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Weps うち明け話 #1131

さあ、始まるぞ(2022年4月15日)

 

 今日、浦和レッズは今季のAFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第1戦を迎える。日本時間の23時キックオフ、シンガポールのライオン・シティ・セーラーズが相手だ。

 

 前回出場したのが3年前で、それほど昔の話ではないのだが、2013年からの10年間で6回目、一時は出場するのが当たり前のようになっていた時期もあったからか、何だかかなり久しぶりのような気がする。

 

 対戦する相手のレベルにもよるが、選手にとってACLを実戦経験したか、していないかの差は大きい。

 たとえば“ACL好き”で知られた宇賀神友弥は、プロ4年目の2013年に初めて海外勢との戦いを経験したが、それがアウェイ中国での広州恒大戦だった。チームとしても5年ぶりのACLだったこともあり、0-3で敗れた。宇賀神は、ファウルすれすれで激しく当たっても倒れない相手のフィジカルコンタクトの強さに初めは驚いたが、そこでACLの魅力にハマったようだ。

 

 僕は、アウェイの広州戦が終わったとき「こんなチームにどうやって勝つんだろう」と感じたが、選手たちは手ごたえをつかんだようで、ホームでは勝利したし、その後も広州恒大には負けておらず、通算4勝1分け1敗となっている。

 今回、出場を辞退したという上海上港とも通算6戦しているが、負けたのは初戦だけでその後2勝3分けと負けていない。

 特徴がはっきりしているチームには一度対戦した後は強いというのが、かつてのレッズだった。逆に突出した外国籍選手がいるわけではない韓国チーム相手の方が、勝つのに苦労しているかもしれない。特に全北現代には2007年の初対戦のときには2勝したが、2013年と2019年は計1分け3敗している。今季、同組になった大邱FCとはどうだろうか。

 

 ACLを戦う楽しみは、Jリーグとは特徴の違う相手をどう攻略するか、ということもそうだが、もう一つの大きなポイントは、海外勢との戦いを通じてチームがどう変化するか。平たく言えば、どう鍛えられるか、ということだ。

 2016年、ACLのグループステージと並行してJリーグを戦う中で、アウェイの横浜F・マリノス戦で「マリノスってこんなに守備的なチームだったっけ?」と思うほど、相手を押し込んだ試合があった。また等々力での川崎フロンターレ戦で「川崎のプレスってけっこう緩いじゃん」と感じたことがあった。

 いま思えば、ACLで相手の出足の鋭さや激しいプレスを見ていた僕が、Jリーグのそれを緩く感じてしまったこともあるが、レッズ自体が広州恒大やシドニーFCとの戦いで鍛えられていたのだろうと思う。

 

 もちろん、それは多くの選手がACLを何度も経験した後のシーズンだし、ミシャ監督5年目の熟成期でもあったから、今季のレッズが直ちにそう変貌するかどうかはわからない。

 選手の顔ぶれも変わっており、外国人向けの選手と言われた青木拓矢、常に高い能力を発揮する遠藤航、デュエルの強い長沢和輝、相手エース潰しの槙野智章、ガチバトル大好き宇賀神友弥、相手DFを悩ませる興梠慎三、そしてラファエル・シルバらはもういない。

 現在の28人のうち、レッズでACLを戦ったことがあるのは、西川周作、岩波拓也、関根貴大、柴戸海。他チームで経験しているのが酒井宏樹、馬渡和彰、犬飼智也、江坂任。西川と犬飼は優勝経験もある(だから犬飼の離脱は非常に痛い)。またアジアではないがヨーロッパでインターナショナルリーグに出ている選手もいるから、経験者は少なくないが、2016年のレッズのように「常連」化しているわけではない。

 だから経験者はACL勘を取りもどし、未経験者は驚きをモチベーションに変えて、6試合を通じて成長してきて欲しい。

 

 今日から30日まで16日間で6試合の日程は、おそらくほとんどの選手が味わったことのないハードスケジュールだ。フィールドプレーヤーで6連戦全部にフル出場する選手がいるとは思えず、多くの選手が強さ、速さ、厳しさ、苦しさ、ときにはズルさといった経験を積めるだろうし、海外で3週間「同じ釜の飯を食った」選手たちの結束は固くなるに違いない(その飯が、西シェフの料理なのだからうらやましい限りだ)。

 

 試合を前にしたキャプテンの西川は、13日に取材を受けて、こう語った。

「何が起こるか分からないのがACLです。それはみんなに伝えていますし、経験がある選手もいる中で、グループステージの初戦は本当に大事になってくるということと、自分らしさをしっかりと出す、それがチームのためになるということは、今日の選手だけのミーティングでも話をしました。とにかくチームがACLで一つになって戦い、その後のJ1リーグにも生かしていきたいと思います。この期間はみんなと一緒にいる時間も長いですし、もう一つ団結するためのいい機会だと思っています」

「今までJ1リーグ10試合を戦ってきた中で、もどかしい試合が続いていました。勝ちそうで勝ちきれない試合がありました。内容が悪いとはみんなも思っていませんし、ACLを通じてすっきり勝つ試合ができれば、チーム全体の自信にもなりますし、ACLの結果でJ1リーグの対戦相手の見方も変わると思います。そういった面でもACLの重要度は間違いなくあると思っています」

 

 その経験や結束をより大きな力にするのが勝利であり、グループステージ突破だ。それを土産にして、日本へ、浦和へ、Jリーグの戦いに帰って来てもらいたい。

 

 最近、真夜中過ぎまで起きているのが辛くなってきた年齢なのだが、今日は体調を整えてキックオフを待とう。

 

(文:清尾 淳)