布は素通りだ。お父さんがレッズを大好きで、埼スタの近隣の民家の駐車場を毎回借りていたそうだ。だから佐藤も、レッズサポーターのコールやチャントもよく知っている。

 昨年のJリーグ第28節、9月24日のG大阪戦を覚えているだろうか。パナスタで1-1のあと、ホセ カンテが退場になり、10人になってから2点目、3点目を入れて勝った試合だ。

 あの試合、レッズがリードしている85分に「We are REDS!」コールが出た。そのとき佐藤は「ああ、これが出ちゃったか」と思ったそうだ。それでやる気をなくしたわけではないが、自分がプロになる前、埼スタで聞いていた、いや叫んでいたコールを、敵側の選手としてピッチで聞くというのはなかなかない経験だろう。今季もぜひピッチで聞いて、今度は力をもらって欲しい。

 

 井上にはマティアス監督はどういう人かという印象を聞いた。

 「よく周りを見てるなという印象はあります。いろんな選手のことを見て、優しいですけど、気になるところはどんどん突き詰めていく、ごまかさないという印象があります。挑戦するミスは何も言わないと言ってました」

 そして「常に学ぶとか挑戦するというのは、自分もずっとそうやってきたことです」と語っている。J3の鳥取、J2の岡山、J1の京都と自身の力でステップアップしてきた井上の信条だ。

 

 クラブの視点に立てば、このポジションは、強力な選手がいる一方、今季バックアップの選手が一気に手薄になったポジションでもある。また昨季まで出ていた選手の年齢やコンディションのこともあるし、外国籍選手は引き抜かれやすい。

 万が一、いなくなってからでは遅いわけで、この難しいポジションに今後の成長も見越して、有望な選手を獲得したのは重要な補強だったと思う。

 そして万が一ではなく、彼らが実力でポジションを奪うようなことがあれば、それはまた凄いことだ。そしたらそしたで、海外挑戦のことを考えなくてはならなくなるが。

 

 3人の獲得が発表されたときは、「去年のベストイレブンのポジションに、選手を獲るクラブもクラブなら、来る奴も来る奴だな」とか、一瞬思ってしまったことは隠さないが、今はグッジョブ、と言おう。

 

(文:清尾 淳)