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Weps うち明け話 #1058

「偉大」はともかく(2020年12月29日)

 

 

 何本、来んねん!

 

 浦和レッズの報道発表(プレスリリース)ファイルをジャンル毎にまとめてPCに保存しているのだが、その一つに「トップ人事」というフォルダがある。ネーミングが妥当かどうかわからないが、トップチームの選手・スタッフ、あるいは強化に関わるクラブスタッフの移籍・異動などのリリースをここに入れてある。

 昨日は「トップ人事」に関するリリースのメールが10人分来た。2人、3人を一緒にしたものもあるからメールは7回だったが、どうせなら「出る選手」「来る選手」をまとめて2回にすればいいのに、とも思ったがまあ広報担当の都合もあるのだろう。

 それぞれの去就について思うことはあるが、それは別の機会に。

 

 先日、「REDS TOMORROW」の矢内由美子編集長と浦和レッズオフィシャルライターの菊地正典さん、僕の3人で鼎談をやった。

 昨日からその内容がオフィシャルの「サイトメンバーズ」に掲載されており、その冒頭で僕が「ここのところの加入選手やリカルド ロドリゲス新監督就任のリリースを見ていると、みんなが『浦和レッズという偉大なクラブ』と表現している。そう言われるのはなんか恥ずかしいですね(笑)」と発言している。

 

 昨日のリリースの中にもこの表現があり、数えるとロドリゲス監督と6人の新加入選手、計7人中5人のコメントに「浦和レッズという偉大なクラブ」というフレーズがあった。プロ経験の長い、塩田仁史と西大伍のコメントにはなかった。もっとも、鹿島で三大タイトルとACLを合わせて6回の優勝を経験している西に「浦和レッズという偉大なクラブ」と言われたら、嫌味かよ、と思ってしまうから、なくて良かったのだが(笑)。

 

 多少以上のリップサービスがあるとはいえ、ほぼ口をそろえて「浦和レッズという偉大なクラブ」と言われると、「いや、それほどでも」と気恥ずかしくなるのは感情だから簡単には変わらないが、上記の鼎談で矢内さんが、アジアでの活躍は「偉大」と言われてもいいし、ファン・サポーターの存在と埼玉スタジアムが「偉大」なイメージの7~8割を占めているのではないか、と発言したことは大いにうなずけるところなので、少し考え方をあらためた。

 

 そう言えば、「偉大」という表現はともかく、浦和レッズというクラブに誇れる部分がもう一つある。

 ユース、ジュニアユース、ジュニアという育成チームを持っていることは他クラブと同じだが、レッズはユース、ジュニアユースを含めた女子チームも持っており、すべてのチームがそれぞれのカテゴリーで国内上位のリーグに所属しているということだ。

 

 たとえば今季のJ1上位チームやACL出場チームで、クラブに女子部門もあるところはいくつあるだろうか。

 逆に、今季のなでしこリーグ1部のチームで、男子のチームがJ1に所属しているクラブはいくつあるだろうか。

 セレッソ大阪にはセレッソ大阪堺レディースいうチームがあるが、来季からのWEリーグには参加しない。大宮アルディージャとサンフレッチェ広島は来季からWEリーグに参入する女子チームを持つとなっているが、少なくとも育成チームまでそのカテゴリーの上位リーグに最初から参加するのは難しいだろう。WEリーグに参加するマイナビ仙台レディースは、ベガルタ仙台と別のクラブになる。

 WEリーグに参入する日テレ・東京ヴェルディベレーザ、ジェフユナイテッド市原・千葉レディース、アルビレックス新潟レディースの各J2チームがJ1に昇格すれば、「浦和レッズだけ」という表現はできなくなってしまうが、少なくとも2021年に関してはこう言い切ることができる。

 

 浦和レッドダイヤモンズは、男女ともトップ・育成チームのすべてが各カテゴリーでの上位リーグに所属する日本で唯一のクラブだ。

 

 厳密にいうと、WEリーグ参入の浦和レッズレディースを運営する法人は、現在の浦和レッドダイヤモンズ株式会社とは別法人になる予定だし、育成チームにU-12も持たなければいけないから、レッズもまだ整備しなくてはいけないところもある。またレッズレディースは、浦和レッズが一から立ち上げたチームではなく、さいたまレイナスの運営を引き継いだのだから、C大阪堺のように子ども時代から育成を始めてなでしこリーグ1部まで上がってきたわけではない。

 そもそも、Jリーグ優勝を最大の目標にしているファン・サポーターにとっては、それが何の自慢になるの? と首をかしげたくなる主張かもしれない。

 

 それでも、地域に根ざすサッカークラブとしての大きな役割の一つを浦和レッズが果たしてきたことは間違いない。

「偉大」という言葉は、やはり遠慮しておきたい気がするが、世界に誇れるサッカークラブです、とは胸を張って言える。

 

 そして来季は、看板である男子のトップチームの成績でも胸を張れるようになりたい。やはり、最後はそこに戻ってくる。



EXTRA

 年末になって皇后杯、高円宮杯U15、全日本女子U15の大会を取材し、ふと思った。Jリーグ最終節が終わっても、これだけ「浦和レッズ」の試合がたくさんある。こんな幸せを味わっているのは、この仕事をしているからに他ならないな。

 そこから生まれた発想で今回のコラムを書いた。

 

(文:清尾 淳)