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Weps うち明け話 #1100

浦和の一体感を(2021年9月22日)

 

 残念。大宮より少なかったか。

 

 9月20日に行われたWEリーグ第2節。三菱重工浦和レッズレディースは記念すべきホーム開幕戦で、ノジマステラ神奈川相模原に2-0の勝利を収めた。

 終わってみれば完封での快勝だが、前半10分に先制してから後半37分まで追加点が取れず、万一どこかで失点してドローに終わってしまったら、と気持ちの一部ではハラハラしていた。実際、ノジマの危ないシュートを浴びる場面もあった。シュート数が15対5と、ほぼレッズレディースが試合をコントロールしていたから、もし勝点1に終わっていたら、あまり好きな言葉ではないが「取りこぼし」という表現にならざるを得なかった。そうなれば開幕戦で日テレ・東京ヴェルディベレーザに激闘の末、逆転勝ちしたことの意味が半減してしまっただろう。

 あのまま1-0で終わっても、WEリーグ唯一の開幕2連勝には違いないが、最後に2点目を挙げたことで、来場した3,256人に、より気持ち良く帰ってもらうことができた。

 

 そう、3,256人。

 この日、14時から大宮アルディージャVENTUSとアルビレックス新潟レディースの試合があったので、ギリギリになるがそれをDAZNで見てから駒場に向かった。両方のチームに元レッズレディース、元レッズレディースユースの選手が複数人いるので、普通の「よその試合」よりは見たかったのだ。

 試合内容は略。感じたのは、けっこう人が入っているな、ということだった。

 5月8日のプレシーズンマッチ、大宮-サンフレッチェ広島レジーナ戦をNACK5スタジアムで見たときも、かなり多くの入場者だったので、本番のWEリーグでも相当入るのではないかと思っていた。「大宮アルディージャ」の名前がついたプロチームが、Jリーグのチームと同じユニフォームを着て、同じスタジアムで戦うのだ。ふだんJ2を応援に来ているファン・サポーターの多くが足を運ぶだろうと推測したのだ。

 9月20日のNACK5スタジアムは3,419人の入りだった。

 

 冒頭の「残念」は、20日、浦和-ノジマ戦の入場者数を聞いたときのもの。大宮アルディージャには、試合内容と結果はもちろん、入場者数でも負けたくない。浦和レッズの女子プロチームのホーム開幕戦入場者が、大宮のそれより少なかったのは本当に残念だ。

 多くのサッカーファン、浦和の人たちに来てもらいたいが、まずお誘いの照準を絞るとしたら地元の小学生から高校生くらいまでの女子だろう。サッカーをやっている子はもちろん濃い対象者だが、そうでなくても地元の女性アスリートチームが全力で闘う姿を見て感じるものは多いはずだ。そういう層への重点的な働きかけをクラブはやっていって欲しい。

 

 もう一つの重点対象者は、多くの浦和レッズのファン・サポーターだ。

 今は最大5千人だが、制限がなかったときは3万人から4万人、カードによっては5万人を数えることもあった埼スタの来場者。その中には、「以前からレッズレディースの試合も行ってるよ」という人もいるだろうが、レディースのホームゲームが2千人弱の入りであることを思えば、ダブルで応援してくれる人は、まだまだ少数派だ。レッズレディースの試合を一度もスタジアムで見たことがないという人も多いに違いない。

 

 一昨年からサッカーのスタイルが大きく変貌し、練度の高い連係と攻撃的な姿勢を貫くレッズレディースの試合は、ずっと見てきた人たちも「面白くなった」と口をそろえて言う。そしてプロに移行したことで、「自分たちが試合で魅力を伝えないといけない」という選手たちの覚悟が、今季さらに強くて魅力的なサッカーを展開している。その結果が開幕2連勝だ。

 

 開幕戦の前日、9月11日。レッズランドで朝の練習を終えたレディースの選手たちに対して、拍手が起きた。これから練習が始まる浦和レッズジュニア、ジュニアユースの選手たちと指導者たちだった。

 これまで、レディースの育成チームであるレッズレディースジュニアユースの選手たちが、なでしこリーグのアウェイゲームに出掛ける選手バスに手を振って見送る、という話は何度か聞いたことがある。しかし男子の選手たちから激励の拍手をもらうとは思っていなかっただろう。ノジマ戦で先制ゴールを挙げた高橋はなにそのことを聞くと、「自分たちの練習が始まる前の貴重な時間を割いて、私たちの練習が終わるのを待ってくれていた。ふだんはなかなか接する機会がないのに、『頑張ってください』とみんなで声を掛けてくれた。あのおかげで開幕戦もしっかり頑張れたと思う」と語った。

 他にも宇賀神友弥や槙野智章らレッズの選手たちが、レディースの盛り上げにSNSなどで協力していることについて高橋は、「他のカテゴリーの選手たちが気にしてくれていることが力になっている。ふだんから自分たちも浦和レッズの試合を毎回のように見て、たくさんの刺激をもらっているし、そういうすごい舞台で戦っている選手たちから、励ましの力をいただけたというのは選手全員の力になっている」と強い一体感を味わっているようだ。

 

 一体感というのは、レッズからレディースへの一方的な協力・援助ではなくて、たとえばレディースがこのまま連勝街道を進むことで、レッズのリーグ3位以上、タイトル獲得という目標へのモチベーションに刺激を与えるということだってある。さらに来年5月にWEリーグ初代女王の座を射止めたら、すでに開幕している2022シーズンのJリーグを意気高く戦う起爆剤になるだろう。

 

 なでしこリーグ時代も一体感がなかったわけではないが、レディースもプロになって、より浦和レッドダイヤモンズとしての一体感を醸しだし、JリーグもWEリーグも頂点に立つのは浦和、という時代を作りたいし維持していきたい。そのためには、その一体感の中でダブルの応援をしてくれるファン・サポーターの存在が欠かせないと思う。

 

 僕は間違ったことを言うことも(よく? たまに?)あるが、嘘は言わない。

 ぜひ一度レディースを見にスタジアムへ来て欲しい。上限の5千人が入った駒場で彼女たちがどんな気合の入ったプレーをするか、これは絶対に見るべきものだと思っている。

 

EXTRA

 どこに言うべきなのかわからないが、Jリーグの試合とWEリーグの試合日程を決める際にもっとお互いを意識して欲しい。WEリーグ11チームのうち、Jリーグのチームと同じクラブが運営しているのは新潟、大宮、千葉、浦和、東京V、広島、長野と7チームもある。これらのファン・サポーターはできることならJリーグとWEリーグ両方の試合を応援したい、スタジアムに行くのが無理なら生放送で見たい、と思っているはずだ。

 しかし今の日程や時間では、両方の試合時間が重なっているものが少なくない。Jリーグの試合日はACLなどもあり、カップ戦の勝ち上がり具合もあるから、なかなか動かせないだろうが、WEリーグがそれを見てうまく日程を組むこともできるはずだ。さらに、どうしても同じ日にぶつかった場合も、試合時間を離すという配慮はJリーグ側もしていいのではないか。その点、未定になっていた10月16日(土)のレッズレディース対広島(駒場)の試合時間が11時からに決まり、その日15時からのレッズ対G大阪(埼スタ)と重ならないようになったのは歓迎すべきことだ。

 どうやってハシゴするか、いま考え中。

 

(文:清尾 淳)