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Weps うち明け話 #1150

「浦和を背負う」なら(2022年11月30日)

 

 2022シーズンの浦和レッズは、起伏が大きかったと思う。

 スーパーカップで川崎を下して優勝するという華々しい幕開けだったが、リーグ戦では開幕から16試合で15得点、勝ち点も15という残留争いに匹敵する状況だった。リーグ戦で10試合ぶりに勝ったと思ったら、天皇杯では3回戦で群馬に敗れて早々に姿を消してしまった。

 それでもリーグ戦では上昇に転じ、ACLノックアウトステージでも埼スタでの一発勝負というアドバンテージを生かして決勝進出を果たした。しかし、その勢いを続けられずYBCルヴァンカップはまた準決勝でC大阪に敗れた。しかもホームの第2戦で0-4という屈辱的な大敗だった。

 最後の希望は、残り5試合を全勝すればどうにかなるかもしれない(上位が負けて、かつリーグ3位以内のチームが天皇杯で優勝するという超他力本願)来季のACL出場権だけだったが、いきなり広島に1-4と打ちのめされてしまった。

 

 タラレバの話だが、今季15試合あった引き分けが8勝7敗だっタラ、勝ち点は53になっており、リーグ戦は4位だったのだ。そして3位の広島が天皇杯決勝で勝っていレバ、繰り上がってACLの出場権は確保できていたはずなのだ。ドローの15試合を判定で評価すれば、それぐらいの勝敗になっていそうな内容だった。勝てそうな試合でしっかり勝ちきることは、来季に向けて絶対に改善しなければならない課題だ。

 

 だが、それよりも残念だったこと。

 しかも、今年「も」残念だったこと。それは終盤の戦いぶりだ。

 

 最終節福岡戦、11月5日のMDPにも同様のことを書いたが、2007年以降、今季までのホーム最終節の勝敗は通算3勝2分け11敗となった。

 ホームでのリーグ戦通算成績(J2を含む)は、270勝85分け162敗。埼スタでのそれは164勝75分け85敗(大宮ホームを含む)。どちらと比べてもはるかに悪い成績しか残していない。

 

 なぜ2007年以降に限定して取り上げるのか。

 それは2006年まで、駒場あるいは埼スタで行われたリーグ最終節(つまり富山で行われた94年を除く)は、11勝1分け1敗と圧倒的に勝っていたからだ。

 1993~2006年:11勝1分け1敗

 2007~2022年:3勝2分け11敗

 並べてみると、その差は顕著だ。

 

 僕は何度か言っているが、プロサッカークラブの責務の1つは、たとえ数字上の可能性でもいいから、最終節まで優勝の望みを残すことだと思っている。それを果たせたのは30年間で7シーズン(2004、2005、2006、2007、2014、2015、2016)と、多いとは言えないが、間違いなくその年は希望を抱いて最終節を迎えていた。近年は、優勝には届かなくてもACL圏内の3位というのも、次の目標にはなる。

 

 リーグ戦の終盤になったら、今季をどう終わるか、というのが大事になる。

 残り5試合に全部勝てば優勝に近づける。3位に近づける。他チームの結果次第では近づくだけでなく手にできるかもしれない。

 そういうときに口だけでなく実際に「決勝のつもりで」戦って欲しい。ホーム最終節を少しでも良い状況で迎えられるように、疲れた体に鞭打ってでもギアを上げて欲しい。

 

 一番悔しいのは「モチベーションの差」と言われることだ。

 地力の差で負けるのも悔しいが、まだ諦めがつく。しかし勝とうという気持ちの差で負けるのはたまらなく悔しい。

 最後のホームゲームにたくさんの人が来てくれるよう少しでも調子を上げていきたい。最後は喜んで終われそうだとチケットを買ってもらいたい。それは浦和レッズのモチベーションにはならないのか。

 

 そして僕が思う、プロサッカークラブの責務の1つはホームの最終節だけは絶対に勝つことだ。

 開幕戦も大事だが、開幕戦はもし負けてもすぐに払拭する機会がある。だが最終節は、それが終わると1か月、2か月、今季などは3か月近く公式戦がなくなるのだ。ファン・サポーターと浦和の人たちがどんな思いで、どんな来季を想像しながらオフを過ごすのか。それは最終節の勝敗にかなり左右される。

 その最終節で、今季は福岡に先制しながら追いつかれて引き分けた。福岡は、もし負けてG大阪と湘南が勝っていたらJ1昇格プレーオフ圏に後退するところだったから、勝ち点1への執念は強かったと思う。もしあれが勝ち点3への執念だったら、どうなっていただろう。

 

 クラブが掲げる「浦和を背負う責任」という言葉。結局は、毎試合勝つために全力を出すということになってしまうが、具体的にこれだけは意識して欲しい。

 ホーム最終節は絶対に勝つこと。

 ホーム最終節に向けて、ラストスパートを掛けること。

 最終節まで、最低でも3位以内、できれば優勝の可能性を残すこと。

 

 それで僕たちはかなり幸せになれるはずだ。

 

EXTRA

 

 思い出すのは2003年の最終節だ。前節でステージ優勝の可能性がなくなり、モチベーションだだ下がりで埼スタに鹿島を迎えた。前半2点を先行されたが、「埼スタで相手を優勝させるわけにはいかない」という気持ちがレッズのギアを上げ、後半2点を挙げてドローに持ち込んだ。上記の「1993~2006年:11勝1分け1敗」の「1分け」がこれだ。詳しくはnoteの拙文で。(https://note.com/saywhoand/n/ne998229d10ba

 

(文:清尾 淳)