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Weps うち明け話 #1049

11月8日、浦和駒場スタジアムで(2020年11月4日)

 

 2009年10月11日、浦和レッズレディースが初めてプレナスなでしこリーグで優勝した日のことは忘れない。

 

 と言っても、その瞬間をスタジアムで見ていたわけではない。その日はアウェイのFC高槻戦で、レッズレディースが3-0で勝利し、2位の日テレ・ベレーザが勝点を落としたため、3試合を残してレッズレディースの優勝が決まったのだ。

 優勝の可能性があった試合だから、アウェイであってもできることなら取材に行っていただろうが、その日は浦和レッズも公式戦があった。第89回天皇杯2回戦(初戦)。そう、当時地域リーグに属していた松本山雅FCにレッズが敗れた日だ。レッズレディースの優勝は、松本山雅戦が終わってしばらくしてから知った。二重の意味で忘れられない日だったのだ。

 

 2009年の優勝の際は、レディースの選手たちが着替えも済ませバスに乗って、さあ引き上げというときにベレーザ戦の情報が入り、「え、じゃあ!?」と顔を見合わせてからバスの中が歓声に満ちたという。リーグ戦ならではの光景だ。

 

 2014年は、シーズン後半に行われたエキサイティングシリーズ(前半戦上位6チームによるリーグ)で優勝し、このときは最終節のホームで決まったのだが、その前節で実質的な決定を見ており、最終節をよほどの大差で負けなければ優勝は動かなかった。しかもその最終節でアルビレックス新潟レディースに0-1で敗れ、集まった5,976人が苦笑いする中での優勝だった。

 

 いま、レッズレディースは3度目の優勝に王手をかけている。

 11月1日(日)にアウェイで行われた伊賀FCくノ一三重戦に勝ったことで、8日(日)14時からの第16節、愛媛FCレディース戦で勝てば、2試合を残してホームの浦和駒場スタジアムで6年ぶりの優勝が決まる。多くのファン・サポーターと喜びを分かち合うために、通常のメインスタンドだけでなくバックスタンドも開けられるという。

 

 もし、この日初めてレッズレディースの試合を見る人がいれば、そのプレーに目を見張ることだろう。3人目、4人目の動きでパスをつなぎ相手ゴール前に迫る場面が何度も見られるはずだ。また高い守備ラインの裏にボールを出されたときに、守備陣がどう失点を防ぐかという見どころもある。そうやって今季は勝ってファン・サポーターに喜びをもたらすと同時に、試合内容で多くの人を楽しませてきた。

 

 2015年以降2018年まで、日テレ・ベレーザ(現・日テレ・東京ヴェルディベレーザ)とINAC神戸レオネッサの後塵を拝していたが、昨季から就任した森栄次監督の指導の下、この「2強」に伍した戦いができるようになった。昨季はリーグ戦、皇后杯共に2位で終わったが、今季は自信を持った戦いぶりで試合内容に磨きをかけ、首位を走っている。そして「ホームで」「勝って」優勝、というこれまでにない舞台が整っている。

 また今年は、なでしこリーグが日本の女子最高峰リーグとしての役割を終える年でもあり、レッズレディースは最後の王者として名を刻もうとしているのだ。

 

 二重、三重の意味で、その瞬間は見逃せない。みなさん8日(日)は、ぜひ浦和駒場スタジアムへ。

 

(文:清尾 淳)