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Weps うち明け話 #1029

あと3週間(2020年6月12日)

 

 J1の再開が近付いてきた。

 レッズの初戦は、噂には出ているが正式発表の6月15日(月)までに変わる可能性もあるだろうから、それは決まってから考えよう。

 

 どうしても変わらないこと。

 それは少なくとも4日(土)の再開幕戦と、もしかしたら8日(水)にあるかもしれない再開2試合目は無観客試合だということだ。どのチームのサポーターにとっても残念なことだろうが、自分勝手な見方をすれば、無観客試合によってホームゲームのアドバンテージが一番なくなるのは浦和レッズではないか、と思う。理由はくどくど述べない。

 

 そこについて、選手はどう考えているか。きょう12日(金)に長澤和輝のテレ記者会見があったので質問してみた。

 長澤も当然、いつもと違う雰囲気であることを想像していたようだが、そのことで「レッズに不利だ」などと言うのではなく、中断・自粛期間中も多くのサポーターが選手個人を、クラブを支えてくれていることは知っているし、スタジアムには来られなくても、テレビの前で応援してくれていることはわかっている。だからこそ「この機会にサポーターとの絆を再認識したい」と結んだ。

 

 なるほど。姿が見えないからこそ、声が聞けないからこそ、絆を強く意識したい。いい言葉だ。

 そこで、ふと思うのだが、Jリーグは無観客試合でのサポーターの横断幕を禁止した。感染予防の観点からということだが、「無観客試合は最後の手段」と以前から言っていた村井チェアマンなら、声が届けられないならせめて横断幕を、とサポーターが願う気持ちは肌感覚で理解しているはずだ。

 だから「禁止」する前に、横断幕掲出の手段はないか、再検討してもらえないものか。たとえば、幕の所有者による消毒とクラブが受け取ってからの二重消毒とか、大きさの制限とか、搬入の仕方や時期とか、サポーター自身とクラブの努力によってこれがクリアできるならば、という条件を設定できないだろうか。

 もちろん横断幕だけがサポーターの気持ちを表現するアイテムではないが、間違いなく重要なツールの一つだし、選手に「ホーム」の雰囲気を味わってもらい、サポーターの後押し=絆を実感してもらうのに有効な方法だと思う。

 一方で新潟が企画している、段ボール人形をサポーターに購入してもらい本人が思い思いにアレンジして、スタンドに設置するという方式は、レッズにはどうかなと思うが、ユニークだし面白い。ただ、これも一度はサポーターの手に渡ることになるのだが、横断幕との違いはどこなんだろう。抗菌素材?

 

 もう一つ。試合が近付いてきて、浮上してきた思いがある。

 クラブも今季の経営が大変だろうし、選手ももちろん大変、ファン・サポーターも生活が大変、とにかく社会全体が大変な中でのJリーグ再開。しかも4か月という中断のあとだ。

 闘う選手たちは、通常のシーズンよりはるかに大きなものを背負うことになるのではないか。選手にプレッシャーをかけることになるが、長澤なら大丈夫だろうと思い、その覚悟について質問してみた。

 長澤は、ブンデスリーガの再開によって「街が活気づいた」という感想が述べられていることを例に挙げ「スポーツの価値はそこにある」と語った。

 

 これを聞いて思った。

 今回のコロナ禍によって、いろいろな制限解除後も生活様式が変わる、と言われている。

 Jリーグもそうだと思う。もちろん無観客試合や制限入場、感染予防措置などの変化はあるが、それ以上に、4か月の試合無し期間を経ての「Jリーグがある日常」への移行は価値観の変化を伴うはずだ。これまでは試合の勝敗に重きが置かれがちだったが、試合があることそのものへの価値観が相対的に大きくなるだろう。

 その後、試合を経ていくと再変化があるかもしれないが、大きくなった「試合があることの価値」を下げないためには、結果がどうあろうと勝利に向けて両チームがこれまで以上の気持ちを見せて闘うことだろう。

 やはり選手には相当な覚悟が必要だ。

 

(文:清尾 淳)