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Weps うち明け話 #1110

似ている気がする(2021年11月22日)

 

 11月20日(土)の横浜FM戦は、決して今季レッズが目指している展開にはならなかったけど、引いて守ったというよりは、マリノスに押し込まれたからそうなったのだろう。ただ、そこでボールを奪ったときにクリアではなく、良い位置にいる選手につなぎ、そこからカウンターを狙うのがうまくいったのは、今季のトレーニングの成果だ。

 

 さて、次節の清水戦で印刷物のMDPが発行される。通常号としては1年ぶりだ。

 阿部勇樹、宇賀神友弥、槙野智章についての特集もあるので、先週からこの3人の軌跡をたどっている。まだ全然終わっていないのだが、そこで感じたことがあるので書かせてもらう。

 

 宇賀神友弥について「雑草魂」という表現をどこかで見た気がするのだが、これには違和感と同感の両方を覚える。

 違和感というのは僕の理屈っぽさがそうさせるもので、そもそも「雑草」というのは、特別に何かを栽培している側からの言い方であり、草花そのものに本来の差はないはずだ。もしかしたら、「雑草」と呼ばれるものの中にも他の用途では役立つものもあるかもしれない。だけど、自分も墓参りなどのとき、周辺の草を引っこ抜くから、全くの屁理屈なのだが。

 同感というのは、宇賀神は自分の反骨心を推進力に変えてきたからだ。たとえば同期の槙野や柏木陽介らが年代別代表やA代表でも活躍している中、宇賀神はずっと代表に縁がなかった(2017年に初招集された)。ポジションは違うが、「代表に選ばれている奴らに負けない」という気持ちが宇賀神を突き動かしてきた。それを「雑草魂」と呼ぶのは当たっていると思う。ちょっと失礼かな、とも思うが。

 また宇賀神は、サポーターからのヤジなどにストレートに反応することでも知られていた。「言われっぱなしじゃないぞ」という性格から、その場での言い合いになることもあったが、そういうエネルギーは「試合で結果を出して黙らせてやる」という方にも向けられた。その典型は2015年のJリーグ開幕戦だ。湘南に1点リードされたが、自らのFKで興梠の同点ゴールをアシスト。その後、自分が勝ち越しゴールを決め、那須大亮のゴールにも絡んだ。あれは間違いなく、その3日前の3月4日、ACLのブリスベン・ロアー戦に負け公式戦3連敗となり、埼スタが大ブーイングに包まれたときに飛んだヤジへの反発がエネルギー源だった。「まず一つ勝とう!」と訴えた阿部勇樹への思いもあっただろう。このあたりはMDPで詳しく聞く。

 

 槙野智章についても言いたい。

 コロナ禍の前まで、ホームゲームで勝った際、試合後に選手とサポーターが共に「We are Diamonds」を歌うというのがほぼ定番になっていた。

 これは2012年に槙野がレッズに加入したときに提案して始めたものだ。

 レッズへの移籍が決まってからシーズンが始まるまでに「レッズを盛り上げるために何かやりたい」という趣旨の発言を槙野がしていたことで、かつて広島でやっていたようなことはレッズに似合わないんだが…、と警戒する向きもあったが、彼が考えたことは、それまでレッズサポーターが培ってきたものに選手も加わるというシンプルかつ大胆なものだった。

 当初「あの時間はサポーターのものだ」という反発もあったと聞く。だがサポーターとチームが一つになって闘った結果の勝利。それをやはり一つになって祝うというのは、それまでになかった。特に良かったのは選手たちが居る場所だ。ゴール裏スタンドの前で踊るチームは見たことがあるが、選手がピッチのど真ん中で肩を組んで歌うことで、バックもメーンも南ゴール裏も、スタジアム全部に一体感が広がっていく。

 応援のリードを取るサポーター、ビジュアルの準備をするサポーター、片付けを手伝うサポーター、リードに合わせるサポーター、ビニールシートを掲げるサポーター、声は出さずに手拍子だけのサポーター…。人によって事情によって行動に違いはある。だがそれらを超越した素晴らしい時間と空間の共有だと感じている。

 槙野は広島時代にもさまざまなアイデアと、それを実践する行動力で人気を博してきたようだが、それと同じことを持ち込むのではなく、浦和レッズだけのものを考え、実行に移したのだ。これも詳しくはMDP623号で。

 

 やられたらやり返す、結果で見返す、反骨心の宇賀神。唯一無二のアイデアを持ち、実行力のある槙野。

 ふと思い当たった。

 この表現は、そのままレッズサポーターに当てはまるんじゃないか?

 

 宇賀神友弥と槙野智章は、実は最もレッズサポーターに似ている2人のように思う。

 

EXTRA

 土曜日の横浜FM戦。2-0から1点返されたのが後半40分。おい!

 本当に青くなった。

 1998年11月3日。当時はまだ横浜マリノスだったが、マリノスホームの国立でレッズは2-0とリードしていた。しかし後半40分に1点を返されるとアディショナルタイムに2点をぶち込まれ、逆転負けしたのだった。

 普通なら思い出さないかもしれない。だが先日YouTube「清尾淳のレッズ話 #135」にこの話題を収録したばかりで、しかも明日23日に公開予定なのだ。何と間の悪い。万が一、ドローにでもなったら、どうしよう。

 そんなこんなで、アディショナルタイムの5分と少し、ふだんの何倍も強くこぶしを握り締めて祈っていた。

 あの日はメーンアッパーにも入場者がいたが、もし記者席でガッツポーズをしていた革ジャンの禿頭オヤジを見た人がいたら、少し恥ずかしい。 

 まあ、あの瞬間、ピッチ以外を見てた人は皆無だろうな。

 

(文:清尾 淳)