1. TOP
  2. Weps うち明け話

Weps うち明け話 #1199

去年を越えた、その次(2024年7月26日)

 

 浦和レッズユースが、第48回日本クラブユース選手権(U-18)で、ベスト8に進んだ。

 722()から行われていたグループステージでレッズユースは21分け。Gグループ1位となり決勝トーナメント進出を果たした。

 

 グループステージの第2戦、第3戦こそ2試合とも3-0の完勝だったが、AC長野パルセイロU‐18との第1戦は、いきなり暗雲がたちこめたかに思えた。立ち上がり、レッズユースが主導権を握り何度か長野ゴールを脅かしたが得点には至らないまま14分に先制されてしまう。長野のミドルシュートが絶妙のコースとスピードで浦和ゴールに収まったのだ。あと少し高ければクロスバーに当たっていただろうし、低ければ懸命に伸ばしたGK小森春輝の手にキャッチされていただろう。また威力が少し弱ければ小森の手に弾かれて手前に落ちていただろう。

 

 レッズユースにとっては不運なゴールとも言えるが、それで試合の優劣が変わってしまうのがユース年代。長野ペースで試合が展開するようになり、序盤はレッズが惜しい場面を作っていたのが、シュートまで持っていけないようになり、ゴールが遠くなってしまった。逆に長野に追加点のチャンスを与える場面もあった。

 しかし後半、長身のFW小鷹凜太朗を入れて、パワープレー気味に速い攻めを見せたレッズユースは再びペースをつかむ。何度もゴール前に持ち込まれる長野の選手たちの声に焦りを感じるようになってきた68分。35分ハーフだから後半33分、アディショナルタイムを入れても残り5分前後という時間だった。左サイドのゴールに近い位置で得たFKで、会田光希のキックに横山海斗が頭で合わせるとボールは長野ゴールに吸い込まれた。

 

 その後、スコアは動かず1-1のドロー。長野の選手たちの落胆ぶりと、悔しさをにじませながらもやり切った感のある浦和の選手たち。試合後の表情は大きく違っていた。

 それも道理で、グループステージは4チームリーグの1位だけが決勝トーナメントに進めるレギュレーション。2位上がりなら2勝1敗でも突破できる可能性が高いが、1位上がりでは1敗が命取りになりかねない。実際、8グループの中で、1敗して1位になったのはグループBの川崎フロンターレU-18だけだ。

 

 平川忠亮レッズユース監督は長野戦の引き分けについて

「先に失点すると、(短い)35分ハーフの中でマネジメントが難しくなるので選手たちにもダメージがあったと思うが、それをはね返すようなプレーを後半してくれた。チームで何とか追い付いて可能性を残すという作業を一丸となってやってくれた。あそこから積み上げて1試合1試合成長している」

 と語った。また後半からの戦術については

「選手にいろんなキャラクターがあって、それぞれの武器を大切にしようというのが浦和のアカデミーのコンセプトでもある。誰の武器は何、というのを全員が理解しているから、たとえば小鷹が出たときにどういうふうにゲームを組み立てていくのか。ただロングボールを上げるだけではなくて、セカンドボールを拾ってクロスを上げるとか、みんながそれぞれの武器を理解しながら、プラスαをもたらしてくれているな、というのはこの3試合を通じて感じている」

 なるほど。同点につながったFKは途中出場の阿部湧心がドリブルで左サイドをえぐり、クロスを上げる寸前に倒されて得たものだった。

 

 その後は2試合を制したのだが、とりわけ得点源の照内利和が、23日のV・ファーレン長崎U-18戦で2点、25日の北海道コンサドーレ札幌U-18戦で1点を挙げているのは心強い。平川監督は

「もちろん彼が取るのがうちのリズムになっているが、仕上げは彼でもそこまでにいろんな選手が関わって、自分の武器を出しながらチャンスを作っている」

 と説明する。

 照内の3得点のうち僕が印象的だったのは札幌戦。相手GKへのバックパスに猛然とチャージをかけ、GKのキックを足でブロック。それがゴールに吸い込まれたものだ。100回チャレンジして1回成功するかわからないが、チャージに行かなければ入らなかったゴール。これで前半2-0となり、試合をだいぶ優勢に持って行った。

 

 平川監督は言う。

「全員が同じレベルでプレーできるのがこのチームの強さだと思っている。その強みを生かして、選手が疲弊しないうちに交代していけば他のチームよりコンディション良くプレーできると思う。逆に言うと、全員にとって試合が他人事ではなくなる。それがまたチームを一つにすることにもつながっているし、ハードワークにつながっている」

 グループステージ3試合すべてに先発した選手は6人だけ。第2戦を終えた時点で、途中を含めて20人が出場していた。全員にとって、いつ自分が先発に指名されるか、いつ出番が来るかわからない。そういう状況を作るのは、1試合だけでなく、大会全体を考えれば大事なマネジメントだろう。

 

 グループステージが1位抜けという厳しい関門だった代わりに、というと変だが、決勝トーナメントは準々決勝から。あと2つ勝てば決勝だ。昨年はグループステージ敗退だったから「去年の自分たちを越えよう」(平川監督)という第一の目標は達成したが、これからは一つひとつ切り拓いていく戦い。まずは準決勝進出を目指して欲しい。

 準々決勝は、きょう26日。17時からJ-GREEN堺のメーンピッチで行われる。

長野戦の試合終盤、横山海斗が同点ゴールを挙げた(22日)

長崎戦で、先制ゴールを挙げた山根且稔(23日)

長崎戦で、2点目をアシストした井上大輝(23日)

札幌戦で相手GKのキックをブロックしてゴールした照内利和(25日)

 

2024726日)

 

(文:清尾 淳)