1. TOP
  2. Weps うち明け話

Weps うち明け話 #1048

恩人への恩返しを(2020年10月27日)

 

 借金完済にはあと1点足りなかったが―。

 

 10月24日のC大阪戦。鳥栖戦以降の3試合で内容が結果に表われるようになった浦和レッズの復調が「本物」かどうかを見る指標とされた試合だった。試合前には選手(西川周作)も大槻監督もそういう趣旨の話をしていた。

 C大阪は、レッズよりかなり上の2位であり、リーグ前半戦は0-3で負けた相手だった。その点で、指標とするにふさわしかったし、内容だけではなく結果でも、それまで3試合(鳥栖戦、柏戦、仙台戦)の好成績が本物であることを裏付けた。もちろん上位に勝ったのはまだ1試合だけだから太鼓判を押すには早いが、判子につける朱肉の用意はしてもいいだろう。

 

 この試合でレッズが相手を上回る内容と結果を出した背景には2つのポイントがあると思う。

 1つはハーフウェイラインから前で、相手にプレスをかけ続けたこと。これによりC大阪を相手陣内に封じ込める時間が長くなり、その分ゴール前を脅かされる回数が減ったし、相手に攻撃を組み立てにくくさせビッグチャンスをあまり作らせなかった。またチーム全体に前への意識が強かったこともあり、ボールを奪ってから速く攻めることが多かった。さらに、よく「あれが90分持つとは思えない」と言われる前線からのプレスを最後まで続けたこと。選手交代もしたし、涼しい気候になってきたこともプラス要因だろうが、何よりチーム戦術の柱として選手たちに浸透してきたことが根底にある。

 

 もう1つは、相手のシュートに対してしっかり身体を当てていたこと。仙台戦もそうだったが、C大阪にも少なくないシュートを打たれている。そのうち、カウンターでドリブルする相手を追いかける形になった失点の場面こそ間に合わなかったが、それ以外の局面ではシュートレンジにいる相手に対して、誰かがいち早く前に立ちゴールを隠していた。

 大槻監督は8月29日(大分戦)のwebMDPで「厳しいことを言うようですが、開幕の湘南ベルマーレ戦ではCKからミドルシュートを打たれる瞬間に、ゴール前でボールに背を向けている選手は一人もいませんでした。(中略)ボールに正対するからこそ、身体でしっかりとブロックもできますし、正確にクリアもできます」と語っているが、そういうプレーが根付いてきたのだろう。

 ボールを保持する相手に対して無理に取りに行くことはしないので、その分バイタルエリアで相手に回される時間が続くが粘り強く守り続け、相手がミスするか、シュートがレッズの選手に当たってルーズボールになったところを奪う。奪ってから毎回攻撃につなげられれば最高だが、それはこれからの課題だろう。

 

 次からアウェイが4試合続く。通常ではあり得ないスケジュールだが、今季はそれも仕方がない。

 それよりも今週末の大分戦、3日後の広島戦には共通することがある。それはいずれも、リーグ前半戦でレッズが勝った相手だということ。ここからの試合は、前半戦でレッズが負けなかった相手の方が多いのだが、なかでも大分は、今季初めて逆転勝ちした相手であり、広島は名古屋戦の6失点から立ち直るきっかけとなった相手だ。言わば「恩人」みたいなものだが、2戦目もしっかり勝つことで、さらにレッズの好調が本物であることを示せるだろう。相手はそんな「恩返し」などいらないと言うだろうが。

 

 そして大分も広島も、ビジター席を設けることにしたという共通点がある。席数はまだ少ないし、応援できない状況は変わらないが、これまでのアウェイ戦のような「サイレント・マイノリティー」ではなく、はっきりと「俺たちも来ているぞ」と存在を示せるわけで、スタンドの一角に赤い部分を見た選手たちがそれをどうパワーに変えるか、楽しみでもある。

 

(文:清尾 淳)