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Weps うち明け話 #1122

最終年に強く思う (2022年1月14日)

 

 当たり前のことだが、西野努テクニカルダイレクターの口から「3か年計画というものを打ち出して、今年の2022年シーズンは3年目となります」

という言葉が出た。

 1月12日に行われた「2022シーズン新体制発表記者会見」での挨拶の場面だ。

 今年は2022年だから、2020年に始まった3年計画の3年目で当然。感心するところではないはずだが、浦和レッズの歴史で一つの事業が継続して推進され3年目を迎えたことが、いくつあったのだろうか。いくつかはあっただろうけど「計画」とか「プラン」という名前を付けてうち出し、いつの間に立ち消えみたいになったものが少なくない気がする。

 特に2002年から始まった「3か年計画」は、翌年早くも存在しないものとされてしまったのだから。

 

 もちろん計画というのは、途中で変えずにやっていきさえすればそれでいい、というものではなく、最も大事なのは成功させることだ。そして成功しても、成功できなくても、その原因がどこにあったのかを検証して、次の計画の遂行に生かさなくてはならない。

 今季の終了時にどんな報告をしてくれるのか、ただ腕を組んで楽しみにしているだけでなく、3年計画最終年の成功に向けて、レッズに関わる者がそれぞれの立場で力を出していくことが求められている新シーズンのスタートだと思う。

 

 クラブのオフィシャルサイトを見ると、今季の登録27選手のうち約半数の13人に新加入を示す☆が付いている(工藤孝太を含む)。

 昨季も開幕時登録26人のうち新加入が12人もいて(復帰の伊藤涼太郎を含む)、「こんなに選手の顔ぶれが変わったのは初めてだな」と感じたが、今季はそれ以上の割合をニューカマーが占めている。

 その結果、3年計画の初年度だった2020年の開幕時に登録されていた選手で、今季も一緒に闘う選手は、西川周作、岩波拓也、鈴木彩艶(当時はまだ二種登録)、柴戸海、関根貴大の5人だけ。3年計画の遂行にずっと携わる選手が5分の1以下ということだ。

 2年間で、これほど選手が入れ替わったことは過去にない。Jリーグ開幕戦で当たる京都に期限付き移籍中の荻原拓也が戻ってきたら「浦島太郎」の気持ちがわかるだろう。

 

 顔ぶれが変わること自体が悪いわけではない。もちろん、慣れ親しんだ選手がチームを去るのは寂しいという感情は別にして。

 とりわけ昨季は、1年目に未達成だった「ACL出場」という大きな目標があったのだし、今季はさらに難しい「Jリーグ優勝」を目指しているのだから、そのために必要な選手の獲得は必要だ。他方、抱える選手の数には規約的にも、財政的にも、チーム運営的にも限度があるから、やむなく契約満了にした選手や期限付き移籍という措置を取った選手もいるだろう。あるいは本人の希望で出て行った選手もいる。

 3年計画の2年目と3年目の目標達成を可能にするチーム編成を、昨季と今季は行ったのだと思う。レッズ30年の歴史の中で、言わば「外科手術」的にチームを変貌させた最終年。Jリーグ優勝は今季最優先の課題だ。

 

 同時にそれは、浦和レッズが再び黄金期を迎え、かつそれを長期間維持していくための第一歩でなければならない。

 2023年以降、どういう名称のプランが始まるのかわからないが、それは今季が終わってから準備されて間に合うはずがない。並行した作業が必要になる。すでに進んでいることだろうとは思うが、「常勝」は「優勝」より難しい。大きな力を注いで欲しい。

 

 そして最後に言いたいこと。一番言いたいことでもある。

 3年計画というと、成績のことがクローズアップされるのは仕方ないにしても、これが発表されたときに言われた「浦和を背負う責任」を選手が感じて戦うこと。そのためには、いろいろなアプローチがあると思うが、僕が一番大事だと思っているのは、クラブ自身がその責任をしっかりと認識することだ。

 2019年12月13日。3年計画が発表された記者会見で僕は「『浦和を背負う責任』について、選手はどうとらえているか」という質問をした。それに対し、土田尚史スポーツダイレクターはひととおり答えたあと、こう付け加えた。

 

「でもこれは、選手だけのことだけではないと思っています。実際私は、Jリーグが始まり今まで浦和で過ごさせていただきました。その中でこの浦和レッズというクラブが、だんだん浦和との距離感が空いてきているのではないかと感じています。選手は、現場は、クラブの鏡だと思っています。選手にも要求します。浦和をもっと知ってほしい、理解してほしい。この浦和の責任というものがどういうものなのか。でもそれは、クラブがまず浦和をもっと大事にしなければいけないのではないか、そこも本当に見ていかなければいけないところだと思っています」

 

 3年計画の、成績での目標はもちろん達成したい。

 同時に、この姿勢は絶対に変えて欲しくない。

 

(文:清尾 淳)