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Weps うち明け話 #1056

試される勝負強さ(2020年12月25日)

 

 「おっしゃるとおりだと思います。(皇后杯は)なでしこリーグ1部のチームとの3試合に勝って優勝することが本当の強さだと思っています。」

 

 浦和レッズレディースの森栄次監督はこう語った。MDP598号の取材で皇后杯に向けて聞いた際に答えていただいたものだ。質問はこうだった。

 

 「レッズレディースは皇后杯の優勝がなく、決勝で敗れたことが4回、準決勝敗退が6回です。総合的な強さはリーグ優勝で示されていますが、今度は勝負どころでの強さが問われる大会になりますね。」

 

 優勝した今季のなでしこリーグでも、全勝対決だった第4節・C大阪堺レディース戦に0-1で敗れたし、優勝を大きく引き寄せるはずの第14節・日テレベレーザ戦も2-3で負け「足踏み」した。リーグ戦は総合力だから、上位との直接対決で勝てなくても「取りこぼし」がなければ優勝は可能だ。実際、今季はベレーザが取りこぼしたことで差がついた。

 

 レッズレディースの力が昨季に比べ全体に上がっていることは明らかだ。それと並んで大事なことは、その力をいつも百パーセント発揮できること。緊張や焦り、その他の理由で持っている力を出せなくなってしまっては、勝てるはずの試合も勝てなくなる。今季のリーグ優勝を決めたのは第16節で、その後2試合を残していたので、精神的に余裕があった。また相手が最下位の愛媛FCレディースだったことも良かったと思う。ホーム駒場のファン・サポーターが見守る中5-1というスコアで優勝を飾ることができた。

 

 しかし、もしあれが最終節で、勝たなければならない状況で、相手がベレーザやC大阪堺だったら。

 そういうプレッシャーのかかる試合で強い相手にしっかり勝てるかどうかはまだ試されていない。森監督も冒頭の取材の際に「ヤマを越えていかないと本物の強さにはなりません。」と述べている。

 

 皇后杯は準々決勝(12月20日)のジェフ市原・千葉レディース戦で2-0とリードした試合を、後半2-2に追い付かれている。しかも後半29分に1点を返されると、その3分後に2点目を奪われた。その部分は、昨季見られた「押され弱さ」が顔を出してしまったのかもしれない。しかし相手の流れをそこで断ち切り、勝負の3点目を自分たちが決めたところは勝負強さの表われと言ってもいいだろう。

 昨日(24日)の準決勝・アルビレックス新潟レディース戦は、早い時間に先制したが前半のうちに追い付かれ、そのまま延長でも点が入らずPK戦で決勝進出を決めた。試合全体はレッズレディースが押している展開だったが、カウンターを受けるとそのまま押し込まれてピンチを作られる場面もあった。シュート数は12対5だったが、攻め込んでいるだけに相手ゴール前に人が多く、シュートが至近距離で相手DFに当たることが多かった。そこでひと工夫あれば、というところだ。

 

 苦戦と言っていい準々決勝と準決勝だったが、その苦戦した部分を決勝への糧にできれば、有意義な2試合だったと言える。

 

 決勝(29日)の相手はベレーザ。昨季と同じ対戦となった。

 総合力の強さに加えて、勝負強さ ―緊張する舞台で強い相手に対して実力を百パーセント発揮し勝ちきる力― を示し、最後の大きなヤマを越えて欲しい。

 

(文:清尾 淳)