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Weps うち明け話 #1184

今季最後の重要な課題(2023年12月21日)

 

 1220日の未明(日本時間)、FIFAクラブワールドカップの準決勝で、浦和レッズはマンチェスター・シティに0-3で負けた。

 スコアもそうだが、ほとんどチャンスを作れなかったのだから、完敗といってもいいだろう。イギリスの新聞では「レッズのレベルはイングランドの2部リーグ下位に近い」などと評価されていると、中部地方のスポーツ紙が教えてくれている(てことは、Jリーグでレッズより下の順位にいる名古屋はイングランド2部リーグで残留を争うレベル、ということになるのか?)。

 別にレッズはイングランドにクラブごと移籍しようとしているわけではないから、もし「プレミアリーグの上位に匹敵するレベル」と言われても、うれしくなくはないが、あまり意味を持つとは思わない。我々はJリーグでいかに優勝争いをし、そして一番上に立つかを狙っているのだから。逆に、もしマンチェスター・シティがJリーグで1シーズンを戦ったら必ず優勝するとは言えないのではないか。

 

 ジャイアントキリングの例を挙げるまでもなく、サッカーはチームの力が必ず勝敗に反映されるわけではない。だから長丁場のリーグ戦で勝ったチームがチャンピオンと言われるのだし、Jリーグ7位の福岡や8位の川崎がカップ戦では優勝し、リーグで最終的に2試合分以上の差をつけて優勝した神戸がルヴァンカップではグループステージ最下位で、天皇杯ではベスト8でJ2の熊本に敗れたりするのだ。

 あるいは日本国内でタイトルを獲れないレッズでもACLで優勝することができる。あの決勝の2試合をもって、レッズはアルヒラルより強い、などと僕は思わない。言えるのは2022ACLの決勝でアルヒラルに対して優勝に値する結果を出した、ということだけだ。ちなみにアルヒラルとの通算対戦成績は2勝2分け2敗だ。

 

 残念ながら、今のレッズにはJリーグで優勝する力はないことがわかったし、プレミアリーグのトップチームであるマンチェスター・シティに一発勝負で勝てなかった。

決してマンCに勝つためではなく、Jリーグで常に優勝を争い、2~3年に1回は頂点に立てるクラブになる。かつてフットボール本部がうち出した3年計画で達成しようという目標だが、そこに到達するために、2017年以降では総体的に最も良い成績を収めた今季の上に、何が必要かをクラブが考え、選手一人ひとりが自分をどう変えていくか考える、良いシーズンになっていると思う。

 

 良いシーズンになっている。そう、まだシーズンは終わっていない。

 僕が感じていた2017FCWC準々決勝と2007年同準決勝への「代替リベンジ」の機会は終わったが、チャレンジは1つ残っている。

 2023FCWC3位決定戦。2007年に就いた3位の座を海外開催の大会でもつかめるのか。ある意味では、それが今回のFCWCで最も現実的でベースとなる目標かもしれない。

 そもそも海外のFCWCに出場した経験を持つのはレッズと鹿島だけだ。ヨーロッパ王者には勝てなくても、他の大陸王者には勝つ。自分たちにアドバンテージがある日本開催でなくとも勝つ。その課題は達成したい。

 

 レッズがアジア以外のクラブと公式戦で戦うのは、次が7チーム目。ヨーロッパがACミラン(イタリア)とマンチェスター・シティ(イングランド)。北中米カリブ海がクラブ・レオン(メキシコ)。南米はFCWCでは未対戦だが、2017年のスルガ銀行チャンピオンシップでシャペコエンセ(ブラジル)と対戦している。そしてアフリカ勢はエトワール・サヘリ(チュニジア)、ウィダード・カサブランカ(モロッコ)と今回のアルアハリ(エジプト)。ヨーロッパ勢以外にはすべて勝つというのは、それも世界の中での位置を示しているような感じで、非常に大事なことだと思う。

 

EXTRA

 先日、岐阜で行われた柏木陽介の引退記者会見に行ってきた。その際「質問は1人1問」と制限されたので、悩んだ末に引っ込めた質問が「レッズは今季FCWCに出場する。柏木選手は、2017年のFCWCに出場して5位に終わるという、悔しい経験をした。あのときの思いと、今回FCWCに臨むレッズに対して何か聞かせて欲しい」というものだった。

 岐阜の地元メディアがほとんどの会見場では、あまりにふさわしくないと思い、別の質問にしたのだが、もしFCWCMDP特別号などを作るとしたら、別の機会を作ってもらって質問しただろう。

 今回のFCWC、簡単に試合を視聴できる状況ではないが、もし柏木が見ていたら聞いてみたい。もちろん、「"あの件"がなかったら、あなたもサウジのピッチに立っていたかもしれないが」という追っかけ質問も準備して。

 それはともかく、「せっかく岐阜まで行ったのに、陽介の引退について、いつ書くんだよ、お前」と、もう一人の自分にいつもつつかれている。

 

(文:清尾 淳)