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土田尚史「クリア!の声が聞こえる」
第四部 レッズの闘将たち
⑧ 「だまって聞け」
監督にとって、選手の気持ちをつかむのは大事なことだが、外国籍選手を把握するのは日本人監督にとって厄介な、しかし重要なことだった。
原が監督に就任した1998年当時は、元スペイン代表のベギリスタイン、現役ユーゴスラビア代表のペトロヴィッチという外国籍選手がいた。ペトロヴィッチは試合中、チームメートが消極的だったりミスを続けたりすると激高することがあった。
ある試合でのこと。前半、レッズはふがいないプレーが多く、ハーフタイムのロッカールームでは例によってペトロヴィッチが騒いでいた。周りの選手に当たり散らし、モノを蹴飛ばしたりする。土田が落ち着かせようとしたが、ミーティングが始まっても怒っているペトロヴィッチに原が一喝した。
「うるせえ! 黙って聞け!」
ふだんの原は軽口が得意な明るい性格だが、怒るときは怒った。特に選手が試合で闘志を見せないと納得しなかった。自分自身が現役時代にファイティングスピリッツを前面に出してプレーするタイプだった。
「おまえら、やる気あんのか!」
選手の動きが悪い前半を終えて、ハーフタイムにそう怒ったこともあるが、その試合は後半2点を入れて勝った。
98年は第2ステージ3位と、チーム最高位タイの成績を残した原だったが、99シーズンは苦難の道を歩んだ。
1999シーズンヤマザキナビスコ杯大分戦に勝利した後、 解任が発表された原博実監督(6月19日)
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開幕戦こそ勝利したものの、その後思うように勝点が伸びず、第1ステージを3勝4分け8敗の13位で終えた。この年から導入されたJ1・J2自動入れ替え制度(年間15位と16位は来季J2に降格)がレッズの前にクローズアップしてきた。
土田はこの年、リザーブからのスタートで、そろそろ出番かというときに左足を骨折してしまい、リハビリに努めていた。
6月19日、ヤマザキナビスコカップ大分トリニータ戦を見に駒場スタジアムにやってきた土田は、そこで原の監督解任を聞かされた。自分が試合に出て負けるより、ケガで何もできなかったことがつらかった。
(続く)
(文:清尾 淳)