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Weps うち明け話 #1143

こんなもんじゃない(2022年8月24日)

 

 レッズオフィシャルの「サイトメンバーズ」に、ACL準決勝、全北現代モータース戦に向けた、小泉佳穂のショートムービーがアップされている。その中で、埼スタでACL2試合を戦ってどう感じるか問われ、「浦和レッズがACLに対する強い思いを持っていることを感じるし、サポーターの熱量、あと押しからもそれは感じる」と述べた後、「まだ、こんなもんじゃないだろう、とも思う」と語っている。

 

 そう。いろいろな意味で、まだまだこんなもんじゃない。

 準決勝まで来たが、2019年までのACLを知っている人にとっては少し物足りないかもしれない。

 出場枠が増えたことで、以前なら出場できなかったクラブとの対戦もあるし、中国のクラブがユースチームのような編成で参加していることもある。セントラル方式ということで、韓国や中国など対戦相手のホームに乗り込んだときのピリピリした緊張感もない。ましてやノックアウトステージの開催地はさいたま市だ。

 

 だから、ラウンド16と準々決勝を終えて、ACLらしさを感じたのは、広告看板などが徹底して隠されていることと、レッズの応援だけだった。

 もちろんスタジアム全体で声が出せれば、もうふたまわりくらい大きなパワーになるのだろうけど、2年半、拍手と手拍子だけの応援に浸ってきて、声での応援は久しぶりだし、チャントの内容、ビジュアルも含めてACLならではの応援が展開されている。同じ声出し可の応援でも、ルヴァンカップ準々決勝第2戦とは違う雰囲気があるように思う。

 

 そして、次の全北現代戦こそ、応援だけでなくピッチの上もACLらしい戦いになると思う。

 全北現代は、浦和レッズと同じく優勝2回、準優勝1回のACL常連クラブ。レッズとは過去3シーズンで対戦し、レッズの2勝1分け3敗。しかも埼スタで1勝2敗なのだ。失礼を承知で言えば、JDTやパトゥムとは全く違う相手だ。全北側からすれば、レッズに対して自信を持っているに違いないし、埼スタだからといって苦手意識はないかもしれない。逆に相手のホームスタジアムでの一発勝負という不利な環境にモチベーションを高めている可能性が高い。

 

 西川周作は準決勝についてこう語る。

「終わったから言えることですが、ここまでの2試合は、Jリーグの方が苦しい試合だったと思います。しかし次の全北は、これまでのチームと同じではありません。全北だけではなく、韓国勢とやるときは球際も激しくなりますし、相手は気持ちでぶつかってくる感じですから、覚悟して試合に入らないといけないです。

 次に勝って、決勝でようやくACLを味わえます。これまでとは比べものにならない厳しい戦いが待っているので、そこに挑むためにも次は絶対に勝ちたいです。みんなもそれはわかっていると思いますし、ラウンド16に入る前は、みんなすごく良い雰囲気で練習できていました。その流れを続けていきたいです」

 

 同じく全北との対戦経験のある岩波拓也はこう言う。

「精神的なものも含めて、これまでより難しい試合にはなると思いますけど、最近の良い流れを継続するだけかな、と思います。

 3年前の全北は、良い外国籍選手もいて、強くて堅い、フィジカル的にも韓国のチームという感じでした。今はそこまで外国籍選手に頼るのではなく、足もとでつないでくるサッカーをしていると思います。9番と11番の外国籍選手は強かったですが、そこまであの2人に任せるという感じでもないと思います。

 ここで負けると、積み上げてきたものの意味がなくなってしまいます。自分自身、3年前に準優勝だった悔しさがあるので、まずは決勝の舞台に立たなくてはなりません。東地区での決勝ということになります。しっかり準備して臨みたいです」

 

 最後に全北現代と対戦したのはわずか3年前、2019年のグループステージだが、全北と対戦した経験のある選手は、他に柴戸海が1試合に途中出場しただけだ。

 とはいえ対戦経験がなくても、全北との準決勝をJDT戦やパトゥム戦と同じレベルだと考えている選手はいないだろう。

 

 パトゥム戦で川崎戦以来約3週間ぶりに先発フル出場した関根貴大は、全北現代との対戦こそないが、ACL自体は20試合以上の出場経験がある。

「全北戦も、本当の意味でのACLとは言えないかもしれません。これまで自分がやってきたACLの感触だと、埼スタでは負けないですが、アウェイではなかなか勝てる気がしない、そういうものでした。それが埼スタでの一発勝負ですからね。

 ですが、これが今年のACLなんです。次に勝って決勝に行けばいいんです。決勝に行くと、アウェイでとんでもないプレシャーを受けると思います。そこで、みんな本当のACLを味わうためにも、全北戦は勝ちたいです。

 もちろん簡単な相手ではないので、これまでのように前半2点、3点取れることはないかもしれません。そういうときに、気持ちの部分で自分にできることはあると思います」

 

 そして、選手たち以上に相手に対して闘志を燃やしているのがレッズサポーターだと思う。

 岩波の言うように、東地区の決勝。その相手が全北現代モータース。場所は埼スタ。ゴール裏だけだが声が出せる。これまでと同じ熱量のはずがない。

 

「まだ、こんなもんじゃないだろう」と言う佳穂に、試合後「僕の想像を超えていました」と言わせて欲しい。

 

(文:清尾 淳)