1. TOP
  2. Weps うち明け話

Weps うち明け話 #1207

危機感の継続(2024年11月11日)

 

 広島戦。勝てるという確信があったわけではないが、勝てると思っていた。

 

 なんだそりゃ。と、自分でも思うが、この矛盾したような心境に、共感してくれる人がいたらうれしい。「そう思わなきゃ、やってられないだろ!」とでも説明(説明なのか、それ)すればいいのか。

 

 広島は強い。今季の開幕戦でそう感じたし、シーズン中もそう思った。

 外国人監督が4シーズン目も指揮を執るのは、成績が良いことはもちろん、選手やスタッフからも信頼されているからだろう。

 

 だから特にこの時期、優勝を目指すモチベーションは高いはずで、レッズがそれを上回るには、残留を果たすという危機感をチームが共有することで湧き上がるアグレッシブさに、ホームのファン・サポーターが後押しする力が加わって一つになるしかないと思った。

 1110日のMDPに巻末コラムで書かせてもらったのは、そういうことだし、決して強がりとか作文ではなく、オールレッズが一つになったときの迫力は30年余の経験でよく知っている。

 さらに、その前向きのメンタルをべースに、この日のレッズは広島に勝つためのサッカーをしていた。それぞれが自分の役割をしっかり果たしていた。

 

 そして試合中、あることに気が付いた。

 広島はかつて短期間に3度のJリーグ優勝を遂げている。だから優勝に慣れていると思っていたが、最後の優勝は9年前の2015年だ。青山、柏、佐々木、塩谷ら優勝メンバーも残っているが、経験していない選手も多い。優勝に向かっているときのモチベーションはまさに燃え盛る火のようかもしれないが、佳境に入ったとき、あるいは少し後退したときのメンタルはどうなのか。

 

 自分たちも久しく味わっていないので忘れていた。

 優勝争いのモチベーションは、優勝争いのプレッシャーと裏表なのだ。

 

 広島の、開始直後の怒涛の攻撃には舌を巻いた。嫌なところを正確に突いてくる。何度ゴール前にボールを入れられたか。

しかし、後半ミスが出るようになったのは疲労もあるだろうが、そのプレッシャーも影響していたのではないだろうか。

 だって開始から5分も経たないうちにシュートが5本。そのうち3本(関根、石原、リンセン)は決定的だったではないか。

 さらに9分にも関根から松尾へ惜しいパスがあり、11分に松尾のシュートをリンセンが頭で方向を変えて2点目とした。前半45分でシュート3本だったチームが、後半11分間で6本のシュートというのは、いかにサッカーがメンタル的なスポーツかを示している。

スキッベ監督も、レッズにチャンスが連続して生まれたのは、前半終了近くの失点からメンタル的に回復していなかったからだ、というようなことを話していた。

 

 この日、レッズは2024シーズンのJ1残留を決めた。それはもちろん良いことに決まっている。

 だが優勝争いにモチベーションとプレッシャーが裏表なのと同様に、残留争いにもプレッシャーはあるが今回のレッズのようにそれがプラスのモチベーションになって、ここ3試合、無失点を続けることができた。

 では残留争いの危機感がなくなって、プレッシャーと共にモチベーションも消失してしまうのか。それではいけない。

 

 残留争いが思い出させてくれた、本来自分たちが発揮すべき強度の高さやアグレッシブさを、次からの3試合でどう維持するか、いやさらに高めていくか。それが今のレッズの課題だ。マチェイ監督はじめコーチングスタッフ、そして興梠慎三はじめ経験のある選手が練習からそこで力を出して欲しい。

 

 僕だったらこう言う。

 

 そんなんじゃ、来年優勝なんか、絶対出来ねえぞ!また、今年を繰り返すのか!

 

 ポジティブな危機感は常に持っているべきだ。

 

(文:清尾 淳)