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- サッカー人生ハーフタイム
西野努「神戸大で何が悪いねん!」
第一部 神戸大学出身のJリーガー
⑤ レッズの合宿に参加
せっかく関西1部リーグに昇格したのだから、大学卒業までサッカーは続けよう。卒業してから勉強して資格を取ろう。
そう人生の設計をやり直した西野だが、さらに次の転機が迫ってきた。
「松下電器のサッカー部(のちガンバ大阪)に練習に来ないか」
西野を含めて神戸大のサッカー部員3人に誘いが来た。
時は92年。翌年からのJリーグ開幕を目指して、各クラブが親会社から独立した法人になり始めたころだった。
西野は、Jリーグが翌年からスタートすることはわかっていたが、詳しいことはほとんど知らなかった。
「まあ3人の中で、俺は3番目やな」
そうするうちに、今度は三菱からも誘いがかかった。
「来年、うちに来て欲しい。その前に雰囲気を知るために夏休みにうちの合宿に参加しないか」
今度は神戸大で西野1人だけである。
「これは、すごいことになったなあ」
2チームから誘いが来たとなると、プロでやれるかもしれない、という思いが湧いてきた。しかし今度は父親もさすがに反対した。
「1~2年でクビになるかもしれんけど、せっかく誘われたんやから、やってみたいんや」
実は、自分ではもう決めていた。
(どうせ、すぐに駄目になる。それから資格取っても遅うない)
結局、父親はあくまで本人の希望を優先してくれた。ガンバかレッズか。行き先は決まらないが、プロ入りの決意をして8月、三菱調布グラウンドで行われたレッズの合宿に参加した。
「おまえ、神戸大だってなあ。おれはおまえらの大学に負けて2部に落ちたんだよ」
「なんや、この人?」
いきなり怒鳴ってきたのはGKの土田尚史だった。土田は大阪経済大学出身で、在学中に神戸大との1部2部入れ替え戦に負けて2部落ちしたことがあった。もちろん4歳下の西野には関係ない。土田流新人歓迎のあいさつだ。
「おお、奈良の田舎モンか」
同じ関西出身の望月聡も親切だった。
(あんた、滋賀やろ。よっぽど田舎やで)
ムードは良かった。
(続く)
(文:清尾 淳)