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Weps うち明け話 #1042

今週後半の思考(2020年8月27日)

 

 8月24日、マウリシオとファブリシオの期限付き移籍が発表された。これからも続く長丁場、あの2人がいなくて大丈夫かという懸念と共に、チームに貢献してくれた彼らに何の挨拶もできなかったことが悔やまれる。期限付き移籍とはなっているが、戻ってくる可能性は大きくないだろう。

 その夜、政府が大規模イベントの参加人数制限を、9月末まで再延長すると発表したのを聞いて、おそらくと思っていたが、やはりJリーグもそれを受けて、現在の「上限5,000人」を9月末まで継続することに決定した。7月以降、新型コロナ感染者数がまた増えてきた状況を思えば、半ば予想はされたが、いざ発表されると残念だ。

 23日、レッズが神戸に負けた後に連続してこのニュース。今週の前半は正直、気持ちが凹み気味だった。

 

 そういうときに、物事を悪い方に考えると、なぜかいくらでも先へ行ける。どうしてネガティブなことになると、こんなに自分の発想が豊かになるのか不思議だ。どんなことを思いついたのか、他人を巻き込みたくないのでいちいちは書かない。

 しかし、一方で生来の天邪鬼的性格がある。

 誰が見ても良くない出来事から、ポジティブな要素を発見する努力をしてみた。といっても砂漠から米粒を、夜空から新星を発見するほど難しいものではない。

 

 大規模イベント上限5,000人の継続は、もちろん感染防止が目的だ。引き続き我慢が必要だが、これは半年前に決定したJリーグ公式戦の中止・延期から始まる、「通常開催」を取り戻すためのステップなのだ。完全無観客試合から一段上がり、次の一段がなかなか踏み出せないが、焦って上がろうとして階段を踏み外す―たとえば、Jリーグのスタジアム由来の感染者が生まれ、リーグ戦そのものが再び中止になることを考えたら、慎重にも慎重を期すことは、それほど悪いことではない。再開後約2か月間、一部のクラブで散発的に選手やスタッフに検査の陽性者が出ているものの、スタジアム由来の感染者が出たというニュースが聞こえて来ないのは、クラブもファン・サポーターも予防策を遵守しており、ここまでのステップが間違いではないという証明だと思う。

 今の僕自身の役割としても、スタジアムでの出来事でテレビでは見られないようなことを、このコラムやMDPウェブ版で紹介しないといけないと思っている。神戸戦のMDPウェブ版「tobe tobe REDS」で一部は紹介したが、これからは特にアウェイのときは全身をアンテナにしていよう。せっかくリスク(感染と財布)を冒して行くのだから、たくさんのお土産を持って帰らないともったいない。チームのお土産は勝点3だけでいいが。

 

 マウリシオとファブリシオがいなくなったこと自体は寂しいだけだ。荻原のように、これから大きく成長してくれるに違いないという楽しみがあるわけでもない。

 本来なら空いた外国籍選手枠に新しい選手を、と言いたいが、今のクラブの財政状況から考えて、即戦力の大物を獲得できるとは思えない。2枠空いているからといって誰かで埋めないといけないわけではない。

 そこに期待するのではなく、特別指定選手の2人(大久保智明と伊藤敦樹)も含めた在籍する若手の奮起と成長を望んでいる。多くのクラブで若い選手が活躍しているように、「俺が試合に出て勝ってやる」という野心を持った若者が出て来て欲しい。ブラジル人2人の移籍を、「自分のチャンスが広がった」ととらえて原動力にしてくれればいいと思う。 

 

 そして神戸戦。

 3つの出来事の中で、これが一番悔しい。実際、ここ数試合で一番面白い場面が多かったのではないか。前線からのプレスはG大阪戦以上にやっていた。そこからチャンスも生み出したのに、最後のゴールが決まらなかった。

 負けた試合のあとで、「うちの方が内容は良かった」というのはNGだ。そんな言い訳を繰り返していては、勝点は積み上がらない。

 比べるべきは相手チームではなく、昨日の自分。すなわちレッズが前の試合より向上した部分はどこか、ということだ。これについて、試合後のリモート記者会見での柴戸の言葉を借りよう。

 

「前節(G大阪戦)から、自分たちがボールを持つ展開が見受けられた中で、今節(神戸戦)は自分たちが主導権を握ってしっかりボールを動かして攻撃の形を作っていこうという話は試合前からしていました。話し合っていたことがチームとして共有されていましたし、良かった部分も多かったと思います」

 

 相手とではなく前節と比べて、そして試合前に意思統一したことができていた、と語っている。

 また今季、先制された試合はすべてリードされたまま負けているが、神戸戦では一度は追い付いた。失点すると崩れてしまう弱さがあった時期と比べてどうだろう。

 

「今までは失点して焦って前に行ってしまうことが多かったと思います。今日(神戸戦)に関して言えば、結果的には負けてしまいましたし、1失点後の自分たちのゲームの進め方が周りからどう見えたか分かりませんが、自分たちの中ではやることは変えずに、焦らずにしっかりやっていこうということで共通意識を持っていました。共通意識を持てたということはプラスに捉えていいのかなと思います」

 

 僕も試合を見ていて、前半15分の失点で崩れず前半のうちに追いついたときは、これまでと違うぞ、と感じた。その後の結果は残念だったが、試合運びに関しては前進していると考えていい。

 そしてトーマスのキャノンシュートが攻撃の武器に加わったことも、この試合のプラス部分に勘定していいだろう。同じようなシュートで神戸の山口に決勝点を挙げられたのは皮肉だったが、決勝点の場面は、ミドルシュートが看板の山口に打たせてしまったことが大きな反省材料であり、トミーのゴールの価値を下げるものではない。

 

 最後も柴戸の言葉で締めよう。

 

「次の試合は、勝って内容の話ができるように、必ず勝点3を取りたいと思います」

 

 勝点3を取りながら反省し改善していく。大分戦でその循環に戻して欲しい。

 よし。週の後半で土曜日の試合に向かう気持ちを立て直した。

 

(文:清尾 淳)