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Weps うち明け話 #1124
金武町フットボールセンター(2022年2月7日)
2月5日(土)で浦和レッズの沖縄キャンプが終了した。
練習試合を3回組んでいたのが2回になったのは想定外だっただろうが、実施されたのが後半の2回だったこと。特に最終日の大宮アルディージャとの“仕上げ”マッチができたのは良かったのではないか。
予定していたトレーニングのうち、できたものもあればできなかったこともあるだろうし、思ったとおりの成果が挙げられたとは限らない。
しかし大学入試のように何か月も準備して1回の試験に勝負を懸けるわけではない。シーズンは約10か月間。その前にある1か月の準備期間。その中の3週間程度のキャンプで全てが決まるはずがない。
大事なのはここからの、試合~練習~試合~練習という約40数週間だ。
2日や3日、イレギュラーなことがあってキャンプの全てに影響が出るようではサッカーなどやっていられない。
サッカーは描いたとおりの展開でゴールが取れれば最高の恍惚感を得られるが、実際にはイレギュラーの連続にいかに対応していくか、というスポーツでもある。
逆に言えばイレギュラーがないことが前提のボール、スパイク、そしてピッチなど90分間それと付き合わなくてはいけないものの状態は大いに影響があるはずだ。かつて活躍したエメルソンは、普通の大きさのシンガード(すね当て)を嫌がって、かなり小さなものを使用していた。重さが問題だったのか脚の感触が問題だったのかは知らないが、90分身につけているものだから自分に一番フィットし、邪魔にならないようにしたかったのだろう。
ユニフォームも、今は「半袖」か「半袖+同色の長袖アンダーシャツ」だが、かつては半袖と長袖が混在していた。その日の気温はもちろん、選手によって好みが違うから、試合のために用意するマネージャーは大変だっただろう。初期のレッズで活躍したドイツ人のミヒャエル・ルンメニゲは半袖派で、ある寒い日に長袖しか用意していなかったら「半袖がないなら、袖を切っていいか」と言ったらしい。寒い暑いというより、自身の感触が大事なのだろう。試合中ずっと付き合うものなのだから。
キャンプで言うと、練習試合が行われるかキャンセルになるかどうかも大事だが、最も大事なのは期間中ずっと使用する練習場と宿泊のホテルだろう。
ということで今日の本題。
沖縄でキャンプを行うのは今年で7回目。最初が2016年で、このときは那覇よりさらに南の八重瀬町というところがキャンプ地だった。そこが1次キャンプで、2次キャンプが鹿児島県指宿市だった。
2017年からは1次も2次も沖縄になった。というのは、その年今回も会場になった金武町フットボールセンターが完成したからだ。それから毎年、金武町と八重瀬町で1次、2次を分けたり、金武町でずっと通しでやったりとやり方はさまざまだったが、とにかくレッズは、2016年から毎年沖縄で、そして2017年からは金武町フットボールセンターでキャンプを行ってきた。
2016年10月1日・G大阪戦のMDP506号で、当時チームの主務をしていた水上裕文さんがキャンプ地について語っている。
水上さんによると、キャンプ地は、最初にそこを使ったクラブに第一優先権があって、そのクラブのキャンプの日程が決まるまでは、他のクラブは予約できないというルールがある。
現在の金武町フットボールセンターは、良いコンディションのグラウンドを探していた水上さんが完成前から働きかけて、サッカーのキャンプ地とするにはこうした方が良い、ああした方が良いとアドバイスしたということだ。
水上さんは言う。「キャンプのグラウンドは、サッカーの試合ができるだけでは不十分。紅白戦をやっているときにリハビリ中の選手がトレーニングする場所が必要だし、あるいは練習試合をやっているときに、ウォーミングアップをするスペースが必要なんです」
その提言を取り入れる形で、この金武町フットボールセンターは十分なスペースがあるグラウンドとして誕生した。サッカーのピッチは、一般にタッチラインが105m×ゴールラインが68mとなっているが、ここは長い方が180m×短い方が85mだからピッチの周りに大きな余裕がある。試合をしている最中に外側をランニングしても何の問題もない。また両方のゴールラインの後ろに約40m×85mのスペースがあるから、器具を使ったフィジカルトレーニングはもちろんボールの使用も可能だ。
グラウンドの広さだけでなく、地面の固さや付帯設備、用具などについてもアドバイスしたらしいし、他にも大きな利点がある。
良いキャンプ地を見つけるために何度も沖縄に通った水上さんの努力が実り、素晴らしいキャンプ地を、レッズが最優先権を持って使用することができている。これは90分の試合を、快適なコンディションで戦えるのと同じくらい大事なことだと思う。
水上さんは今年(去年の末?)から、育成担当になった。レッズユースの選手が何人か練習生としてキャンプにも来ていたから会えるかと思ったが、見に来たのは現場の指導者だけで、水上さんの姿は見えなかった。
5年も経てば、井戸水を飲む人は井戸を掘った人のことなど思い出さなくなるかもしれない。だが少しでも多くの人に覚えておいてもらうことは浦和レッズにとってマイナスではないと思う。
今季レッズが目標に掲げるJリーグ優勝。それを達成したとき、金武町フットボールセンターのことを水上さんと語りたい。
(文:清尾 淳)
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