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Weps うち明け話 #1035

ONE HEART MATCH(2020年7月9日)

 

 

 6月の終わりごろ、スーパーやコンビニ、食料品店で立て続けにエコバッグをもらった。以前からも折りたたみ式のエコバッグを持ち歩いているのだが、ミルクボーイ風に言えば「こんなん、なんぼあってもいいですからね」、事務所に一つ、玄関に一つ、と重宝して使っている。

 そんなこんなでエコバッグに対する関心は高い方だ。だから、こんな写真に反応してしまった。

 

 

 え、トート? エコバッグのことか?

 

 あるJ1のホームゲームで、最寄り駅にあった表示だ。

 くれぐれも言っておくけど、このミスをあげつらうのが目的ではない。言いたいことは別にある。

 ここから類推できるのは、「リモートマッチ」という言葉が一般にはまったく(だから(無観客試合)と注釈が必要になる)、Jクラブにもあまり浸透していないんだろうな、ということだ。だから間違えたまま出してしまったんではないか、と。違ったら申し訳ないが。

 

 無観客試合という、ペナルティーの語感がある言葉を使いたくない、ということでJリーグが定めた「リモートマッチ」という名称だが、正確に今回の無観客試合を言い当てているとは思えなかった。募集していたので、ぼくも考えたが「MKG」とか「NPM」しか浮かばなかった。無観客試合は無観客試合だから。

 

 浦和レッズは「ONE HEART MATCH」という名称を使うことにした。別にJリーグにさからう意図ではないだろう。たとえば選手と手をつないで入場する子どもたちは一般的に「エスコートキッズ」だが、レッズはこれを始めたとき「フェアプレーキッズ」と名付けた。相手チームの選手に花を一輪渡して去って行くことで「フェアプレーでやりましょう」というメッセージを発しているのだ。

 

「ONE HEART MATCH」と聞いたときには、何でも英語にしなくても…と思ったが、「心を一つにする試合」を短い日本語でどういえばわからない。「一心戦」となるのだろうが何か変だ。「ONE HEART MATCH」は英語としては正しくないかもしれないが、日本人には通じる。昨年ラグビーで合言葉になった「ONE TEAM」も直訳すれば「1チーム」でしかないが、あのときの日本人の心情を的確に表わしていた。造語するときに外国語を使わせてもらうのは何かと便利だ。

 

 そして7月4日(土)の埼玉スタジアムを見たとき、「ONE HEART MATCH」という言葉が自然と浮かんできた。そしてクラウドファンディングの高まりなども含め、この期間の一連のキャンペーンに付けられている「ONE HEART TOGETHER!」というキャッチフレーズも、うまくハマっているなあ、と感じた。2006年から、シーズン後半の盛り上げのためにレッズは「ALL COME TOGETHER!」というキャッチを10年ぐらい使っていたと思うが(え、今も使ってる?)、それを思い出した。

 

「ONE HEART MATCH」も「ONE HEART TOGETHER!」も「ALL COME TOGETHER!」も、共通して言えることは、本来は浦和レッズとして常に大事にしなければいけないことを文字にしている、ということだと思う。だから文字にはしていないが「今こそ」という言葉が頭に付いているはずだ。

 常に心を一つにして闘っているが、今こそそれを意識しよう、と。

 

 無観客試合は昨日の第3節で終わった。「リモートマッチ」はもう使われないだろうし、そういう状況になって欲しくない。

 だが浦和レッズの「ONE HEART MATCH」はこれからも続く。入場者が5千人以下の試合でも、半分以下の試合でも。いや通常開催に戻っても、レッズのホームゲームは常に「ONE HEART MATCH」だ。

 スタジアムに来ている人も、来られない人も、テレビでも見られない人であっても、日本全国と海外にもいるレッズのファン・サポーターは、いつも心を一つにして闘っている。闘わなければいけない。

 今回のコロナ禍で、あらためてそのことを気づかせてくれた、と思う。

 

 さあ「ONE HEART MATCHDAY PROGRAM」の追い込みだ。12日もお楽しみに。

 

EXTRA

 昨日の仙台戦は取材許可が出たので、4か月ぶりにさいたま市を出たし、6か月ぶりに新幹線に乗った。2週間検温を続け(最近は毎日測っている)、しっかり体調管理しながらの取材だったが、少し緊張した。4か月と15日ぶりにレッズの勝利の瞬間に立ち会えた。いつもなら記者席の周りの赤い人たちの中に知り合いを探したり、ゴール裏を双眼鏡で見たりするのだが、それがなく非常に寂しかった。また試合中に感想を述べ合ったりプレーについて確認し合ったりする記者が近くにいないのも勝手が違った。記者席が広く使えたのは少し良かったが。

 第4節から、記者の取材枠25人がスタジアムの状況により最大50人まで引き上げられることになった。埼スタも50人枠になるから、今度は取材に行けるチャンスが広がりそうだ。ただし優先順位の高い新聞などの枠が一社一人から一社二人に引き上げられるので僕にまで枠が回って来るのが確実になったわけではない。もうそれは納得している。自分が入れないほど多くのメディアが、埼スタに取材に来てくれるなんて、喜ばしいことじゃないか、と。

 みんな、闘えるエリアで精いっぱい闘うしかない。ただし闘うエリアを広げる努力は常にしていきたい。

 

(文:清尾 淳)