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Weps うち明け話 #1082

我慢の末に一歩前進(2021年5月10日)

 

 リーグ戦でホーム4連勝となった。

 5月9日(日)のベガルタ仙台戦。昨年のような大量得点や、仙台キラー興梠の今季初ゴールを期待した人も多かっただろうが(僕もその一人だけど)、そんなに思いどおりにはならなかった。

 

 仙台戦が終わったときの感想は「よく我慢した」だった。

 相手の矢のような攻撃をよく防いだ、という意味ではない。仙台にはレッズより多くのシュートを打たれてはいるが、そこまで多くはなかったし、絶体絶命に見えたピンチは前半6分に、パスミスからエリア内の深いところまで入られ、至近距離から打たれた場面ぐらいだった。他にも枠内シュートは何本か打たれたがほとんどがレッズのミスから招いたピンチで、相手にずっと主導権を握られて攻め続けられたわけではない。

 枠内シュートはいずれも、Jリーグ初出場のGK彩艶がしっかりと処理していて、それは意外でもなんでもなかった。

 

 我慢したのは、攻め急ぐことだったと思う。

 ボールを握ってもなかなか敵陣深くまでパスを入れられず、左へ行ってはまた右、出しどころが見つからずに詰まってまた下げるのか、というシーンを何回見たことか。ボールの軌跡をたどれば太い「コ」の字が描かれただろう。

 正直言えば、前線の選手が相手の裏へ走り出しているときには心の中で「出せよ!」と思っていた。しかし、ときにはボールを持ったDFやボランチがタイミングを逸したものもあっただろうが、多くは勇気を持って「出さなかった」のではないか。ボールが前線の選手に届くまでの時間、あるいはボールの落下地点と相手GKの距離、そんなものを瞬時に計算して、相手ボールになるリスクが高いと判断したときは出さない。経験によって蓄積されたデータがそう教えているのではないか。

 

 何度も槙野と岩波の間を行き来していたボールが西を経由して関根に渡ったのは、やはり「コ」の字形にボールが動いてからだった。そこから武藤、小泉、武藤を経由して、最後はユンカーが先制ゴールを決めた。

 仙台が自陣で守っているだけでは済まなくなり、ボールを取りに出てきたことでスペースもでき、プレーのテンポが速くなって、2点目となるFKを得た。それを直接沈めて今季3点目を記録した阿部の技術には感服する。

 

 そこからは大量点や興梠のゴールを期待していい流れだったが、残り時間は短かったし、仙台も必死の反撃をしてきたから、守備の意識を薄めるわけにはいかなかった。

 思いどおりではないが、ホームでの連勝を続けたのだから、満足度は100パーセントだ。120パーセントには届かなかった、というところか。

 

 それよりも、この試合でチームの前進を見たことがうれしかった。

 先制点は、相手ゴールの正面でDFの裏へ出すパスにユンカーが反応したところから生まれた。左右へのパスからではなく、正面を破るパスからの得点は今季初めてだ。

 相手を押し込んだところからの攻撃のバリエーションを増やしていきたい。これまでもワンツーで誰かが相手ゴール前に抜け出す試みは何度か見たが、得点につながったことはなかった。リカルド監督がたびたび言う「相手を押し込んでからのバリエーション」の一つがこれだろう。攻撃面で一歩進んだ、と言ってもいいはずだ。

 

 これでリーグ戦6勝2分け5敗でまた勝ち越した。

3連勝のあとはアウェイで負けホームで勝ってと、なかなか連勝できないでいるが、もがいている間にもチームは成長しているのだから、いつかアウェイでも勝って連勝を伸ばしていってほしい。もちろん次からでも。

 

(文:清尾 淳)