- TOP
- Weps うち明け話
Weps うち明け話 #1128
返済不要の借金と返すべき借金(2022年3月24日)
デビュー3分の初ゴールはチーム最短記録?
Jリーグ初出場から3分足らずで初ゴール、という記録は浦和レッズでは最短ではないだろうか。
昨年のキャスパー・ユンカーも初ゴールが早く飛び出したが、あれは9分だったし、ルヴァンカップのグループステージだった。キャスパーはJリーグ初出場の仙台戦でもゴールを決めているが、58分かかっている。
だから、後半からとは言え3月19日のジュビロ磐田戦で、ダビド・モーベルグがJリーグのピッチでプレーし始めてから2分43秒で初ゴールを挙げたのは、喜びの前に衝撃が来た。
そして、あの得点がたまたまではないことは、それ以外に2本の枠内シュートを放ち、右クロスで明本のゴールをもう少しでアシストしかけたところからも明らかだ。
強豪チームを相手に、試合開始からああいうプレーが通用するのか、僕にはわからないが、少なくともチャレンジはするだろうし、周りとの連係がもっと進めば得点は増えていくのではないか。
昨季後半よりやや多い現在の平均失点数
リカルド監督は磐田戦のデジタルMDPで「良い結果が出ていない理由の一つは、両方のペナルティーエリアにある」と言っている。
まず自陣エリア、つまり守備で言うと、Jリーグ7試合で8失点はやや多い。それも相手のスーパーシュートによるものなら仕方ないが、もう少しのところで防げたのではないか、という失点が少なくない。
勝利をベースにしてリーグを進めていくには、失点を1試合平均1点未満に抑えたいところだ。
昨季を振り返ると、年間総失点は38で1試合平均1点だった。
だが前半戦19試合では22失点だが、後半戦は19試合で16失点と改善されている。単純に後半戦の16失点を2倍すると32失点となり、川崎の28失点、名古屋の30失点に次いでリーグ3位の数字になる。
昨季からの継続なのだから、今季のスタートもこれくらいの失点数で抑えたかった。もし7試合で5失点に抑えていたとして、それが川崎戦で2点、神戸戦で1点ならば、川崎に勝点差1の2位タイにいたはずなのだ。ものすごくムシの良いタラレバではあるが。
現在のペースは「総得点70」を5点下回る
だが、もっと憂うべきは相手ゴール前でのクオリティー、すなわち得点数だった。
リカルド監督は開幕前に「トータル70点は取りたい」と数字を挙げている。1試合平均にすると2得点以上ということになり、勝点を積み上げていくのに妥当な数字だと思うが、それに照らせば現在の7試合なら14点以上取っていなければならず、9得点というのは、それを5点以上も下回っていることになる。しかも7試合中無得点が3試合というのは困った状況だった。
おいおい。「だった」「だった」と、過去形で言う話なのか?
まだ目安の総得点数にはだいぶ届いていないんだぞ。
総得点の“借金”は返さなくてもいい
過去形でいいと思う。
鳥栖戦の後の監督記者会見で、「優勝するのに70得点くらい必要だと話していたが、今の状況だとそこまで届かないが」という質問があった。
妥当な質問のように聞こえるが、総得点70は優勝するための目安としてシーズン前に挙げた数字であり、目標ではない。目標ならば現在は“借金”を抱えている状況であり、残り27試合で61点が必要と、ハードルが少し上がることになるが、この借金は返済しなくていいのだ。いや、そもそも借金ではない。
たとえば磐田戦は3点差で勝ったが、だからと言って勝てなかった5試合で失った勝点が戻ってくるわけでもない。大事なことは、ここからの27試合で毎試合2得点以上挙げていくことなのだから、もう「70得点」にこだわる必要はない。年間総得点の目安を言うなら「9+54」で「63得点」に下方修正して何の問題もないのだ。
もちろんゴールがたくさん生まれれば、その回数だけサポーターが喜びを爆発させられるから、大量点で勝つことは理想だ。毎回、4点とは言わないが3回相手ゴールネットを揺らせば、満足度は大きくなるし、エンターテインメントとして、毎試合そういう努力は必要だ。
大事な勝点の“借金返済”。期待するのは
一方、勝点の取りこぼし、つまり上位との差は詰めていかなくてはならない。今は首位の川崎に追い付くためには勝点9、2位の横浜FMまでなら勝点3の“借金を”背負っているような状況にある。この借金は返さなければ上位、あるいは首位には立てない。
ACLグループステージが行われる4月後半までのリーグ3試合(札幌、清水、東京)は勝ちたいし、そのためにはやはり1試合2得点以上挙げ、1失点未満に抑えることが必要だ。モーベルグの加入は戦力としてプラスなだけでなく、あのインパクトは相手チームの注意をひき付けるのに十分だった。そのことで他の選手へのマークが少しでも緩くなり、チーム全体の得点がアップすることに期待している。
磐田戦で先発した関根は評価が高くないようだが、前半放った4本のシュートのうち6分、32分、47分の3本は枠内だった。たしかに絶好調であれば、この3本がGK正面を突くことはなかっただろうし、身体のひねりが不十分で枠を外した45分のシュートももっと磐田ゴールを脅かしていただろう。
一方、35分にPKを獲得したシーンは、関根からキャスパーへのスルーパスが起点となっていた。直接ゴールに結びつくことはなかったが、期待させる場面は多かった。モーベルグが定着すると出番が減るかもしれないポジションではあるが、それを乗り越えて関根がピッチで長い時間躍動するようであれば勝点の借金は減っていくに違いないと思っている。
ACL出場チームは開幕からリーグ連戦が続いたが、その分今週末は試合がない(他のチームはルヴァンカップ)。
関根だけでなく、チームがこのインターバルで調子を一段上げることを期待している。
(文:清尾 淳)