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Weps うち明け話 #1156

3年計画が果たしたもの~2022シーズンの話・5(2022年12月29日)

 

 2022シーズンで最も良かった時期は、6月18日のJリーグ第17節で名古屋グランパスに3-0で勝利してから、ACLノックアウトステージ3試合を経て、Jリーグ第29節で柏レイソルに4-1で快勝した9月10日までだろう。

 リーグ戦では14位から9位まで順位を上げ、ルヴァンカップでは準決勝進出、ACLでは決勝進出と、上昇気流に乗った約3か月間だった。

 

 結果が上向きになったきっかけは、前回述べたように土田尚史スポーツダイレクターが、チャンスにはミスを恐れず速く攻めるという、前への意識を持つよう選手たちに強調したことだったが、その前提としてボールを保持し、主導権を握って試合を進めるという、前年からリカルド監督が推し進めてきたチームのスタイルがあった。

 ボールを持った中で、どういうプレーを選択するか。選手たちの意志が一致したときに、良い結果につながった時期であり、それが選手たちをさらに前向きにするという好循環だった。

 

 それだけに、終盤になって勝利が少なくなったことが残念だ。

 とりわけ大量失点が目立った。ルヴァンカップ準決勝第2戦でセレッソ大阪に0-4、Jリーグ第31節でサンフレッチェ広島に1-4、第33節で横浜F・マリノスに1-4。シーズン前半の、16試合で勝ち点15と低迷していた時期も失点は16と多くはなかった。その守備での強さを維持しながら、縦に速い攻撃を織り交ぜることで得点が増え、白星先行になっていったのだが、それが薄れていった。

 

 バイタルエリアへの進入を許しても、ボールホルダーにしっかり人が付き、クロスを上げさせない。シュートを打たれても必ず前に人が立ち、体で防ぐ。そういう粘り強い守備が、1点取られるとどこかへ行ってしまい、バタバタと失点を続けたのが先に挙げた3試合だ。

 選手たちが執着心をなくしてしまったかのように感じられて悲しい気持ちになった。

 

 その要因はよくわからない。リカルド監督は終盤、試合前に「本気のレッズを見せる」とよく語っていたのだが、それが選手たちの心に届いていたのかどうか。監督の言葉だけでなく、それは取りも直さずクラブが言う「浦和を背負う責任」ではないのか。

 優勝や3位以内がかかっていなくても、応援してくれる人たちや浦和の街に、シーズン終了まで良い試合と勝利を見せたいという気持ちを仕舞っておかずに見せて欲しかった。

 

 2023シーズンは、レッズの歴史上、ある意味で最も注目される重要なシーズンになる。

 それは、クラブが定めたサッカーのスタイルが、監督が替わることでどう実践されていくのか、という意味においてだ。

 成績ももちろん重要だ。だが、それと同等かそれ以上に大事なのは、レッズの将来だ。2019年に発表された「3年計画」は、今後のレッズを築いていく序盤の、さらに滑り出しであり、改革は緒に就いたばかりだと思っている。

 

 クラブのフットボール本部は、3年掛けてチームのあるべき姿について言語化してきた。それは強い闘争心を持つという精神論はもちろん、具体的なプレーについて述べられた、言わばチームの憲法のようなものかもしれない。

 

 一定の結果を残したリカルド監督を続投させないというのは、その憲法に照らして不足している部分があったということだろう。だが過去、監督交代が裏目に出たことも少なくなかった。もちろん、クラブには勝算があってのことだろうが、その是非はまだ判明しない。

 

 監督が替わって、この2年間で培われたもののどの部分が生かされ、クラブの掲げる理想にサッカーがどこまで近づくのか。「3年計画」が果たした役割が明確になるのは、来季以降なのだ。

 クラブの覚悟が問われる来シーズン、いつも以上に注目したい。

 

(文:清尾 淳)