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Weps うち明け話 #1073

布陣当てより勝利を楽しみたい(2021年3月19日)

 

 ACLの試合では、試合前に提供されるメンバー表は、日本国内でのそれと違って、選手名が背番号順になっている。

 だから、たとえば札幌戦の先発だと、西川、岩波、槙野、山中、杉本、明本、小泉、金子、阿部、汰木、関根となるわけだ。

 最初は面食らった。

 え? この選手がキーパーやるの! と。

 すぐに慣れたが、2013年に出場したときの初戦、広州恒大戦では久しぶりだったので、忘れていた。ヨーロッパや南米のサッカーを現地で取材したことはないが、おそらくこれが世界標準なのだろう。

 

 その点、日本国内の試合は少年サッカーからJリーグまで、基本的にGKから始まり、ポジションが後ろの選手から書くことになっている。これって決められたルールなのかどうかは調べていないが、今までGKが2番目より下に書いてあるメンバー表は見たことがない。

 

 だがフィールドプレーヤーの配置をどう書くかは、クラブによって若干違う。4-4-2の布陣を全部右から左へ丁寧に書いてあるところもあるが、そうでないところも少なくない。DFが3人なので3バックかと思ったら4バックだったりすることはしょっちゅうだ。そこには決まりはないのだろう。レッズもちょっと順番を替えて提出していたシーズンも多かった気がする。

 

 だから水曜日の札幌戦で阿部勇樹の名前が西川の下、それまで宇賀神がいたところに書いてあったことで、試合前に少し悩んでしまった。

 最初は知り合いから「きょう3バック?」とメールが入った。

たしかに阿部は3バックの右とか左をやったことはあるし、真ん中もある。阿部をリベロにして槙野と岩波を左右に配し、関根が右、山中が左のウイングバックというのはありかもしれない。僕自身は、練習でそういう形を見たことがないが、リカルド監督は4バックも3バックもやるという話だし、キャンプが終わって浦和に帰ってから、大原の練習は3回しか公開されていない。そのうち1回は横浜FC戦の翌日で、先発した選手たちはリカバリーの日だった。メディアの見ていないところで、実は3バックの練習をしていたのではないか。そんなところまで脳内妄想が発展していった。

 DAZNの予想布陣では、阿部らはボランチのままで関根が右サイドバックになっていた。それもありかもしれないが、それなら明本が入る方が可能性高いんじゃないか?

 そんなことを考えるのも楽しいのだが、どうせあと20分もすればはっきりする。とりあえず、そのことは頭から離して、取材の準備をした。けっこうセッティングに時間がかかるのだ。

 

 結果はメンバー表の順番どおり、阿部が右サイドバック。ただし阿部が高い位置を取って攻撃に参加するということはあまりなく、前の選手をうまくコントロールして、そのカバーに入ることが多かった。相変わらず、何でもできる選手だ。

 後半28分のFKを阿部が蹴ってGKに弾かれたのは残念だった。久しぶりだったからだろう。あと1回チャンスがあれば今度は決まると思った。それよりも、あれを見せられたら、次に同じ場所からFKがあったとき、阿部か山中か相手GKは迷うだろう。楽しみだったが、布石が生かされることはなかった。

 

 今季のフィールドプレーヤーは23人(特別指定選手、二種登録選手を除く)。さらにケガや体調不良の選手を除いた中から16人をチョイスするのは、ある意味では選択の幅があまりないから「簡単」なのかもしれない。その中でポジションを決めるときに、複数のポジションが高いレベルでこなせる選手は重要だ。

 

 川崎戦でどういう選手が選ばれ、どう配置されるのか。

 試合前の予想が当たろうが外れようが構わない。

 勝ってくれ。

 胸を借りるとか、どこまで通用するか、などと言わず、勝ちに行ってくれ。

 できないはずはないだろう。川崎がJ1を連覇した2018年。21勝6分け7敗で2位の広島をぶっちぎって優勝したが、あの7敗のうちの2敗はレッズ戦だったのだから。それも2試合とも2-0だった。

 それがいまの一番の楽しみだ。

 

(文:清尾 淳)