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Weps うち明け話 #1068

20センチ差コンビ~相模原戦から・その2(2021年2月18日)

 

 2月13日(土)に行われたSC相模原戦の第2試合について。

 

 まず注目したのは前線の4人だ。杉本健勇の1トップの下に関根貴大、右に大久保智明、左に田中達也という布陣だった。健勇と関根の2トップという見方でもいいかもしれないが、前線のスピードが際立った試合だと思う。

 11分に挙げた先制点は、中盤で受け取った関根が縦パスで攻撃のスイッチを入れると、健勇が呼応したように達也にスルーパスを送って達也がそれを決めたものだった。31分には健勇がPKを決めたが、それは達也のスピードに乗ったドリブルからのシュートを契機とした一連の流れから得たものだった。後半にあたる4本目のゴールは相手のCKのこぼれを関根が拾って大久保がつなぎ、健勇がドリブルで運んだ後、最後は関根が決めた。

 健勇と関根。身長差20cmのこの2人は、共にスピードがあってシュートの意識が高い。縦関係の2トップとして面白いコンビになるのではないか。「タカケンユウ」と言うと、関取の四股名みたいだが。

 

 また達也のスピードを初めて見た人もいるだろうが、彼も関根同様、いきなりトップスピードになる力がある。ボールを受けるやいなやアクセルを踏んで相手を置き去りにするシーンを見せてくれそうだ。

 そして大久保は、スピードもそうだが狭いところでも相手に取られないドリブルのテクニックがある。一昨年、特別指定選手としてレッズの練習に来ていたときによくそのシーンを見せてもらったが、あれは「金の取れるプレー」だと思う。

 

 攻撃陣ばかり取り上げたが、センターバックの藤原優大と左サイドバックの福島竜弥は共に18歳。GKの鈴木彩艶と合わせてチーム最年少グループだが、新人とは思えない落ち着きぶりだった。福島はキャンプではセンターバックを務めることも多かった。2人とも同じポジションに強力なライバルがいるが、まずはバックアップメンバーとして近付きながら、早く先輩たちを脅かす存在になって欲しい。

 

 さて2月17日(水)、大久保と藤原のオンライン記者会見が行われた。この2人は1月18日(月)の新加入記者会見に、都合で出席できなかったのでこの日にあらためて行われた。

 僕は悩んだ末に「レッズのホームである埼玉スタジアムでプレーしたり、試合を見たりしたと思うが、レッズ戦に限らず、埼スタで一番印象に残っていることは何ですか?」と質問した。

 

 大久保「自分は2019シーズンのYBCルヴァンカップで、埼玉スタジアムでベンチ入りをさせてもらったことがあるんですけれども(9月4日、準々決勝第1戦、vs鹿島)、そのときはコロナもなかったので、ファン・サポーターの方の応援もあって、アップでピッチに出ていく瞬間に鳥肌が立って、このスタジアムでプレーしたいと思ったのが今でもずっと忘れられません。それを知っているからこそ、あのスタジアムでピッチに立って戦いたいと思いました」

 

 藤原「高校選手権や(高円宮杯U-18プレミアリーグ)チャンピオンシップで埼スタでプレーして、昨年度の選手権などは満員でした。あのお客さんが赤いユニフォームを着て応援していると考えると鳥肌が立ちますし、そういったところでプレーできる可能性のある人は限られていると思うので、何としてもあのピッチに立てるように、まずは今、一日一日努力していきたいと思っています」

 

 2人とも新人ながら自分の経験を通じて、赤いユニフォームを着て埼スタのピッチに立ちたいというモチベーションを人一倍持っている。いまの社会状況では「満員の」という部分はともかく、試合出場に挑戦し、チームを活性化してほしい。

 

 開幕まで10日を切った。

 柏木陽介が移籍先を探すことになったと発表され、レオナルドも移籍が確実らしい。

 あらためて、昨季の末から期限付移籍を含めてレッズを離れるメンバーを、ポジションごとに挙げてみると…

 

 GK福島春樹、石井僚、DF岩武克弥、鈴木大輔、橋岡大樹、MF青木拓矢、エヴェルトン、長澤和輝、マルティノス、柏木陽介、FW武富孝介、レオナルド。

 3-5-2の先発メンバーが組めて、控えのGKまでいる。しかもJ1で十分勝てるチームのようではないか。

 

 そんな戦力が抜けたと思うと、大丈夫かと言いたくなるが、暗くなってはいない。彩艶を除いても26人中10人、つまり4割近くが新加入選手というのは、新監督がチームを作り上げていくのに、都合の良い部分もある。本当にフラットに選手を見られるからだ。開幕してしばらくは連戦ということもあり、先発がけっこう入れ替わるかもしれない。

 リハビリ中だった興梠慎三とトーマス・デンも今週から部分合流の時間が長くなった。復帰まで秒読みの準備ができた、というところか。

 

 ベテラン、中堅、新加入、新人が競い合う26人の中から11人が這い上がり、それを追って他の選手がにじり寄ってくる。いまはそんな図式を頭に画いている。

 そして、そのエネルギーによって、チームが這い上がって行ってほしい。

 

(文:清尾 淳)