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Weps うち明け話 #1146
燃え尽きるには早い(2022年9月2日)
MDPの取材で聞いた話を、その前に違う媒体に書くのはフライングというかオフサイドなのだが、これは鹿島戦の前に紹介しておきたいので、あえて書くことにした。
「ここが今季のリーグ戦のヤマなんじゃないかと思っています」
小泉佳穂は、そう言った。
ACL決勝進出という流れをどうリーグ戦につなげるか、というテーマになったときだ。
「ACLであれだけ高い緊張感を経験してから、次の試合というのはすごく難しいものがあると思います。鹿島、柏と上位との対戦なので、まだ緊張感を持てると思いますが、少しの緩みも見逃してくれない相手ということも言えますし、厳しい試合になるかもしれません」
大きなインパクトのある試合の後、通常の試合に戻ったとき、ガクッと力が落ちてしまうことはある。2007年のACLで優勝した後、レッズは国内公式戦4試合で1分け3敗という信じられない結果しか残せず、天皇杯を初戦敗退、Jリーグ連覇を逃したのだった。
疲労もピークを迎えていただろう。リーグ優勝というモチベーションをもってしても、そのダメージをカバーしきれなかったということだ。
天皇杯初戦の相手愛媛FCのサポーターから「お前ら、それでもアジアチャンピオンかよ!」というヤジが飛んだが、僕は「それだけアジアで優勝するのは大変だってことだよ!お前らにゃ、絶対味わえねえけどな」と心の中で言い返すしかなかった。あの愛媛戦は、ACL決勝から2週間も経っていたのだが。
松尾佑介も言う。
「これから対戦するリーグ戦の相手が自分たちより上位のチームだというのは楽しみです。
ただ、大きな大会で決勝進出ということが果たせたので、逆にリーグ戦に入っていくのがメンタル的に難しいかもしれません。ちょうど、シーズンの疲れが出てくる時期でもありますし、しっかりとケアしていかなければなりません。さらに総力戦にならなければいけない時期でもあると思います」
きょう行われたリカルド監督のオンライン記者会見でも、そういう話が出た。
リカ監督は「選手たちには、どの大会でもACLやその前に出せたパフォーマンスを続けることを求めた」と語ったが、プレーする選手たちの内面までコントロールするのは簡単ではない。
また誰がピッチに送り出されるかも注目される。
中2日の3連戦という、めったにない日程だったACLのノックアウトステージ3試合は、西川周作、酒井宏樹、岩波拓也、ショルツ、大畑歩夢、伊藤敦樹、岩尾憲、モーベルグ、小泉、松尾の10人が3試合とも先発だった。唯一、左サイドハーフだけが、初戦は大久保智明だったのが、残りの2試合は関根貴大だった。
8月上旬の名古屋との公式戦3連戦で、2試合目(Jリーグ24節)の先発を大幅に替えたことに比べれば「酷使」とも言えそうな選手起用だが、それが今回奏功したのは、一発勝負の連続で、自分たちが勝ったから次の試合がある、という「乗っていける」状況が、高いモチベーションと緊張感を維持させたからだろう。
8月25日の準決勝を終えて3日のオフがあり、月曜日に練習を再開。言わばリセットした状態でリーグ戦再開に臨むわけだ。ACLを勝ち抜いたメンバーのままなのか、それ以外の選手が何人入るのか、それも試合のポイントだ。
間違いなく好調と思われているレッズだが、それゆえに鹿島戦は難しくなりそうだ。
だが、思えばそれを言ったのが小泉と松尾。プロになってまだ4年目(松尾は特別指定選手時代から4年目)の2人が、そういう懸念を抱いているというのが逆に頼もしい。
それにACLは一区切りついたとは言え、優勝したわけではない。ノックアウトステージは大きな大会ではあったが、得たものはまだファイナリストの資格だけだ。燃え尽きるには早すぎる。
小泉は「今季のヤマ」と言った。
つまり明日の鹿島戦で好調を維持し、勝ち点3を挙げることができれば、その後も勝ち進んでいく流れが作れるはずだ。
4度目のACLファイナリストになった浦和レッズの力が、本物であることを見せてやろう。
(文:清尾 淳)