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Weps うち明け話 #1197

四冠への覚悟(2024年6月7日)

 

 きのう66日、さいたま市内で「2024三菱重工浦和レッズレディース感謝の会」が開催された。

 

 WEリーグのシーズンが終わって、パートナー企業やホームタウン関係者にレッズレディースが日ごろの支援に対する感謝を表す催しなのだが、昨年に続いて「優勝祝賀会」の様相を呈していた。もちろんレッズ側のスタッフやレディースの選手たちは、お祝いの言葉を受けながらも「もてなす側」に徹していた。

 

 そこで挨拶に立った方々から異口同音に発せられたのが「来季は四冠」という言葉だ。

 四冠は、国内タイトルのWEリーグ、WEリーグカップ、皇后杯に、来季から新設されるAFC女子チャンピオンズリーグを加えたもの。「女子版ACL」などと呼ばれていたが、略称にするとしたら「AWCL」になるのだろうか。

 レッズレディースは国内三タイトルをすべて一度は手にしているし、2022-23シーズンにはWEリーグとWEリーグカップの二冠を達成しているのだから、次なる目標はシーズン三タイトル制覇となるのは当然だ。

 

 そして新設されるAWCL(とりあえず、こう表記しておく)には、今季のWEリーグ優勝で出場が決まっているのだし、今季はそのプレ大会であるAFC女子クラブ選手権(決勝になったら急に「INVITATIONAL TOURNAMENT」の文字が足されたように感じるのは僕だけか)を制しているのだから、それも狙うのが必然だ。

 それに「4冠が目標」とか「WEリーグ3連覇を目指す」などと言えるのは来季レッズレディースだけなのだから、その言葉には誇らしさを感じる。

 

 だが、言うまでもなく簡単ではない。

 来季の日程は発表されていないが、今季であれば国内シーズンは、WEリーグカップで幕を開け、それが終わってWEリーグ開幕、ウインターブレークに入って、皇后杯が決勝まで行われ、3月にリーグが再開という流れだった。リーグがウインターブレークに入る前に皇后杯の初戦が始まったが、たとえばJリーグが土日に行われ、ルヴァンカップのグループステージが水曜日に入って来るのとは違う。

 国内大会だけを見れば、年間で30試合前後がほぼ順番に行われていくようなものだから、それほど厳しい日程ではない。ただ、なでしジャパンを始めとする各カテゴリーの代表選手を抱えるクラブは、主力選手の離脱や疲労、代表活動でのケガなど不安要素があるから、三冠を狙うようなクラブは他よりも条件は良くない。

 

 それに加えてAWCLは、各国内のサッカーカレンダーに関係なく試合日程が入ってくる。いま伝わっているところでは今年の10月にグループステージ3試合が1週間ほど、来年3月に準々決勝が、5月に準決勝・決勝が行われるらしく、ACLのようにグループステージ6試合がホーム&アウェイでリーグ戦と並行して行われるのとは違うようだが、それでもリーグ戦何試合かは日程変更になるだろう。対戦相手にも迷惑をかけるが、レッズレディース1クラブのために、WEリーグがどこまで配慮してくれるか、少し心配になる。

 

 間違いなく、今季より厳しい日程になり、未知の相手と違う環境で戦う試合が入ってくるのだ。

 他方、清家貴子という大砲がいなくなり、今季先発では出ていなくても出場したときには実力を証明した長船加奈と佐々木繭が移籍する。

 戦力をこれからどう補完し、さらに充実させていくのか、このオフの「闘い」が大きなカギとなる。

 

 また「闘い」は戦力の部分だけではない。

 浦和レッズが2007年のACLで初出場初優勝した際には、前年一年間をかけて準備をした。ガンバ大阪にスタッフを派遣してACLの試合に帯同させてもらったり、大きなスタジアムのあるクラブがACLでは小さなスタジアムでホームを開催しているのを見て、埼スタでACLを開催するためにはどうしたらいいかシミュレーションし、1930分キックオフを決断したり、シェフの西芳照さんにお願いして遠征中の食事を作ってもらったり。まさに「入念」という言葉では足りないくらい十二分な準備をした。2007年のアジア制覇に、それらは欠かせない要素だった。

 

 チーム強化や試合以外の部分での「闘い」がどれほど結果に影響するか、浦和レッズとしては蓄積があるはずだ。だが、大事なことは現在、舵を取り櫂(かい)や櫓()をこぐスタッフに、それがどれだけ伝わっているかだろう。

 そして最後に、2007年のACL優勝の礎となったのは、クラブ、チーム、サポーターが「アジアを獲る」という目標に対して固く結束したことだったと思っている。

「一つになっていた」と言葉にするのは簡単だが、クラブの中が意思統一され、チームが団結し、幅広いサポーターが結束していた、その上で三者が一つになっていたと思う。

 

 来年の「レッズレディース感謝の会」で「四冠」という言葉がどういうニュアンスで語られるか。もちろん選手も参加者も笑顔で終始してくれることを願っているが、それには相当の「闘い」を貫徹する覚悟が必要になる。

 

(文:清尾 淳)