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Weps うち明け話 #1202
「あかり」は見えるか(2024年8月27日)
8月25日(日)15時から、三菱重工浦和レッズレディースが、埼玉スタジアム第3グラウンドでアルビレックス新潟レディースと練習試合を行った。
45分✕2本で結果は1-1、1-4。合計2-5だった。公式戦なら大敗の試合だ。いや練習試合でも大敗か。
レッズレディースはケガや年代別代表の派遣が重なり、試合に出た選手は全部で15人。うち3人がGKなのでフィールドプレーヤーは12人だった。暑い中だったので、その交代人数では厳しかっただろう。90分戦った選手は、結構ハードだったのではないか。
その中でも目に付いたのが栗島朱里だ。ボランチが本職だが、一時期大ケガをして、そこから復帰するときにはチーム事情で右サイドバックなど、他のポジションを務めたこともある。昨シーズンはキャプテンの柴田華絵と共にボランチでWEリーグ2連覇に貢献した。
栗島の特長は、強度の高さやロングキックにある。相手の前線の選手にボールが入ったときにカットに行くプレーはえげつないほど当たりが強い。そして自陣からのロングパスで一気に状況を打開し、ときにはミドルシュートで直接ゴールをねらうこともある。
つまりはパワフルなのだ。それでいてクレバー。先を読む能力に長けているし、仲間への思いやりもある、というのが僕の栗島に対する印象だ。
この日、僕の"栗島像"に新たな側面が加わった。
セカンドストライカー候補。
今はまだ「候補」が付いているが、味方のビルドアップの際、前線の選手を追い越し、相手ゴール前もしくは近くまで抜け出すシーンがたびたびあった。正確な数はカウントしていないが、2本目の終盤にもそんなプレーが見られた。
1回や2回ではなかったし、昨シーズンはあまり見られなかったプレーだ。だから、これは意識してやっているのだろう。となるとチームの戦術なのか。
試合後、楠瀬直木監督にそのことを質問した。
「そういうこともやって行こうかと考えている」
なるほど、今季はそういう意外な形でも得点を狙うということか。
栗島は本当に試合の最後まで前線に抜け出すプレーを続けていた。2本目の方が多かったかもしれない。
「悔しかったので」
1本目は1-1で終わったが、GK以外のメンバーが変わらない中で2本目は1-2、1-3、1-4とビハインドが広がっていった。レッズレディースがこれではいけないという気持ちがだんだん強くなったに違いない。多くの上がりを最後まで続けた理由について、(チームの戦術と、自分の考えの)「両方です」と答え、負けているのが悔しかったからだ、と続けた。
楠瀬監督は「二列目からの飛び出し」と言ったが、栗島の場合は「三列目から」と言った方が正しいだろう。この日の運動量は大変なものだったはずだ。最後に飛び出しを見せた後は、ピッチに仰向けに倒れ、塩越柚歩に起こされていた。
栗島から出た言葉の中に、こんなフレーズがあった。
「加入もないし…」
「誰が点を取るんだ、という…」
清家貴子がヨーロッパへ旅立ち、佐々木繭と長船加奈もマイナビ仙台に移籍した。
マークがますます厳しくなる中でのWEリーグ3連覇。初の女子ACLを制覇。その二冠をメーンの目標として、WEリーグカップの奪還(初代王者だから奪還)や、皇后杯の雪辱も果たしたい。
昨季より戦力がダウンしている中で、それを実現できるのか。
もちろん、若手を中心とした各選手の成長は望まれるし、菅澤をはじめ安藤や猶本の他、ケガで離脱している選手たちの完全復帰も祈っている。
だが、クラブは「希望」や「祈願」を戦力の計算に入れてはいけない。
2024-25シーズン、この陣容で臨むなら、たとえば昨季の清家貴子が挙げたゴール数を違う形で補うことが必要だろう。
その一つが二列目、三列目からの飛び出しならば、ぜひそれを成功させて欲しい。レッズレディースはボランチから前の選手がみんな流れの中で点を取る。そんなイメージが定着すれば、逆に島田芽依や塩越、西尾葉音ら前線の選手にチャンスが広がるだろう。
栗島朱里のゴールに、レッズレディースの灯(あか)りが見える。決めてくれ。
EXTRA
ところで、この日の2得点は、いずれも高塚映奈によるもの。形は二列目から飛び出し、ゴール前へのパスを受けて決めたもので、これも間違いなく、楠瀬監督の目指す得点パターンだろう。
だったら、なぜ高塚のことをもっと大きく書かないのか。
それはそうだ。だが、高塚がその形でゴールを決めても僕は驚かないのだ。なぜなら2023年春(冬だったか?)の新加入会見で彼女が「ファン・サポーターに見て欲しいプレー」を聞かれて挙げた一つが「裏への抜け出しのタイミング」だったからだ。
出番を得て、彼女本来のプレーで点を決めた。高塚にももちろん期待している。決して意外ではない、得意なプレーで、どんどんゴールを決めて欲しい。この日のゴールを見れば、それは計算に入れたくなる。
(文:清尾 淳)