Weps うち明け話 文:清尾 淳

#382(通算#747)

すべては今日から

 2007年のACLは、グループリーグで勝ち抜けるのは4チーム中1チームだけ。いろいろなサッカー大会でも、あまり例のない「狭き門」だった。

 当時のレッズのライバルは、オーストラリアのシドニーFC。第2戦で当たり、いきなり2点を先行されたがレッズは追いついて、ドローに持ち込んだ。アウェイで勝点1をもぎ取った感があった。

 その後、レッズはホームで上海申花に勝ったがアウェイでは引き分け。なかなかシドニーFCを引き離せなかった。

 第4戦を終えてレッズは2勝2分けの勝点8、シドニーFCは2勝1分け1敗の勝点7。最終節、ホームでの対戦を残して、このリードは絶対に保たなければならなかった。

 

 第5戦、5月9日。レッズはインドネシアに遠征し、ペルシク・ケディリとのアウェイ戦に臨んだ。グループリーグ初戦、埼スタで3-0と圧勝した相手だが、ホームではここまで2勝。シドニーFCと上海申花を下している。勝点は6で、まだグループ1位の可能性を残しているだけに不気味な存在だった。

 

 嫌な予感が現実のものとなった。先制したレッズだが逆転され1-2で折り返す。後半、ポンテと阿部のゴールで再逆転に成功し、そのまま逃げ切るはずが、終盤同点に。

 まさかのドローで勝点は9にとどまった。シドニーFCが勝っていたら、順位は逆転し、レッズは最終戦で勝たなければならなくなる。あの強いシドニーに。暑いというより熱いインドネシアにいて、冷たい汗が背中を流れ落ちた。

 

 帰り支度と取材がごっちゃになったような時間に、情報が入る。何とシドニーが上海と0-0! 勝点はレッズが1差で上のままだ。今度はホッとして汗が流れた。

 ケディリはホームで強かった。もし前半1-2のまま試合が終わっていたら…。レッズとシドニーFCは勝点8で並び、総得点でシドニーが上回っていた。不利な状況で最終戦を迎えるところだった。

 

 試合が終わったときは、「勝点1しか」取れなかったことが残念だった。しかし、その後他会場の結果を知り、それは「貴重な1」に変わった。ケディリとの試合もシーソーゲームだったが、僕らの気持ちも下がったり上がったり忙しかった。

 そして5月23日の最終戦。レッズは埼スタでシドニーFCの猛攻を受けたがしのぎスコアレスドロー。勝点1ずつを積み上げ、レッズは1差でグループEを勝ち抜けたのだ。6試合で取った勝点は10。勝点3が2試合、勝点1が4試合だ。どこで「1」落としていても、レッズの2007年ACL優勝はなかった。

 

 今から思うと「反則のようなメンバー」で、本当に強かった印象がある当時のレッズだが、こんな薄氷を踏むようなグループリーグの戦いぶりだった。

 

 

 そして2013年の今日、レッズは埼スタに広州恒大を迎える。

 

 広州恒大:勝点10

 全北現代:勝点6

 浦和レッズ:勝点4

 ムアントン:勝点1

 

 2位まで勝ち抜けるグループリーグを突破するには、残り2試合を2つとも勝って、他の結果次第という芳しくない状況だ。

 だがサッカーでは、特にACLでは何が起こるかわからない。可能性でいえば、グループ1位になることだってあり得るのだ。

 4月9日、韓国の全州市でもぎ取ってきたものが「勝点1しか」なのか「貴重な1」なのか。

 すべては今日の試合に勝つこと。そこから始まる。

 もしかして、まだ埼スタに行くのを躊躇している人。あなたの声が、あの勝点1を「貴重な1」に変えることになるかもしれません。

(2013年4月24日)

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