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西野努「神戸大で何が悪いねん!」
第三部 メモリアルゲーム
③ レギュラー獲得と初ゴール
Jリーグデビューから5シーズン目で 初ゴールを挙げ、勝利に貢献した西野 (左から2番目、1997年4月16日/清水エスパルス戦)
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西野努は現役時代にJリーグで通算10点を挙げているが(うち4点はJ2)、初ゴールはデビューから5シーズン目で、出場36試合目だった。
1997年4月16日、日本平スタジアムでの清水エスパルス戦。レッズはこの年からホルスト・ケッペル監督が指揮を執り始め、開幕戦に惜敗。第2節に臨んでいた。
西野は初戦でベンチを温め、この試合でも控えに回っていたが後半9分、DFバジール・ボリに代わって出場。ピッチに出た9分後だった。
レッズのCKがクリアされたのを、FW岡野雅行が拾って再びゴール前に入れる。FW佐藤太一が競り合い、前線に上がってきた西野の前にボールがこぼれてきた。このときの左足の一振りが、自分のJリーグ初ゴール、そしてチームの決勝点となった。
その前年、ほぼ1シーズンをサテライトで送った西野は、原博実コーチ(のちレッズ監督、現Jリーグ副理事長)に、ヘディングを徹底的に鍛えられた。現役時代「アジアの核弾頭」と呼ばれるほどヘディングの強いストライカーだった原コーチは、西野に得点を狙わせた。
「セットプレーになったら、お前みたいな選手がゴールを狙わなきゃ駄目なんだ」
点を取るのは前線の選手の仕事、と大学時代からゴールを挙げたことがほとんどない西野だったが、考えが徐々に変わってきた。
地道な努力が実を結んだのがこの清水戦だったのだ。練習してきたヘディングではなかったが、シュートを狙っていたからこそ、目の前のボールを迷わず蹴り込めた。
「出たら何かやってやろうと思っていた」
初めてヒーローインタビューを受け興奮気味の西野は、帰りのバスの中で次から次へかかってくる電話に大声でそう答えていた。後ろでギド・ブッフバルトがうるさそうな顔をしていたが、何も言わなかった。
これが大きな自信になっていったのは言うまでもない。この試合をきっかけに西野はレギュラーの座を勝ち取った。そして、この年さらに2点を挙げたのだった。
さまざまな意味のある初ゴールだった。
(続く)
(文:清尾 淳)