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Weps うち明け話 #1091

引っかかる言葉(2021年6月14日)

 

 ルヴァンカップのプレーオフステージを突破したのは初めてだ。

 といっても、Jリーグカップの名称がYBCルヴァンカップになってから今季で6シーズン目だが、そのうち2016年、2017年、2019年はACL出場チームだから準々決勝から出場しており、昨季はレギュレーション変更の「あおり」を受けたような形でグループステージが終わってしまった。

 だからこれまでプレーオフステージは2018年しか出ておらず、そのときはヴァンフォーレ甲府にアウェイで0-2、ホームで2-1と1点差で敗れた。今回が初のプレーオフステージ突破というわけだ。

 

 ルヴァンカップは準々決勝から出場した2016年に優勝しているが、今回はグループステージからの出場で8強に進んでいる。過去6回、ファイナリストになっているJリーグカップだが、もし今回レギュレーションが途中で変更されず、浦和レッズが決勝に進んだとしたら、クラブ史上Jリーグカップで最も多い試合数(グループステージ6+プレーオフステージ2+プライムステージ5=13)を戦うシーズンとなる。

 目標どおり来季からACLに出場するとしたらこんな機会はなくなるわけだから、これからの準々決勝、準決勝の4試合を何としても勝ち抜きたい。それだけ多くの試合を戦った後のチームがどう変貌しているか楽しみだし、その後のリーグ戦終盤にも好影響があるはずだ。もちろん決勝に出るだけで十分なはずはない。

 

 さて昨日、6月13日(日)のウェブMDPにコメントが載った選手は西川周作、宇賀神友弥、槙野智章の3人だった。

 それぞれ、今季の自分とチームについてポジティブな発言をしているが、その中に引っかかる言葉があった。悪い意味で「引っかかった」のではなく、それぞれの心境を表わしている微妙な表現だなあ、と興味深かったものだ。それを挙げてみたい。

 

 まず宇賀神から。

 

 彼は大久保智明が天皇杯で決勝点に絡んだことに関連してこう言っている。

「先制点をアシストしたのが、11人の中で一番出場経験の少なかった大久保だったことはうれしかったですね。そういう選手がゴールに絡むのは重要なことですし、練習を見ていても非常に良いプレーをしていたので、試合で使ってほしいなと思っていた選手でした。試合前に『絶対に結果を残して来いよ』と話していたので、彼が勝利に絡めて本当に良かったです」

 

 宇賀神自身、リーグ戦ではここ5試合メンバーから外れ、その前は3試合ベンチ、さらにその前は3試合途中出場という状況だった。ルヴァンカップではプレーオフステージ突破に貢献しているものの、この起用のされ方は本意ではないはず。この後で「正直なところ、気持ちをどの試合に向けるか難しいところはあります」とも語っているのだから。

 そういう立場にいる選手が若手の練習を見て「試合で使ってほしい」と思うのは、その選手の思考がフォア・ザ・チームになっているからだろう。文面にはないが「自分(宇賀神)が一番喜んでいるかもしれない」とも語っていた。

 

「なかなか出番のない若手が気持ちを落とさないように、自分が率先してやることで若手を引っ張っていくことも役割だと思っています」と、これまで多くの経験ある選手が担ってきた役割を意識しているようだが、チームの底上げというのはみんなが成長して成功するもの。宇賀神自身が試合で活躍することが底上げにつながるのだから、それは忘れないで欲しい。忘れるはずはないか。

 

 ところで宇賀神のコメントから、後半36分の「山中→宇賀神、大久保→汰木」の交代は、決勝点が入る前から第4審判に告げられていたことがわかる。もし、ゴールの前にプレーが切れていたら…。

 大久保も、浦和レッズも「持っていた」わけだ。

 

 次は槙野。

 

 また大久保関連になってしまうが、彼のコメントにこういう部分がある。

「彼が苦労していたのは良く知っていましたし、練習後に『槙野くん、1対1の練習しませんか』と誘ってくれて、居残り練習もやっていました。そういう選手がルヴァンカップや天皇杯で活躍して上がってくるのは良いことだと思いますし、もっともっとやってもらわないといけないです」

 

 大久保が1対1の練習をする、その相手になってやった、のではなく「誘ってくれて」と言ったのだ。僕はこの部分で、若手や新人に対してもしっかりと敬意を払う、槙野の謙虚さを感じた。

 もちろん1対1の練習では、ただ大久保の技術だけが上がるわけではなく、槙野も向上する機会になるだろうが、これを聞いたとき、今の槙野に1対1で勝てるようになった大久保のドリブルを試合で見たくてたまらなくなった。

 槙野にはぜひこれからも誘いに応じてもらいたいし、大久保に易々と抜かせるのではなく高い壁として立ちはだかって欲しいものだ。

 

 最後は西川。

 

 リーグ戦に鈴木彩艶が先発し、自分がベンチにいるここ最近の心境を聞かれてこう言っている。

「新人のときのような感じで、新鮮です。大分でプロになったときも、メンバー外から先発で起用されるようになったので、ベンチにいることはほとんどありませんでした。しっかり自分に矢印を向けて、与えられた時間を無駄にしないようにしたいです」

 

 どこも引っかからない?

 それまでベンチ外だった若手が引き上げられ、ベンチ入りするようになったのではない。浦和レッズでずっとリーグ戦のゴールをほぼ1人で守ってきた選手がリザーブに替わった今の時間を「与えられた」と表現したところに、僕はあらためて周作の度外れたポジティブさを感じた。

 

 以前よりも厳しい状況に置かれたときに、「これも以前はできなかった勉強」「今だからこそやれることがある」と切り替えて頑張る選手は多い。それもポジティブな姿勢だとは思うが、いったんは今の立場を「落ちた」と受け止めた上で「それでも」やるんだ、という思考過程を経ているのではないか。だから「これも」とか「今だからこそ」という言葉が付く。もちろん、それが悪いわけではない。

 

 ただ周作の、「これも与えられた時間と受け止めて」ではなく「与えられた時間」という素の言葉は、今の状況を全く後退とか我慢という種類のものととらえていないのだろうと想像できるのだ。

 

 以上、考えすぎかもしれないが、昨日のウェブMDPの復習でした。


(文:清尾 淳)