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西野努「神戸大で何が悪いねん!」

第一部 神戸大学出身のJリーガー

① 学歴はいらねえんだよ!

 1999年のある日。

 浦和レッズが負けた試合の後、スタンドから大きな罵声が飛んだ。

「サッカー選手に学歴はいらねえんだよ!」

 その声は本人には届かなかったが、誰に向けられたものかは明かだった。

 西野努。2002年1月に現役を引退。2月からクラブのフロントスタッフとしてあらためて契約を結んだ。

 1993年に新加入し、9シーズンでJ1リーグ107試合、J2を含めた公式戦162試合に出場しDFながら10得点を挙げた。98年には日本代表候補合宿に呼ばれたこともある。誰に恥じることのない、プロサッカー選手として現役生活を終えた。

 しかし西野には9年間、付いて回った言葉があった。

「神戸大出身のJリーガー」

 Jリーグに国立大出身の選手は少なくない。

レッズにとって苦しいシーズンだった1999年。

西野は第1ステージの8試合に先発した。

(写真は93年4月17日・京都戦/駒場スタジアム)

しかし、その大部分は筑波大学だ。

 2001年開幕時のJリーグ登録選手の中で、筑波大学以外の国立大出身者は3人のみ。福岡教育大1人、千葉大1人、そして神戸大の西野だ。

 プロサッカー選手になる際に、いわゆる「学歴」は必要ないが、西野は学歴でレッズに加入したわけでもなければ、学歴があるからJリーグで100試合出場できたわけでもない。大学時代に目を付けられたのは運の良さもあったが、その後は自分の実力でサッカー人生を切り拓いてきたのだ。

「西野?ああ、あの神戸大の…」

 そう言われるたびに西野はつぶやいてきた。

「神戸大で何が悪いねん!見とれよ。そんな形容詞がなくなるくらい活躍したる」

(続く)

 

【メモ】

西野努(にしの・つとむ)1971年3月13日、奈良県生駒市生まれ。県立奈良高校から神戸大を経て93年にレッズ加入。DF。加入1年目にJリーグデビューを果たしたが、その後骨折により約1年半のブランク。95年に復帰した後も出場機会は少なかったが、97年からレギュラーとして復活した。2001年を最後に現役引退。スカウトなどクラブスタッフとして活動。その後、イギリス・リバプール大学に留学しMBA(経営学修士)を取得。以降はOBとしてレッズと関わりながら、スポーツビジネスに取り組み、会社経営、大学の客員教授など多方面で活躍してきた。2019年12月、チーム強化の実務を担当する、浦和レッズ・フットボール本部テクニカル・ダイレクターに就任した。


(文:清尾 淳)