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Weps うち明け話 #1201
不思議のないドロー(2024年8月19日)
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし、と言われるが、引き分けはどうなんだろう。
場合によっては、両者思惑がらみの引き分け狙いで互いに失点しないことだけを目指して90分が過ぎ、~あ、もちろんサッカーの話です~スコアレスドローで両方とも勝ったように喜ぶ、なんてことが予選リーグの最終戦などでたまにあるようだ。これなどは不思議ではない引き分けだと言えるかもしれない。
一方、互いに死力を尽くして戦い、チャンスもピンチもありながら、取った点と奪われた点の数が同じ、という試合はエキサイティングかつ引き分けが妥当だったと言えるかもしれない。それもまた、不思議ではない引き分け、に入るだろう。
それが3シーズン=6試合連続となると、珍しい部類になるのだろうが、ただ「浦和レッズ対鹿島アントラーズ」というカードに限っては「ああ、それもあるかな」と変に納得してしまう自分がいる。
気をつけないと試合にのめり込んでしまい、メモを忘れてしまうカード。メモを取ろうとしても、「あれ、いま誰からパスが出てこうなったんだっけ?」と思い出せないこともよくある。
仕事を忘れて"素のレッズファン"になってしまうことは、他の試合でもたびたびあるが、その回数が最も多くなるカードなのだ。
8月17日(土)のJリーグ第27節。開始からしばらくは鹿島にボールを握られ、我慢の時間だった。けっこう長く感じたが、「よし、ここからレッズの番だぞ」と口の中でつぶやいたのが7分だったから、そうでもなかった。
相手の強いコンタクトに耐えてボールを運ぶ安居や大久保のプレーに気持ちが揺さぶられた。シュートがバーに当たったり、サイドネットを揺らしたりするたびにのけぞった。牲川がシュートを止めるたびにこぶしを握った。リンセン、少し出ていたかな、と思っていたらやはりオフサイドだった。鹿島・仲間のシュートがオフサイドだったのは、全然気づかなかった。VARに時間がかかっているから微妙なんだろうな、と思っていたらやはりわずかなところでオフサイドだったらしい。
勝つチャンスは十分あったし、負けてもおかしくなかった試合。得点シーンはなかったが、チケット代以上の価値がある試合だったと思う。払ってない僕が言うのもおかしいが。
ただし、試合が終わってみれば5試合連続勝ちなし(3分け2敗)という現実がある。湘南戦から鳥栖戦までの4試合は、いずれも相手が降格圏にいた。もちろん、そんな相手だから勝てる、などという甘い考えはなかったが、もっと勝ち点を取っておくべき相手であることは間違いなかった。
降格圏の相手に勝てないなら、逆に上位の相手には勝てるんじゃないか。そんな根拠のない期待もしたが、叶わなかった。
だが、上位の相手に勝ってもおかしくない戦いをしたことは間違いない。単純に言えば、この前の4試合でこういう戦いができていれば結果は違っていたのではないか。
もちろん、鹿島戦だからこういう試合になったのはわかっている。違う相手にも同じ戦いをしろ、と言うのは難しいのかもしれない。
しかし自分たちの最高値に近いものは出せたはずだ。1人のミスを失点にしなかった。相手に攻め込まれても最後のところで決定的な仕事をさせなかった。1対1はもちろん、1対2でも負けない局面があった。コンビネーションで絶好の得点機も作った。とにかくすべてを出し尽くした。
その感覚を川崎戦でも忘れずに戦い、勝って欲しい。
ターニングポイントは鹿島戦だった。シーズン終了後に、そう言えるような残り12試合でありますように。
(文:清尾 淳)