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Weps うち明け話 #1059

今年最後の感謝(2020年12月30日)

 

 山は越えかけたと感じた。

 だが、頂上が見えたと思ったら、その先にさらに高い峰があった。そんな思いを胸にスタジアムを後にした。

 

 皇后杯JFA第42回全日本女子サッカー選手権決勝、日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦。

 昨季は同じ決勝で、前半7分に先制され、その後はビッグチャンスもあったが得点できず、そのまま0-1で敗れた。

 立ち上がりが大事。ほとんどの選手が昨季を経験しているだけに、それは肝に銘じていただろう。昨日はスタートからレッズレディースがチャンスを量産していた。開始30秒、清家がエリア右から進入し、GKに止められたのを皮切りに、2分にはその清家が再び右サイドを突破しシュート。左ポストギリギリに外れた。20分には清家の右クロスを高橋がヘディングシュート。横に飛ぶGKの手をかわして入ったかと思われたが右ポストに弾かれた。

 しかし11分、ベレーザの絶妙なスルーパスから先制された。展開は違うが、昨季同様早い時間に失点してしまった。さらに19分、それまですべてのチャンスを作っていた清家が相手のチャージで倒され(なぜかノーファウル)退場。その後交代となった。

 攻撃のキモになっていた選手を潰され、しばらくチャンスを作れなかったレッズレディースだが、その後息を吹き返し34分に菅澤、36分に猶本、37分に菅澤と惜しいシュートを放つがいずれも決まらず、41分にCKから2失点目を喫して前半を折り返した。

 

 前半2-0は難しいスコア、というサッカーの格言どおり、後半はレッズの反撃が実を結ぶ。9分、猶本の縦パスに追い付いた高橋が1点目をたたき込むと24分には塩越の縦パスから菅澤が同点ゴール。

 山の頂上が見えたと思ったのはこのときだった。

 だが28分、ベレーザのサイドチェンジを2回続けた攻撃に対応しきれず、また勝ち越された。オープンな展開から互いにシュートを打ち合う試合になったが41分、猶本の縦パスを受けた途中出場の安藤のゴールで3-3。今度こそあと一歩で頂上にたどりつける、と思う間もなく、相手のキックオフから4点目を奪われた。

 

 再び遠のいた山の頂に三度挑む時間は残されていなかった。3-4でレッズレディースは、5度目の皇后杯準優勝となった。

 2019年はリーグ2位、皇后杯2位。

 2020年はリーグ優勝、皇后杯2位。

 2冠の楽しみを来季に持ち越した、と思えば悔しさも薄ら…ぐはずがない。

 2021年は今年までと違い、WEリーグが秋からスタートすることになっているが、WEリーグは曖昧で疑問だらけの発足だし、今後大会がどうなっていくかわからない部分が多い。またプロ化による選手の移籍など、各チームの強化がどの程度進むか想像もつかない。

 レッズレディース自体は今季を基盤に来季さらに成長していくだろう。昨季の皇后杯決勝や今季のリーグ戦で得られなかった貴重な経験を、今年の最後の試合ではしたと思う。メンタル的にもひと回りたくましくなったチームを期待していいと思っている。

 だが他チームがどういう変化をするかわからない。ゼロからのスタートとは思わないが、何が待っているかわからないのが来季の女子サッカーの世界だと思う。そこを切り拓いていく楽しみはある。

 シーズンを通して幸せな気持ちにさせてくれた、今年のレッズレディースには深く感謝している。

 

 さて、これで2020年の「浦和レッズ」の試合がすべて終了した。

 昨年は、12月29日の皇后杯決勝の前に、レッズジュニアが初出場した、JFA第43回全日本U-12サッカー選手権があって少年たちの元気なプレーを取材させてもらった。今年もレディース以外に、レッズジュニアユースやレッズレディースジュニアユースの準決勝、決勝が最近まであった。

 この時期は、すぐに載せるMDPもないし、行ってくれとクラブから要請されたわけでもない。だが時間があるなら取材に行き、写真や自分の取材ノートに記録している。それも自分の仕事の範疇だと思っているし、浦和レッズの財産になるはずだ。

 そんな仕事を、トップのJリーグが閉幕してからも長く与えてくれた浦和レッズファミリーの各カテゴリーに、つまり浦和レッズに感謝して、今年最後の原稿にしよう。

 

 そして年末ギリギリまで更新に対応していただいた、埼玉縣信用金庫さん経営企画グループのみなさんに感謝します。

 

 2021年は1月5日に更新(の予定)です。

 みなさん、良いお年をお迎えください。

 

(文:清尾 淳)