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Weps うち明け話 #1246

2026バージョン(2026年3月9日)

 

 37日の明治安田J1百年構想リーグ水戸戦は、今年二度目の2-0勝利だった。茨城県勢との連戦は11敗だった。

 

 水戸戦では早々に「おーっ」と心の中で快哉を叫んだ。

 6分、水戸がロングボールを蹴り込んできたが、DF陣がうまく守り、宮本優太が前を向いて縦パスを入れた。パスを受ける柴戸海の後ろから水戸の選手が迫ってきていたが、柴戸はボールをフリック気味にスルーして体勢を入れ替えた。この柴戸のプレーがキーだった。

 その後、前から寄られて安居海渡にボールを渡したところから、安居がマテウス サヴィオとパス交換して左を走る荻原拓也へ。荻原のアーリークロスはゴール前に走り込む肥田野蓮治か渡邊凌磨が触れば、という良質なものだったが、わずかにDFにヘディングでクリアされた。この試合、最初のチャンスだった。

 

 それぞれが持ち味を発揮して作った場面だが、キーになったのは、速い攻めを身上とするチームコンセプトに則った柴戸のプレーだったと思う。

 後ろから相手が来ていてトラップする余裕がないときに、セーフティーにDF陣に戻すという選択肢もおかしくない。昨季はチームとしてそちらの方が多かったかもしれない。

 うまく前を向ければ大きなチャンスになるが、もし奪われたらピンチを招く。柴戸は、ビルドアップの場面ではあまり一か八かのようなプレーを選択するタイプではない。つまりアプローチに来る相手と入れ替わってチャンスを作る自信があったのだろう。

 

 これが2026バージョンの柴戸海だ、と思った。

 2018年に明治大学から加入した柴戸海という選手は、徐々に新しい武器を身に付けてきている。

 

 12年めは、危険な場面を察知してそこを埋める。あるいは相手ボールを奪いに行くことに定評がある選手だった。

 それが何年めかにバージョンアップした。ボールを奪ってからなるべく早く近くの味方に渡すことが多かった柴戸が、ボールをキープしてより良い状態にいる味方を探して渡すように変わったのだ。ボールを持つ柴戸に向かってくる相手をひょいとかわして、前線にパスを送り攻撃の起点になった。

 そこから柴戸のプレーエリアが前に広がっていった。攻撃に積極的に参加するようになったのだ。

 そして久しぶりにレッズでのプレーを見た昨季、そのプレーエリアが敵陣深くまで伸びたのを知った。相手の守備ラインを越えて、ゴール前まで入って行くようになったのだ。

 

 ただ、なかなかその柴戸に対して味方からボールが送られることがなかった。そのことを本人に聞くと「ボールが来なくても、自分が中に行くことによって、相手を引き付ければチャンスになります。これからだと思います」と語っていた。その傾向はキャンプの紅白戦や練習試合でも見られた。

 今年のMDPで全員から抱負を聞いたときにも「そういう動きを何回も続けることで、チームメートの信頼を勝ち取り、ボールホルダーが合わせやすくなってくることが大事だと思います」と語っている。

 上記に挙げた水戸戦のプレーはゴール前に入って行くものではないが、“攻撃的柴戸海”の一環を垣間見た気がした。ちなみに荻原のクロスでCKを得たのだが、そのクリアを拾った荻原がシュートした。ボールは相手GKに正面を突いたのだが、こぼれに備えて詰めていったのも柴戸だった。

 

 水戸戦41分の肥田野の先制ゴール。相手守備ラインの手前から肥田野にパスを送ったのは柴戸だった。肥田野はワンタッチで良いところにボールを運びシュート。柴戸のアシストだった。

 後半は、中盤でボールの奪い合いになる場面が多かった。片方がボールを取ったと思ったらすぐに相手が来て、またルーズボールになる。そこを両者がまた奪い合う。その多くの場面に柴戸は顔を出していた。これは完全に柴戸らしさ全開だった。

 

 この試合ではアディショナルタイムに出場した照内利和が、横浜FM戦での早川隼平に続き、J1初ゴールを挙げるなど、見どころは他にも多かった。

 試合のたびに、選手個々の成長や変化を確認できるのは喜ばしいことだ。それが勝ち点を積み上げながらできるのは理想的だ。次はゴール前に入って行った柴戸にラストパスが送られ、シュートを放つところが見たい。

 

(文:清尾 淳)