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Weps うち明け話 #1158
相互理解(2023年1月23日)
今日で、沖縄キャンプに来て10日目だ。初日からいるメディアの人はちょうど2週間になるわけだ。
キャンプの取材とふだんの大原での取材とで違うのは、なんと言ってもチームのそばにいる時間の長さだろう。
キャンプでは、選手がグラウンドに現れるところから、ほぼ最後の選手が引き上げるまでずっとそこにいるし、しかもそれが1日に2回ある。のべ4時間半から5時間ぐらいはレッズのそばにいることになる。
ときには土田SDや西野TDと雑談もする。
あの選手、ホントに来るの? 来ないの?
「◎▼〒➗♂&♪×…◎▼〒♂&♪×…」とか。
(返事の部分はピー音)
ポーランド人の監督が来ると聞いて、真っ先に思い浮かべたのがアンジェイ・クビツァ。2000年の1シーズンだけレッズに在籍した、長身のポーランド人FWだ。ネガティブな面をことさらに言い立てる人もいたが、僕はJ1復帰に貢献してくれた助っ人だと思っている。
23年間以上、レッズを見ている人なら知っているよね?
でも土田SDも西野TDも、沖縄で僕に言われるまで思い出さなかったようだ。
土田SDは当時、実質GKコーチだったから、思い出は薄いかもしれない。でも西野TDは、一緒にプレーしていたのに、それどうよ。しかも「そう言えば僕はあいつとしゃべることで英語を勉強したな」というほどの付き合いだったらしいのに。
初対面の人と雑談するときは、共通の知人というのがとっかかりになるもの。スコルジャ監督とクビツァはほぼ同い年で、スコルジャは選手生活が短かったが、同じポーランドでサッカーをやっていたのだから知っているだろうし、監督と話すとき会話が弾むかなと思ったのだ。
「聞いときます」
午前練習のとき、そう言った西野TDは、本当に午後練習までにスコルジャに聞いてくれたようだ。
「クビツァ、知ってました」
お。
「でも、いま何をやってるか知らないって」
あ、そ。
終了。
他にポーランドで知っていること。
ワールドカップロシア大会のグループリーグ最終節…、あの試合の話で会話が弾むかなあ。
映画監督のアンジェイ・ワイダ…、名前は知っているけど、映画を見たことがない。
アウシュビッツは重たすぎるし…。
本当にポーランドについて僕は何も知らないに等しい。
そう言えば林舞輝コーチがこんなことを言っていた。
「みんな(スコルジャをはじめとしたポーランド人コーチたち)、日本に来るのが初めてだし、日本のことを何も知らないから、サッカー以外のことを説明するのに時間がかかるんです。サッカーのことでも、たとえば【大学生の特別指定選手】を説明するのも大変でした」
なるほど。そういう苦労もあるんだ。
「開幕戦の東京はともかく、横浜がどこにあってどれくらい時間がかかるのか、知らないんだから」
え、横浜ぐらいは知ってるんじゃないの!
「だって僕らもポーランドと言えば、ワルシャワぐらいしか知らないでしょ」
そうか、そうだな。
あと知っているのは、国旗の色使いが日本と同じことぐらいだ。
そんな者同士がうまくいくのか、と言うと、それは関係ないだろう。
問題はお互いをどこまで理解しようとし、自分を理解してもらおうと努力するかだ。
かつて、その相互理解にはあまり重きを置かなかった監督もいたなあ。特に名前は秘すけど。
少なくとも土田、西野両氏とスコルジャの間には、サッカーという共通語によって、さらに戦術、サッカーのスタイル、哲学という部分でかなりの相互理解があるはずだ。100パーセント同じ、ということはないだろうが、多少の違いも含めて一緒にやっていけるという確信を共に抱いてのスタート。これが最も大事なことだ。ワルシャワ以外の有名な都市や、横浜がどこにあるかなど、そのうち知ればいい。
で、とりあえず僕はポーランド語で「こんにちは」を「ヴィータム」と言うことだけは調べて、監督に紹介してもらったときに使ってみた。スコルジャは少しびっくりしたような顔で、「Witam」と大声で答えてくれた。
つかみはOK?
でもポーランド語って、スペイン語より難しい。取材のたびに、新しい会話を一つずつ増やしていくのが目標だけど、どうなることやら。
(文:清尾 淳)