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Weps うち明け話 #1041

勝利への執念(2020年8月21日)

  

 Jリーグ元年を思い出した。

 1993年8月4日(水)、Jリーグニコスシリーズ(第2ステージ)第3節、ガンバ大阪戦。浦和レッズはアウェイの万博競技場で勝った。

 Jリーグが始まって、レッズはこれが通算5勝目。前節はホームで横浜マリノスに0-0の末PK勝ちしており、これが初めての連勝だった。そしてアウェイでの勝利も初めてであり、シーズン開幕戦でケガをして調子が出なかった柱谷幸一のシーズン初ゴールによる1-0の勝利だった。

 

 連勝って良いもんだな、自信が湧く。

 それまではいつも、初めて来たスタジアムから肩を落として帰っていたが、アウェイで勝つのはホームとはまた違った気持ちの良さがあるんだな。

 前節は0-0からのPK戦で何とか勝ったが、今回は点を取っての勝利。前進してるじゃないか。

 

 27年前は、そんなことを感じたものだったが、一昨日の8月19日(水)も、似たような思いがあった。

 もちろん今季初めての連勝ではないし、前節はPK勝ちでなく1-0だった。武藤の今季初ゴールはうれしかったが決勝点ではなかったし、アウェイ初勝利でもない。ディティールはいくつも違うところがある。

 完全に同じなのは、水曜の夜、アウェイでガンバに勝って、ウマい酒を飲んだ、ということ。と言っても当時は居酒屋だったが、一昨日はホテルで部屋飲み。そうそう、たしか27年前のこの日、大阪の「ウーロンハイ」はウイスキーのウーロン茶割りだと知った。今ではどうなんだろう。

 

 昔話はそれくらいにして、現在レッズは4位。4位のくせに得失点差が-2で、その要因を作った名古屋(3位)と柏(5位)に挟まれているのは、あの試合を思い出してしまうが、逆に戒めのためには良いのかもしれない。

 2位のC大阪と勝点1差、3位の名古屋とは勝点差なし。23日(日)の神戸戦で今季初の3連勝を果たせば他会場の結果次第でトップ3入りできる。鳥栖戦が数試合中止になったり、今後はACL出場チームとの試合が前倒しされたりするので消化試合数にバラつきが出てきて暫定順位が多くなりそうだが、見た目でも順位表の位置は大事だ。

 

 広島戦でレッズはとにかく勝利にこだわった。「なりふり構わず」と言っても誰も怒らないだろう。

 G大阪戦では、前線からプレスをしっかり掛け攻撃にも時間を割いたが、全体としては相手の攻撃の時間が長かった。

 2試合とも文字にすれば「劣勢の試合をモノにした」と言える。内容やボール保持率では相手が上回っていようと関係ない。とことん勝利にこだわって戦った結果、望みどおり勝ちを収めた、そのことが今のレッズにとって重要だ。

「今のレッズにとって」というのは、清水戦で終了間際に追い付かれ、ルヴァンカップ敗退が決まり、名古屋に2-6と大敗した後のレッズ、という意味だが、これは「今季のレッズにとって」と言い直したい。

 3年計画の初年度。チーム再構築を始めたシーズンだから、戦術の浸透、成熟など、試合内容の向上はもちろん求められる。だが数字的にはっきりしている目標の3位以上と得失点差+2ケタは、成否がはっきり出る。過去3年間、リーグ戦上位から遠ざかっているレッズは、まずそこをクリアしておかなければ計画を進めにくくなる。

 

 正直言えば、常に上位にいた数年前、試合開始早々に相手が1人退場になったりすると、「これじゃサッカーがつまらなくなるな」などと考えていたエラそうな自分がいた。今はとてもそんな余裕をかましているときではない。

 神戸はイニエスタが出られないかもしれないと聞く。「また埼スタには来ないのか…」と残念がる向きもあるかもしれないが、世界的プレーヤーを生で見たい気持ちと、レッズの勝利を見たい気持ち、どっちか一つしか実現しないのなら、間違いなく僕は後者を選ぶ。もっとも、神戸がイニエスタ抜きの10人でやってくれるならともかく、彼の欠場がレッズの大きなアドバンテージになるかどうかはわからないが。

 

 試合に臨む状況はそのときによって違う。名古屋戦の後の広島戦、広島戦の後のG大阪戦、そして2連勝の後の神戸戦。メンタル的には微妙に差があるかもしれないが、ここ2試合で見せた勝利への執念。集中を切らさず守り続けるのもそうだし、相手のミスを見逃さず得点につなげることもそうだ。その執念をより強くして臨んで欲しい。そう、常に必要なのは、凄まじいまでの勝利への執念だ。

 

(文:清尾 淳)