1. TOP
  2. Weps うち明け話

Weps うち明け話 #1164

「も」という喜び(2023年4月4日)

 

 金曜日、浦和レッズが柏に3-0の快勝。そして日曜日、三菱重工浦和レッズレディースがアルビレックス新潟レディースに3-0の快勝。レッズサポーターのみなさん、いろんなストレスの解消になったでしょう。いかん、調子に乗って世間に言うオヤジギャグにしてしまった。僕の甲斐性のなさです。

 

 男女のレッズが同じ週にそろって勝利、しかも2試合とも3得点完封。東京ヴェルディと東京ベルディベレーザも1日(土)と2日(日)に、共に大宮アルディージャと大宮アルディージャVENTUSに勝つという快挙を、組み合わせの妙も手伝って達成したが、女子はWEリーグだが男子はJ2リーグ。男女ともトップリーグで週末にダブルの喜びを味わえる可能性があるのは、レッズのほか広島と新潟だけだ。今季は。

 

 柏戦に関してはもう多くの感想が世の中にあふれていると思うので、レッズレディースの話を。

 レッズレディースのメンバーを見て、センターバックの長船加奈の名が先発にないのに少し驚いた。大けがから復活して勝利に貢献したばかりで、実践復帰したあと、また少し様子を見ることにしたのか。しかしリザーブには入っていたので、大きな問題ではないのだろう。

 もっと驚いたのはそのセンターバックに長嶋玲奈が入っていたこと。長船が欠場中はスーパーマルチプレーヤーの安藤梢が入って素晴らしいプレーを見せていたのだが、その安藤は左サイドハーフという攻撃的な位置にいた。攻撃的MFの塩越柚歩とFWの島田芽依がリザーブにいるので、塩越か島田が左サイドハーフで安藤がセンターバックというのが、少し前まではこれで勝っていた妥当なオーダーだと思ったが、長嶋をセンターバックに起用したというのは楠瀬直木監督に頭に閃いたものがあったのか。

 

 先制点は、その長嶋がアシストした。左サイドやや深い位置からロングクロスをゴール前に送り、清家貴子がヘディングシュートを決めた。

 追加点は安藤。相手DFのトラップを奪ってエリアの外から強烈なシュートを決めたもので、セットプレーのこぼれではないので、安藤がセンターバックに入っていたらこのシーンはなかったはずだ。長嶋の先発、安藤の左サイドハーフという布陣がこの2点を生んだと言ってもいいだろう。

 そして58分にセットプレーから菅澤優衣香がヘディングシュートを決め、3-0と新潟Lを突き放した。

 

 そこから、この試合2つ目の見どころが始まった。

 3点差がついて少し余裕が出たということもあるのだろう。楠瀬監督はその後、塩越柚歩、島田芽依、西村紀音、西尾葉音、植村祥子を投入した。塩越は先発組の常連でもあるが、島田はまだ先発に定着したとは言えず、植村も攻撃陣のバックアップメンバーで、西村、西尾は2年目の若手だ。

 

 2019年、なでしこリーグの優勝を争いながら2位に終わったシーズン。先発メンバーのプレーが目に見えてレベルアップしていたのに対し、後半途中でメンバーが交代すると、なかなかそれまでと同じような試合運びにならないことが多かった。そしてそこから勝ち点を落とすなどの試合があった。

 2020年になでしこリーグで通算3度目の優勝を果たしたときも、その傾向を完全に脱したとは言えなかった。

 それがWEリーグ2シーズン目となる今季、だいぶ全体の底上げが図れてきたと思う。

 

 センターバックで先発し、先制点をアシストした長嶋は、7年目でリーグ出場数も少なくないが、多くが途中出場で、センターバックのほか、サイドバック、サイドハーフなど複数のポジションを務めてきた。レッズレディースジュニアユース時代はFWで、ユースでボランチ、サイドバックなどさまざまなポジションをこなしてきており、ユーティリティーは高い半面、どこが最適なポジションか難しい部分もあった。

 本人も「ケガ人が出たときにそのポジションで出られるという良い部分もあるんですけど、練習と試合で違うポジションをやったり、という難しい部分もあります」と語る。だが、複数のポジションを実践してきた経験は生きるはずで「それぞれのポジションで、相手の嫌な動きだったり、そういうところは感じるので、それはこれからの成長につながるかなと思います」と新潟L戦後に述べていた。

 

 キャプテンの柴田華絵は以前、「選手交代で経験の少ない選手や連係に慣れていない選手が入ってきても、チーム全体の力が落ちないように、全体でカバーするのが重要」と語っていた。しかし、それが1人2人なら何とかなっても、3人4人となると厳しいというのが1年前の状況だった。

 この新潟L戦の後は「交代で入った選手が点を取れそうな場面もあったので、そこは層が少し厚くなったかなと思います」と語った。層が厚くなってきた背景は、レギュラー陣の数人がケガで試合を離れていた時期にチーム全体でやりくりをして戦ってきた結果だと言う。

 

 また今季開幕当時、つまり昨年の秋には、練習で若手に対して厳しい言葉をかける"鬼軍曹"のような役割を果たしていた猶本光は新潟L戦後、「そういえば最近は怒ることは全然ないですね」と笑った。若手にそれほど厳しく伝えなくても、それぞれやれるようになってきた、ということだろう。

 

この日、左サイドハーフに入った島田は、相手ボールになると素早く守備に回り反撃を防いでいたし、西尾はゴールこそなかったが、空回りすることなく、チャンスに顔を出していた。後から入った選手の貢献度は試合を見た人がよく知っているはずだ。

 

 WEリーグ第12節を終えてレッズレディースは首位。勝ち点3差で2位のアイナック神戸レオネッサとは5月14日にアウェイでの対戦を控えているし、勝ち点5差で3位の東京ベルディベレーザとは5月7日にホームで対戦する。優勝をめぐる競り合いが続く中で、選手の層が厚くなっていることは歓迎すべきことだ。WEリーグ初代女王こそ逃したが、今年はWEリーグカップを初制覇し、国内2冠を狙える立場だ。

 

 ホームゲームは残り4試合、ぜひあなたもレッズレディースの応援に出向き、「浦和はレディース”も”勝ったぜ」「レッズは女”も”強いぞ」と、マリノスやフロンターレ、アントラーズのサポーターには決して味わえない喜びをその手で引き寄せて欲しい。

そしてレッズレディースの優勝を、浦和レッズのリーグ制覇につなげたい。

試合日程はここを見てほしい。https://www.urawa-reds.co.jp/redsladies/gameresult/

 

 ところで3月26日、ルヴァンカップ清水戦のMDP645号に、レッズの堀内陽太とレッズレディース角田楓佳による「ルーキー対談」が掲載されたのをご存知だろうか。

 2人とも、先日高校を卒業したばかりの同い年で、共にアカデミーから今季昇格したばかり。プロ生活と同時に通信制の早稲田大学人間科学部eスポーツ学科で学び始めるというのも同じだ。さらにポジションがボランチで、なんと背番号も同じ29なのだ。

 

 そんな共通項の多い2人の対談を企画し実現の運びとなったのだが、同じエンブレムをつけて戦う同い年の若い選手が、男女にチームは分かれていてもお互いを意識し、切磋琢磨しながら這い上がっていくところを見守っていきたい。

 そして、この対談の最後に、角田が「ぜひレッズレディースの試合も見に来てください」とサポーターに呼びかける場面があり、堀内が「次の試合(4月2日、新潟L戦)は行けるタイミングなので行きます」と言っていた。

 2日、駒場に来ているはずの堀内の姿は見当たらず、関係者の誰に聞いても知らないというので調べると、チケットで入っているはずだという。

 スタンドを探し回るわけにもいかないので、試合が終わってすぐ出口に駆けつけ、そこで出てくる堀内をなんとか捕まえて、本人が試合に来た証拠写真を撮った。

堀内陽太選手

 

 最後に、堀内の感想だ。

「レッズサポーターでもある友達と2人で、東の自由席、ゴール裏で応援してた人たちから少し離れたところで見ていました。

一番すごいなと思ったのは、コンビネーションのところで、ワンタッチでポンポン、ポンポンつないで逆サイドに展開していったりとか、僕はユースの時にレッズランドでレディースのレディースユースの練習も見て、そこの部分はうまいなとはずっと思ってたんですが、やっぱりそこがすごいなと思いました。それと激しさもだいぶあったと思います。

 一緒に行った友達は同じ高校のサッカー部だったんですが、ゴール裏でも跳んで応援するくらいめちゃめちゃレッズが好きな人です。彼も「すごくうまいね」と言ってました。3点のうち2点目、安藤選手の、ボールを奪ってワンフェイク入れてのミドルシュートが一番良かったです。僕もボランチで、あの位置からのシュートを狙っていきたいんですが、あの落ち着きと精度はすごいなと思いました。え、安藤さんてもう40歳なんですか!本当にすごいですね。

 またレディースの試合には行こうと思ってます。優勝も見届けたいですし、そのころには僕もトップで出場していたいです」

 

(文:清尾 淳)