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Weps うち明け話 #1141

ACLで活躍して欲しい選手(2022年8月17日)

 

 行っちゃえ! そのままシュートまで行っていいぞ!

 

 8月10日の磐田戦、すでに5-0と大差をつけた74分。安居海渡がドリブルを開始したとき、そう思った。

 前を小泉佳穂、キャスパー・ユンカー、大久保智明が走っていたから、ラストパスは三方向に出せる。しかし、逆に磐田のDFはその3人をそれぞれマークしているから、しばらくは寄せてこないはず。もう少し運べばミドルシュートのレンジに入る。1点を争う状況ではないから、ここはエゴを発揮してもいい。俺が許す!

 僕が許しても意味がない。安居は右の大久保へのパスを選択。パスを出す寸前、磐田DFに引っ張られたが、ものともしなかった。大久保は右クロスを上げる直前、磐田DFに倒されFKを得た。

 

 安居はこう語った。

 

「相手に引っ張られても体が前に入っていたので大丈夫でした。

 最初、タクくん(岩波拓也)からのボールを受けたとき、奪われかけちゃったんですけど、また取り返して前に運べました。最初のトラップが大きくなるミスがなければ、もう少しスムーズにいけたと思いますし、近くにアタルくん(江坂任)もいましたから、渡しても良かったかなと。

 終わって思い返すと、その方が良かったのかな、とも思いましたが、結果的に最後はトモくん(大久保智明)に出して、トモくんがファウルを受けてFKを得たので、それはそれで良かったのかな、と思っています」

 

 そうそう。岩波のパスをトラップしたとき、少し大きくなって相手に先に触られてしまった。だが、すぐに体を寄せて奪い返した。僕が、最後まで行け! と思ったのはそのときだ。安居の武器である1対1の強さを発揮しながら前に運び、最後は強烈なミドルシュートを見せて欲しかった。相手に引っ張られても平然とドリブルを続ける強さ。そのまま運んで、もう一人や二人アプローチに来ても軽くいなしていたのではないか。しかも安居のシュートならエリアの手前からでも十分な威力がある。

 こういうときでないと、短い時間で彼の持ち味をアピールするチャンスはめぐってこないかもしれない。

 でも仕方がない。次はACLだ。ラウンド16を前にして。安居はこう言う。

 

「ACLはいつもと違って、相手は全部外国人選手ですし、日本人よりも体が強い選手が多いと思います。そういう中で自分がどこまで通用するのかというのが、楽しみです」

 グループステージでは左右両足でそれぞれゴールを挙げた。リーグ戦再開後の活躍が楽しみだった。しかし安居のメンバー入りはなかなか回って来なかった。

 ACL後、初めての出場が川崎戦の82分だった。そのアディショナルタイム、左に流れたキャスパーからのクロスにトップスピードで走り込んで合わせたあのシュートが入っていれば、注目度は違っていただろうが、惜しくも外した。キャスパーがそのままシュートに行けないと見るや、全力で走り出したプレーは評価されるべきだが、注目の度合いは低いかもしれない。

 

 ACLは一発勝負の試合で、勝てば中2日で全3試合。リカルド監督も選手起用に迷うところだろうが、総力戦であることは間違いない。安居の出番は必ず来るだろうし、それは初戦かもしれない。ACLを勝ち抜くことがいま最大の目標だが、9月からはルヴァンカップの準決勝以降とリーグ戦の残り9試合がある。終盤の戦いに、底上げして臨むためにも、安居海渡はACLで活躍して欲しい選手の筆頭だ。

 

(文:清尾 淳)