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西野努「神戸大で何が悪いねん!」

第一部 神戸大学出身のJリーガー

③ 大学3年でやめよう

 

話は半年前にさかのぼる。

2年生の秋、高校選手権の県予選で敗れた後、同学年の多くがサッカー部を辞めると言った。3年生進級の前から大学受験に備えるためだ。

「おまえら、どうせ勉強なんてせえへんやろ。来年の夏までやろうや」

 西野は仲間を引き止めた。自分自身は部を辞める気がなかった。物事を途中でやめるのが嫌だったのもある。サッカーが好きだったこともある。そして友達に言ったように、こんなに早く部活動をやめたら遊んでしまうだろうという予感がしたこともある。

 結局10数人いた同学年の友人は5人だけになった。西野も少しやる気を無くしてサッカー部から足が遠のいた時期もあった。練習を休んでどうしていたのかというと、何のことはない。サッカー部を辞めた友人と遊んでいたのだ。

「あかん。これやったら辞めたのと同じや。部におる間はちゃんとやろう」

 また練習に励みだした西野だった。奈良高校サッカー部はその年のインターハイ県予選でベスト4という成績を収めた。

「これで俺のサッカーにけじめが付けられたな。あのとき辞めなくて良かった」

 インターハイ予選終了後、今度はきちんと退部して、遅れを取り戻そうとがむしゃらに勉強した西野は、志望の神戸大学経営学部会計学科に見事合格した。

 入学後、さすがに受験勉強の疲れが出て、何もせずフラフラしていた西野は、大学で高校の先輩につかまった。

「おお、西野。合格おめでとう」

「はい、ありがとうございます」

「そんならサッカー部に入れや」

「いや、大学では僕、ちょっと…」

「入れや!」

 神戸大のサッカー部には高校の先輩が2人いて、強引な誘いを断り切れなかった。

(まあ、ええわ。2年までサッカーやって、3年になったら辞めて勉強しよう)

 在学中に資格を取る気持ちに変わりはなかった。

(続く)

 

(文:清尾 淳)