1. TOP
  2. Weps うち明け話

Weps うち明け話 #1136

楽しみな個性(2022年7月15日)

 

 一つのゴールでいつまでも話を引っ張るようだが、7月10日、FC東京戦の3点目の話だ。

 あれは馬渡の左スローインから始まった。馬渡は元のポイントから少しずつ前に移動し、あと1m動いたらレフェリーに戻されるかな、というところでボールを投げ入れた。それを江坂が受けたところから始まるのだが、江坂は足もとでもらうより、スペースに出してもらい、動きながらボールを拾ってそのままプレーに移ることが多い。今回も遠めの位置でもらって、それをコントロールして右のモーベルグに大きくサイドチェンジした。ボールを入れた馬渡にも、そこまで見えていたのだろうか。

 

 さすがに最後の大久保のゴールまでは予想していなかっただろうが、ある程度のチャンスになることは考えていたようだ。ボールを入れるポイントを探しながら、江坂からの合図を見ていた。

「任(あたる)はスローインをもらうときから、デヴィッドの位置とかを計算していたんでしょうね。僕のスローインの飛距離も考えて落とす場所を指示したと思います。あそこから一気にチャンスになりましたが、ああいう形は常に狙っていて、そこから良い展開になることがけっこうあります、たまたま出たプレーではないです」と馬渡は語る。

 

 リーグ戦では6試合ぶり、埼スタでは5月18日以来の出場となる馬渡だが、経験のある選手同士、そのあたりの呼吸はピタリと合っているようだ。

 馬渡と言えば、プレースキッカーとしても重要な存在で、チームの中では最もスピードがあるライナー性のボールを供給する。スピードボールは合わせる方も難しいが、相手にとって下手なさわり方をするとオウンゴールにもなりかねない嫌なボールだ。

 この試合の75分にも、江坂と明本のチェイシングから敵陣左サイド深い位置でFKのチャンスを得て、馬渡がボールをセットした。ファーでゴールラインを割るようなコースに飛んだが、ショルツが大外を回り込んでラインを越える寸前で折り返した。GKに阻まれなければ、中にいた岩波が決めていたに違いない。

 馬渡は蹴る前に、ショルツからの「ファーポストに蹴って欲しい」という注文を岩尾経由で聞いていたらしいが、その注文どおりのボールだった。

 

 セットプレーの練習はよくやっているレッズだが、キッカーが多彩なのも楽しみの一つだ。馬渡の左CKなどは誰も触らなければ、そのままゴールインしそうなほど曲がる。

 もちろんゴールも期待している。この東京戦では85分に、江坂からの縦パスに合わせて抜け出し、シュートを放つ場面があった。コースはGKに切られていたが、馬渡のキックならGKを巻いてファーサイドに入ると思われた。しかしボールはゴール右に外れた。

 これに関しては

「久しぶりの出場だったので、だいぶ乳酸も溜まっていましたからうまくボールにヒットできませんでした。そこは悔いが残りますが、これから積み上げていって、CKからの直接ゴールも含めてゴールやアシストという結果を残し、チームに貢献していきたいです」と語る。

 

 選手のケガ、そこからの回復、新しい選手の加入、個々の好不調、そして連戦という背景があり、試合に臨むメンバーは毎回のように替わる。今日、加入記者会見が行われたブライアン リンセンが出場するようになれば、また布陣が変わるかもしれない。

 誰が出ても同じように、とは思っていない。それぞれの個性が発揮されることを望んでいる。選手同士の理解が深まってきたと思われる現在、その個性を発揮しながらチームとして攻撃し、守るということができてきたと思う。

 

 清水戦でもそれを期待したい。

 

(文:清尾 淳)