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Weps うち明け話 #1094

SC相模原戦(2021年7月5日)

 

 7月3日(土)のベガルタ仙台戦は残念だった。

 内容的には2-0で勝った柏レイソル戦、アビスパ福岡戦に近い結果になってもおかしくなかった。

 ただ、あそこまで決定的なチャンスを何度もモノにできないでいると、「罰を受ける」というのがサッカーだし、実際そういう「罰」を何度か受けてきた経験があるから、後半の終盤は嫌な予感もしていた。

 

 予感は外れた。いや、勝てなかったのは、チャンスに決められなかった「罰」なのだろうけど、終盤に1点食らって負けるという最大の罰ではなかった。

 負けなかったのは、西川周作のスーパーセーブも大きなポイントだったが、大きな要因は守備の意識を持ち続けていることではないか。

 いまのレッズは間違いなく攻撃的なチームだが、「ノーガードの打ち合い」的な攻撃ではない。難しい形で攻撃を仕掛け、嫌な位置で奪われて危険なカウンターを受ける、というリスクは極力冒さない。イレブンの中で最もボールタッチが多いのはセンターバックの2人ではないか、と思われるほどビルドアップをやり直している。いわゆる「コ」の字型にパスを回し、たまに「ヨ」の字にもしながら、バイタルエリアに進入するチャンスをうかがい、スイッチオンの縦パスが入ると全員がそれに対応する、という攻撃を見せている。

 相手陣内深くへのパス、あるいはドリブルは奪われるリスクが高くなるが、そうなったときの構えはできている。ボールを持っていない選手が相手の間に入っていく動きは、パスコースを作って攻撃の選択肢を広げるためでもあるが、万一奪われたときのファーストディフェンスの備えでもある。

 

 十分にリスク管理された攻撃ができているから、たとえチャンスに決められなくても大きな罰を受けずに済んだ。

 リーグ戦の順位は5位のままだが、7月10日(土)の大分トリニータ戦に勝てば、試合数の少ない名古屋グランパスとヴィッセル神戸を上回り、暫定だが3位の位置に名札を掛けることができる。

 レッズの試合がない間に、また順位が変わって中断明けを迎えることになるかもしれないが、順位表の色が違う部分に入っておくことは重要だ。

 

 もちろん、そのためには大分戦の勝利が必須だが、万一それが達成できなくても、機会が8月に先送りされるだけで大きく後退するわけではない。先送りが続くとだんだんきつくなるのは事実だが。

 

 しかしノックアウト方式の大会では、機会を逃すことは先送りではなく、後退でさえもなく、撤退となる。

 スコアレスドローはあり得ず、120分それが続けばPK戦で決着がつく。通常のプレーよりも彼我の差が結果に反映されなくなってしまう。

 

 7日(水)に行われる、天皇杯3回戦。J1同士の対戦もある中で、レッズの相手がJ2で現在最下位のSC相模原だというのは、幸運なことなのかもしれない。

 だが、それ故に危険だということを僕たちは知っている。十二分に知っているはずなのに、ついついどこかにスキができてしまうことも、ままある。特に立ち上がりからビッグチャンスを立て続けに作ったりすれば、まだ1点も入っていないのに、簡単に取れそうだとハイボールの泡のように細かいスキが生まれてくるかもしれない。スキとは選手たちの気持ちの中だけでなく、スタンドの雰囲気から生じることもある。

 

 相模原戦は、いつも以上にいつもどおり(?)、リスク管理した攻撃を仕掛けて欲しい。

 先制は立ち上がりでなくてもいい。前半はスコアレスでもいい。相手がガチガチに守ってくれば簡単にビッグチャンスは作れないかもしれない。そんなときは、いつもどおりの「コ」の字回しでも「ヨ」の字回しでもいいから、あるいは前線からのプレスを続けて、相手の綻びを大きくしてビッグチャンスを作ってほしい。

そして、チャンスには必ず決めてほしい。

 それが仙台戦で生まれた課題への答えでもあり、大分戦以降のリーグ戦に臨む姿勢を正すことにもなる。

 

 2016年を最後に、ここ4シーズン国内三大タイトルすべての可能性を携えて9月を越したことがない。

「三大タイトル」と、リーグ優勝の可能性も含めるのはおこがましいかもしれないが、今の時点であきらめる必要もない。

 参加しているすべての大会でタイトルへの道がつながった状態で秋を迎えることが、どんなに幸せなことか、久しぶりに味わわせてほしいのだ。

 まずは天皇杯で8月のラウンド16へ。


(文:清尾 淳)