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Weps うち明け話 #1097

2か月早まったが(2021年8月31日)

 

 今季のYBCルヴァンカップ決勝の会場が埼玉スタジアムに決まった。

 最も埼スタに似合うチームが決勝に出ないでどうする、とはいつも思っていることだが、今季は特にその気持ちが強い。

 シーズンで最も早く優勝が決まる大会(その前にリーグ優勝が決まるなら別だが)でファイナリストになること。今季、新加入の選手たちにはそういう経験が少ない。毎試合、手ごたえをつかんでいるにしても、決勝進出という結果は特別なインパクトがあるに違いない。

 やっていることが正しい、という自信が強い確信に変わり、それ以降のリーグ戦5試合に良い影響があるはずだ。もちろん優勝すれば、さらにそれが確固たるものになるだろうが、まずはファイナリスト。それも自分たちのホームスタジアムで決勝を迎えるという経験は、めったに得られるものではない。

 明日の川崎戦は、そこへつながる試合だ。

 

 3月21日のリーグ戦では、前半こちらがびっくりするほど主導権を握れた。後で聞けば川崎の出来がだいぶ悪かったということだが、それもレッズが多くの場面で先手を取っていたからだろう。杉本健勇のボレーシュートが決まっていれば、何かが少し変わっていたかもしれない。

 しかし、前半の終盤から後半全体にかけては、まるで川崎が劣勢だった時間の憂さを晴らすかのような攻撃を掛けてきて、今季最多の5得点を挙げたのだった。

 まったく。

 前半、攻勢を取っている時間帯に得点できなかったことはともかく、こんなに取られなくてもいいだろう、と思った。後半の途中からは、明らかに選手たちの気持ちが萎えているように思えた。逆転すること、追い付くことは難しくても、ホームに集まってくれたファン・サポーターの心に何か灯りをともして帰ってもらおうとは思わないのか。記者席でジリジリしていた。

 

 だが当時は難しかった。

 新シーズンが始まって公式戦7試合目。それまでに挙げたゴールは3点で、セットプレーのこぼれが1点でPKが2点。リカルド監督が目指すサッカーは、選手たちが頭で理解してはいても実戦でスムーズに展開できるほどには身についていなかっただろう。せめて身体を張って守ることぐらいはして欲しかったが、うまくいかないときはそういう一歩が出るのも遅れるものなのかもしれない。

 とにかく0-5という、やや記録的なスコアで今季の対川崎初戦を終えた。

 

 現在のレッズが、そのときと違うレベルにあることは、誰も疑わないだろう。中断前の5月ごろには「いま鳥栖や横浜FM、川崎と対戦したら借りを返せる」とさえ思っていた。

 冷静に考えれば、それはかなり言い過ぎだった。レッズは白星先行になったとはいえ、勝った相手を見れば下位が多かったし、勝てそうな試合を落としてもいた。ほとんどの試合を勝ち倒してきた川崎と、短期間で肩を並べるほどに成長するのは無理があったと思う。

 

 それでも11月3日のリーグ後半戦までにはだいぶ追い付けるのではないかと思っていた。

 そのとき彼我の位置関係がどうなっているかわからないが、レッズのサッカーは相当こなれているだろうし、足りない部分も改善されているに違いないからだ。

 ところが中断に入って、ルヴァンカッププライムステージの組み合わせを見たときは、11月3日の期末試験の前に中間試験があるのかよ、と思った。しかも2回。大会が違うとはいえ、予定より2か月も早く川崎との対戦があるとは想像していなかった。

 

 11月に戦うときよりは厳しい試合になるかもしれないが、やはり気持ちは高ぶる。

 準決勝への進出だけで言えば、勝てなくてもいい。第1戦0-0、第2戦1-1で十分なのだ。しかも今は守備の綻びが少なくなってきている。ホームの第1戦を無失点で終えれば可能性は広がるだろう。

 ただ、それとあわせて川崎相手にどこまでビルドアップが通用してゴールに迫れるか、今季リーグ戦で最多でも1試合2失点しかしていない相手からゴールを奪えるか。試合が近付くにつれ、そちらの興味の方が大きくなってくる。

 

 王者との対戦を前にして、当たって砕けろではなく、ワクワクできるまでレッズの力が上がってきたわけで、こんな幸せなことはない。

 明日はさらに幸せな気持ちになりたい。

 そして日曜日はもっと。


(文:清尾 淳)