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Weps うち明け話 #1115

交代でなく、いっぺんでも(2021年12月8日)

 

 うまくて強くて、ケガをせず、あまり疲れない選手がポジションごとに1人ずついれば、28人も選手はいらない。最少で11人、多くても18人いれば十分やっていける。あ、ベンチ入り最少13人は必要だが。

 

 もちろん、そんなことはあり得ない。週2回の試合にずっと90分出場し続けられる選手はまれだし、どんなに身体のケアをしていても、相手の行為によるケガはあり得る。警告累積による出場停止もあるだろうし(今季はなかったが)、何より選手には好不調の波がある。

 そしてチームは1年だけのものではないから、今はあまり出られなくても3年後、5年後を担う若手も在籍していなければならない。

 今の28人という浦和レッズの在籍選手はまずまず妥当な人数だと思う。

 

 シーズンによっては、誰かが他チームに移籍したとたん同じポジションの選手がケガをするとかいう、嫌なめぐり合わせになることがある。それを運不運だけで片付けてはいけないと思うが、まるで“神の悪意”があるかのように(この表現、罰当たりなのか?)思えたことも過去にはあった。

 今季のレッズは、「めぐり合わせ」というテーマで見ると悪くない、いや相当良いのではないかと思っている。これは“神の厚意”かもしれないが、リカルド監督の起用法や采配も大きく影響しているだろう。あとクラブの選手補強策も。

 

 リーグ戦が始まって数試合経ったころ、オンラインでサポーターミーティングをやった。

 スタジアムで話を聞くことができないので、知り合いのサポーター数人に呼びかけて1時間ほど、思っていることを聞かせてもらった。

 その中で言われたのが「今年はよしおのチームだな、と思う」ということだ。

 小泉佳穂が攻守にわたってチームの中心になりつつある、と見ている人が複数いたし、僕もおそらくスタジアムやテレビで試合を見た人たちの中には、そういう意見にうなずく人が多いだろうと思った。

 移籍1年目の選手がピッチの中でリーダーとなるのもすごいことだなと思いつつ、これからが楽しみだった。

 

 しばらくして、またオンラインミーティングをやった。

 このときに多く聞かれた言葉は「明本は外せないね」ということだった。左サイドハーフでスタートしたシーズンだったが、サイドバックもやりFWもこなす(栃木ではアタッカーだったから当然だが)。どこで先発しても、どこへでも走って行くし、その瞬発力や走力が試合終盤まで衰えない。「一家に一台、明本考浩」というキャッチフレーズを付けたくなるプレーをしていた。

 

 そんな中、成績は白星基調になったが、点があまり取れないという時期にやってきたのがキャスパー・ユンカー。ドリブルからのシュートも、パスを受けてのシュートも決める。相手DFが少しもたついていると猛然とアタックに行きボールを奪ってしまう。あの5月5日のルヴァンカップ柏戦から6月20日のJリーグ湘南戦まで、公式戦11試合のうち9試合に先発し8試合で計10得点というとんでもない得点力は、Jリーグを見る者に驚異を、他チームには脅威を与えた。今年、多くのテレビ局が「今日の大谷翔平」というコーナーを持っていたように、デンマークに「今日のキャスパー」というテレビ番組があってもおかしくないと思った。

 ビルドアップは形になってきたが、ゴールにあまり結びつけられなかったレッズの「足りなかった最後のピースが埋まった」と言われた。

 

 東京五輪が終わり、Jリーグが再開すると、夏の移籍でやってきた選手たちがその能力を見せ始めた。

 高さと強さとしなやかさのある守備に加えて、攻撃の起点になるDFのアレクサンダー・ショルツ。特に左サイドの選手が素早くドリブルを始められる絶妙の角度とスピードのパスが素晴らしいし、前線に上がるときは「何で抜けちゃうの!」というドリブルで相手エリア内に進入するのも魅力だ。

 平野佑一は後方からのパスを受けてから前線や左右にさばくタイミングが早く、多くのチャンスを作り出したし、江坂任は大宮時代に僕が感じた“相手にとって嫌なプレー”をしっかり発揮して、レッズの攻撃を一段上げた。酒井宏樹に関しては何も言わなくていいだろう。

 

 全員について書けば書けるが長くなるので省く。だが彼らだけでなく、多くの選手に今季輝きを強めていた時期がある。

 ここで言いたいのは、それぞれが活躍する時期が微妙に違っていたということだ。

 小泉が少し調子を落とした時期には平野や江坂がレッズデビューを果たしてフィットしていたし、明本がケガで欠場した時期は山中亮輔がケガから完全に復活していた。田中達也は大分時代ほどの結果を出せていないが、大分戦、G大阪戦、横浜FM戦での活躍は今のチームの順位に欠かせなかったものだ。

 それが冒頭に書いた「めぐり合わせが良かった」ということだ。

 

 僕は次の欲、というか期待を持っている。

 まるで交代で活躍していたような選手たちが、いっぺんに絶好調になったらどうなるだろう、ということだ。その機会は今季まだ2試合ある。

 

 そして、もう一つ。

 今季、活躍する時期が来ていない選手がはまだ一人いる。

 その舞台が近付いているのではないか、という期待も捨ててはいないぞ。

 

(文:清尾 淳)