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Weps うち明け話 #1247

足を運ばせるもの(2026年5月15日)

 

 原稿を書いていて、ふと胸を打たれることがある。


 別に自分の文章に酔っているわけではない。取材した相手の話に感動してしまうのだ。もちろん話を聞いているときに最初の感動がある。ただ、そのときは短い時間でいろいろ聞き出さなければいけないから、話がどんどん進んでいき、「良い話だなあ」と浸っている余裕がないのだ。
 

だから原稿にしているときに、あらためて浸るのだ。

 

 

 最近では、三菱重工浦和レッズレディース、8番、MF榊原琴乃の話に感動した。


 原稿自体はMDP(浦和レッズ・オフィシャル・マッチデー・プログラム)717号(4月29日、川崎戦)に掲載されている。全文は転載しないが、僕が感動した部分は、榊原が試合の終盤になっても攻守に走り続けていることについて、本人が「交代で入って来た選手が『スタートから出ているこの選手がやってるんだから、自分はもっと』と頑張るようなプレーを最後までしたいと思っている」と述べているところだ。

 

 

 榊原は今季(昨年の夏~)、ノジマステラ神奈川相模原から移籍してきた選手で、レッズレディースでは4-1-4-1の右ワイドまたは左ワイドでプレーしている。ドリブルが得意なだけでなく、味方との連係でチャンスを作り、ゴールも狙う。記録上のアシストは6だが、アシストのひとつ前のプレーも多く、頼りになるチャンスメーカーだ。

 最大の武器がドリブルだから運動量が多くなるのは必然だが、それを試合の最後まで続けるモチベーションとして、上記のようなことを言われて感動しないはずがない。

 

 

 そんなことがあってから少し経った5月10日、埼スタでレッズレディースvs日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦があった。


 9分にレッズレディースが先制した。エスタ マイ キスのロングパスを榊原が頭で落とし、それを拾った島田芽依がゴール前に運んで決めた。


 その後、ベレーザの反撃もあり追加点が取れないまま終盤を迎えた。榊原は変わらず最前線から自陣まで攻守に走っていたが83分、相手選手に後ろから突っかけられ転倒した。接触により痛んだというより、倒れまいとして踏ん張ったときにふくらはぎをつったのかもしれない。そんな動きだった。85分に攻撃的な選手が2人、タンチュリエ ローリーと高塚映奈がピッチサイドに姿を現したので、さすがに榊原も今日は交代か、と思ったが、アウトになったのは丹野凜々香と加藤千佳だった。その後、チャンスにも守備にもスプリントする姿を何度も見せ、榊原は5分のアディショナルタイムが過ぎてから交代した。


 この日埼スタを訪れた8,472人の中にMDP717号の記事を読んだ人がいたなら、それを裏付ける姿を見たと思っただろう。

 

 

 試合の後、本人に話を聞いた。


 まずこの日も最後まで走り切れたことについては


「1点取られたら引き分けてしまうという状況がずっと続いていたので、自陣に戻るスプリントとか、自分が出ている限りは全力でやるというのは、最後まで今日も貫けました。途中から(ワントップに)入った(菅澤)優衣香さんが、ロングボールに競り勝ってくれていたので、その背後は自分らが狙わないと、というのはありました。相手が1点を追いかけている中で、相手陣内で嫌なプレーはできたのかなと思っています」

 

 

 レッズレディースに来て初めてのシーズンが終わろうとしているが振り返ってもらって


「応援してくださるファン、サポーターの方々の数や熱量が違うし、自分が良いプレーをしたら沸くっていう、そういうのを実感できた1年でした。自分が調子良いなと思っているときは、やっぱり観客の声も聞こえて一体感を持ってプレーできました。今後も見ている人を楽しませるようなプレーをしたいな、とより強く感じた1年でもありました」

 

 そして8千人以上の前でプレーした感想として


「これだけの方々に、いつも浦和駒場スタジアムに来てもらえるようになることが、自分たちの価値を上げることになります。8千人が普通になるようにしていきたいので、それには選手たちのプレー一つひとつが大事だと思います。自分も、自分のプレーでみなさんがスタジアムに足を運びたいと思ってくださるように、やっていきたいと思います」

 

 

 明日のWEリーグ最終節は、J1百年構想リーグのFC東京戦と重なっていて、行けない。


 榊原だけではなく、レディースの選手たちに話を聞くとき、ストンと胸に落ちるもの、胸に刺さるものがある。


 僕をレッズレディースの取材に足を運ばせる理由の一つは間違いなくそこにある。

 

(文:清尾 淳)