《さいしん》の挑戦
地域のお客さまとともに成長を目指す

地域活性化

《さいしん》ではさまざまな角度から地域活性化に取り組んできましたが、2020年2月より民間都市開発推進機構と共同出資し、埼玉県内の中心市街地活性化と歴史的建造物の保護を目的としたマネジメント型まちづくりファンド「さいしんまちづくりファンド」を組成しました。現在も対象エリアを拡大し、営業店と連携しながら地域活性化に取り組んでいます。今回は、その取り組み事例として、越谷市内の商店街で進んでいるまちづくりプロジェクトについて紹介します。この取り組みは、2019年に信用金庫業界の地域活性化のための助成金である、日本財団「わがまち基金」の取得支援より本格的に携わり、「こしがや副業・起業支援事業」として副業やスモールビジネスの支援を行っています。当時より中心メンバーである越谷支店と地域創生部所属の職員2人に語ってもらいました。
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。

越谷支店
伊藤 勇気YUKI ITO

2012年入庫。北浦和支店に配属され預金・融資・得意先業務を経験し、2018年主任へ昇進。同年、越谷支店に異動し、融資・得意先業務における自身のレベルアップを図るだけでなく、後輩と同行訪問をするなどサポートにも注力。2019年に、担当していたお客さまが立ち上げた、地域活性化活動への支援のため、まちづくりプロジェクトへ本格的に携わる。2021年より、得意先業務として幅広い経験を活かした既存顧客への提案や新規開拓はもちろん、まちづくりプロジェクトの推進も担っている。

地域創生部
齋藤 邦裕KUNIHIRO SAITO

1994年入庫。鴻巣支店に配属され預金・融資・得意先業務を経験し、1998年に主任へ昇進。2002年4月より約半年間、信金中央金庫総合研究所のトレーニーとして所属し、その後、融資部へ配属となり2003年支店長代理へ昇進。2007年に浦和支店に異動し、目利き力を活かした融資業務を担当。2008年に次長、2011年に副支店長へ昇進し、2012年に経営企画部の部次長として《さいしん》全体の経営面により深く携わる。2016年に現在の地域創生部へ副部長として異動、2020年に同部の部長へ昇進。部全体を統括することはもちろん、自らもまちづくりの現場に足を運ぶなど精力的に活動。

副業・起業支援により活気あるまちづくりを

齋藤
このプロジェクトは、地域の将来に危機感を持った商店会の会長が、2016年に商店街へコミュニティカフェをオープンしたことが始まりです。会長は、少子高齢化や商店街の空き店舗など地域が抱える問題を解決するために、2018年株式会社を設立。事業としてのまちづくりに本格的にスタートされました。越谷支店から地域創生部へ協力要請があったのは2019年でしたね。
伊藤
はい。支店長へ会長より、まちづくりの支援について相談をいただき、「わがまち基金」の申請をお手伝いしたことから、共同事業として「こしがや副業・起業支援事業」が始まりました。長年お取引いただいているお客さまではありましたが、新事業として相談の機会をいただけたことは大変貴重です。
私はプロジェクトを円滑に進めるために、会長を中心としたメンバーの方々と越谷支店および地域創生部との調整役として、コミュニケーションを図ってきましたが、3年を経過して軌道にのってきたという印象があります。地元で副業・創業を希望される方々に向けたセミナー「コアキナイ塾」も3期目を迎えて、手応えを感じられるようになりました。地域創生部が当初の計画通り事業が進んでいるかも含めチェックし、時には他地域の事例に基づくアドバイスができたことも効果があったのだと思います。
齋藤
プロジェクトの企画・運営において安定してきたのは、会長を中心に、事業に関わる方々が想いを共有してレベルアップできたからでしょう。特に、コアキナイ塾の活動がブラッシュアップされてきたことは喜ばしいです。副業・創業を目的とした「知識の習得」と「やりたいこと」の2本柱からなるフレームを磨き上げれば、他のエリアにも応用できると考えています。

2016年にオープンしたコミュニティカフェ CAFE803

コアキナイ塾でまちづくりの担い手を発掘

齋藤
まちづくりの核であるコアキナイ塾は、3期目から新しい取り組みを始めていますね。どんなバージョンアップが図られていたか、是非教えてください。
伊藤
はい。コアキナイ塾は開業にあたって必要になる経理や税金の知識からマーケティングなどのノウハウを学んでもらう場です。一般的な話をただ伝えるだけでなく、個別相談会を開催して、個々に合ったきめ細かなサポートを行ってきました。3期目からは、より実践的に学べるように「マルシェ」と「リノベーション」という、2つのゼミナールを設けました。副業・創業を前提としたスモールビジネスの担い手の育成と、商店街の空き店舗を活用した事業の実現が目的です。先日のゼミナールでは、第1期卒業生の方を講師として招き、ノウハウを伝えていただきました。また、別の卒業生の方は、実際に事業を立ち上げ、古い味噌蔵をリノベーションし、シェアスペースとして運用されている方もいらっしゃいます。
齋藤
まちづくりにおいては、「創業支援→担い手育成→空き店舗の減少→地域愛の向上によるコミュニティ形成・地産地消→人の流入・出生の増加→税収の増加」というサイクルをらせん状に循環させていくことが最終的な目標です。実現には時間がかかりますが、コアキナイ塾を通じて新たに創業するまちづくりの担い手を発掘して信頼関係を築くことは、将来的に私たち《さいしん》とのお取引にもつながります。
伊藤
このまちづくりプロジェクトをきっかけとして、越谷駅東口エリアが「さいしんまちづくりファンド」の投資対象になりました。埼玉県では《さいしん》だけが提供できるソリューションのため、地域におけるブランドの価値向上にも貢献しています。

まちと《さいしん》の未来のために地域をデザインする

齋藤
日本は人口減少時代を迎えて、高度成長時代のビジネスモデルがいたるところで行き詰っていると感じます。地域のコミュニティを盛り上げて経済の活性化をはかることは、私たち《さいしん》にとっても重要なテーマです。埼玉県は東京都に隣接するベッドタウンのような位置にありますが、生産年齢人口は減少傾向にあることから、非常に強い危機感を持っています。
伊藤
確かにそうですね。プロジェクトに関わった当初は、得意先業務との両輪に大きなプレッシャーを感じていました。ですが、実際に地域の方々がビジネスを始めると、少しずつまちの風景が変わっていくのを感じます。コアキナイ塾卒業生の方から、伊藤さんがサポートしてくれたおかげですと感謝されるのは本当にうれしいです。地道な活動ですので、大輪の花を咲かせられるのはまだまだ先かもしれませんが、このプロジェクトに参加できたことで、私たちの仕事の意義をあらためて認識できました。
齋藤
短期的な成果が見えにくい事業ではありますが、地域金融機関である《さいしん》だからこそできることがあります。伊藤さんを含めた、これからの若い人たちには地域をデザインすることを考えて業務に臨んでほしいと思っています。30年、40年という長い期間にわたって地域とともに歩み、成長していけるように。難しい課題ですが、一人ひとりが考えなければいけません。
伊藤
最近、お客さまとお会いする時に、まちづくりに関わっていますと言うと、みなさん興味を持ってくださって、新規のお取引先にも好印象を持ってもらえる機会が増えました。今後はこうした取り組みを積極的に発信して、多くの方々に知っていただきたいと思っています。そして、このまちづくりを成功例として県内各地に広げていくのが今後の夢です。