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Weps うち明け話 #1123

ヤンセン追悼コラムで迷ったこと(2022年1月31日)

 

 もう、みなさんご存じだと思うが、レッズのオフィシャルサイトに、1月25日に亡くなった元浦和レッズコーチ、ビム・ヤンセンさんの追悼コラムを書かせていただいた。今回、たくさんの方に取材して初めて知った話もあり、自分自身も学べた。僕にそういう機会をくれた浦和レッズに感謝したい。

 

 本文の中で、だいぶ長く迷った部分がある。

 ヤンセンさんの国内での評判や社会的地位を、日本の人に理解してもらうのにどうすればいいか、だ。

 

 フェイエノールトの英雄で、オランダを代表するサッカー選手の一人だった。

 これだけでいいのかもしれない。読むのはある程度以上にサッカー好きの人なのだから。

 それでも中にはレッズが好きなだけで、海外サッカーなんか知らないという人もいるだろう。だから一般的な日本人に通用する表現はないか、と考えた。

 詳しい人と相談して、クライフを長嶋茂雄さんに、ヤンセンさんを野村克也さんにたとえることにした。多少の違いはあっても、ニュアンスだけわかってもらえればいい。

 日本で一番有名で人気のあった人ではないが、別のチームにいた有名選手で、ナンバーワンに匹敵するくらいの実力者であり、レジェンドだったのだ、ということが。

 

 悔しい。

 こういうときに日本のサッカー界を例に挙げられないことが。

 釜本邦茂さんをクライフにたとえても、次の人が出て来ない。森孝慈さん?横山謙三さん?杉山隆一さん? サッカー好きではない日本人がどこまで、あの方々を認識しているだろうか。世代的な差は別にして。

 

 サッカーの、という修飾語を付けなくてもほとんどの日本人が知っているサッカー選手が何人もいる社会になるまで、どれくらいかかるんだろう。今の子どもたちが、30歳、40歳になるころにはそうなっているんだろうか。

 

 自信はないが、それまでこの仕事をしていたい。

 

(文:清尾 淳)