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Weps うち明け話 #1044

武富孝介の闘志(2020年9月25日)

 

 9月23日(水)の清水戦。レッズのメンバー表を見て、20日の川崎戦から先発が5人替わっているのは別に驚かなかった。だがリザーブに武富が入っているのが目を引いた。

 今季の武富は途中出場が2回、先発して途中交代が1回。計3試合の出場で、攻撃的な選手としての結果を出したとは言い難かった。ケガ明けでなかなかコンディションが戻らないこともあるだろうから仕方がない部分もあると思いつつ、何とかもっと試合に絡んで欲しいと思っていた。柏時代には、出てくると嫌な選手の筆頭だったからだろう。

 

 この日は、もしかして中2日、中2日で続く3連戦の2試合目で、選手のやりくりのためにメンバー入りしたのかな、と最初は思った。考えれば武富には失礼な発想だった。

 その後で思いついたのは、前回のホーム清水戦(8月1日)でも途中出場していたな、ということだ。あのときは後半36分、1-0とリードした場面で関根に代わって入り、その後40分に同点弾を食らった。試合を振り返って武富が「守備を頭に入れながら攻撃の時は前に行こうという意識でいた」と語っていたのを思い出した。

 

 23日は後半14分にレッズが2-0とし、3点目を狙いながら試合を終わらせようという32分に武富が出場。その直後から激しい前プレスで清水の攻撃を抑え始めた。かなりファウルになる場面もあったが、そのプレーからは「前回と同じ轍は踏まない!」という闘志の炎が見えるかのようだった。34分には、マルティノスの右クロスから、エリア内でシュートを放つ場面もあった。これは惜しくもGKに阻まれ、シュートはこの1本だったが、出場してからの約20分、チームの勝利のために走っていた。今季4試合目の出場で、最も良い出来だったと思う。

 

 今季のレッズは、試合のたびに出た課題を改善しながらここまでやってきた。まだ改善し切れていないものもあるが、上積みされたものは少なくない。それはチームとして成長してきたものと言えるが、今回の武富には個人として「絶対に結果を出す」という強い意志を感じ、その表われであるキレの良いスピードある動きを見た。柏時代の「出てくると嫌なヤツ」が戻ってきたようだった。もちろん相手にとって。

 

 この日、武富自身は満足しただろうか。チームを勝利で終わらせたのだし、チャンスもいくつか作ったのだから、納得はしているかもしれないが、シュートを決められなかったことで満足はしていないだろう。

 明日からのホーム3連戦のどこかできっとまた武富の出番が巡ってくるだろう。そのときは、9月23日の清水戦以上の働きを目標にして、それを実践して欲しい。

 

 チームの上積みには、個人の上積みが欠かせないのだと、あらためて感じた。

 

(文:清尾 淳)