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Weps うち明け話 #1108

彼我の差を縮め、追い越す(2021年11月5日)

 

 

 ドロー、特に点を取り合ったドローのとき、「勝点2を失ったのか。勝点1を勝ち取ったのか」という議論があるし、記者会見などで選手や監督に感想を問う質問が出ることもあるが、よほど一方的な内容の試合でもなければ、どちらかに言い切ることは難しいと思う。

 

 追い付いて引き分けの場合は「プラス勝点1」「負けなくて良かった」のようなイメージがあるが、11月3日の川崎戦は「マイナス勝点2」「勝てなくて残念」の要素もだいぶあった。サッカーに判定があれば川崎に分があったかもしれないが、その差は3月の第6節と比べて、だいぶ縮まっていたはずだ。あの試合で浦和レッズが勝っていたとしても「大金星」とか「番狂わせ」とは言われなかっただろう。

 

 一方、勝てなかったということに関しては、今の立ち位置をかなり反映した結果だと思う。

 3位を争う4チームの中にはいるが、優勝争いにはシーズンを通して絡めなかった、というところだ。残念ではあるが、彼我の差を認めることも成長のためには大事なことだ。

 

 さらに大事なのは、「3位を争う4チームの中」で、最終的にどの位置にいるかということ。もちろん来季のACL出場という目標のこともあるが、2021シーズンを3位で終わるのと6位で終わるのとではかなり違う。

 箱根駅伝の復路は往路の順位どおりにスタートするが、Jリーグは前年の順位でシーズンのスタート位置が決まるわけではない。

順位に直接リンクすることではあるが、今季の残り試合をしっかり勝てるか、ということが来季のために大事なのだと思う。

 リーグ戦の残りは鹿島、横浜FM、清水、名古屋。バリバリ上位チームまたは残留ボーダーラインのチームで、大きな火花が散りそうな試合ばかりだ(横浜FMのモチベーションがどうなっているかは不明だが)。そして天皇杯。

 

 リカルド監督が、1日の会見で「川崎が優勝するかどうかは全く意識しない」という趣旨のことを明言してくれたおかげで、3日は他会場の途中結果を一切見ずに、目の前の試合に集中できた。そもそも試合結果がどうなると川崎Vなのか詳しく知らなかったし(←それは知らなすぎだろ!でもホント)。

 試合が終わったあとの場内アナウンスで川崎の優勝を知ったが、僕の目はレッズサポーターと選手たちに目が釘付けになっていた。

 

 少し前は、「川崎の優勝は堅いだろうし、優勝してからリーグ戦の残り試合を、天皇杯に向けた調整だとか若手の育成だとか個人記録への挑戦などに当てられるとしたら良いなあ」と単純に考えていたのだが、この日、川崎が輪になって喜んでいるのを左目の隅でとらえながら、狭いビジタースタンドから熱い風が送られ、それをレッズの選手たちがしっかりと受け止めているのを見て、「俺たち、これからのリーグ戦4試合も真剣勝負をやれるんだぞ。いいだろ」と考えていたのだ。負け惜しみ(試合は負けていないが)などでは全然なかった。

 

 彼我の差は認める。

 そして、その差を縮め、追い越すための戦いはもう始まっている。

 

(文:清尾 淳)