Weps うち明け話 文:清尾 淳

#426(通算#791)

前日

 邪魔になるかな―。
 自分にそう問いかけながら車のスピードを緩めた。
 ふだんなら渋滞する時間、渋滞する場所ではないはずだが、前方に長く続くブレーキランプの列。
 浦和美園駅前の交差点を過ぎて、あとは埼スタまで一本道。あと数百メートルというところで、ノロノロ運転になった。時間は6時10分。まだ20分もあるし、ゆっくりでも車は動いているから駐車場が満杯ということはなく、入るの時間がかかってスピードダウンしているのだろう。だが僕の車の前後あたりの人は気が気ではないはずだ。万が一、6時半に遅れたら、抽選に参加できない。

 冒頭の「邪魔」というのは、ナビスコ杯決勝の自由席入場順前日抽選に参加するわけではない僕の車が1台入ることによって、後ろの人が遅れることになる。そうならないように、早めに出発したのだが。
 今日はすごいかも―。
 そんな予感がした。
 そういえば、ふだんこのへんを通勤などでこの時間通っている人は思わぬ渋滞にびっくりしたのではないか。ご迷惑をおかけしました。

 東駐車場を過ぎた。先日のカシマツアーの集合場所になった、広いところだ。だが、そこはすでに車がぎっしり。後で埼スタに聞いたら、ここには500台近くが駐車可能だそうだ。サポーターが1人立って、正面駐車場に回るよう、誘導している。そこを過ぎるとスピードが上がった。おそらく、みんなが東駐車場前でスピードを落とすため、後ろがノロノロ運転になったのだろう。
 正面駐車場に入った。近い方の北側はすでに満車。通路にもとまっている。南駐車場まで行くと、さすがに空いていた。だが通路の分がみんな中に入ったら、ちょうどいっぱいくらいか。やはりすごい。一昨年はこれほどじゃなかった。
 明日のタイトル獲得に懸ける気持ちの大きさ、というより、そういう気持ちになっている人の多さ、それがわかる。

 6時23分。待機列のところについた。北門から続いているという列は、すでに正面入り口をだいぶ過ぎている。手を上げて最後尾を示しているサポーターの位置は、この時間で南広場に達していた。あと7分。6時半の抽選開始までには、南門まで延びるのではないか。埼スタの外側を半周することになる。5列だから、×5人か。
 今度は最前列まで行ってみる。その間に抽選が始まったようで、列が動き始める。白いビブスを着たサポーターが係員として声を掛けたり、抽選箱を管理している。ホームゲーム前日の抽選も、こんな感じなのだろうか。いつもはMDPの作業がまだ終わっていないので、来られないのだ。今回は1日早く終了したので、来られた。聞くと、ふだんのホームゲーム前日は300人から400人ぐらいが集まっているそうだ。

 列の最後尾が見えた。間もなく抽選が終わる。全部終了したのは7時34分。約1時間だった。
 今日、抽選に訪れたのは約3,200人だということだ。いつもの約10倍。準備に当たったサポーターは暗いうちから来て、大変だったと思う。だが、この前日の作業が、明日のスムーズな入場に欠かせない。そして試合当日のスムーズな入場は、応援にエネルギーを集中させるのに欠かせない。
 自分たちのためのようでもあるが、つまりはレッズのためなのだ。
 何人もいる知っている顔の中で、違和感のあるサポーター。
 スーツなのだ。レプリカらTシャツにジーンズ姿しか見てないサポーターがスーツを着ると、一瞬誰かわからなかったりする。今日は平日だから、これから出勤か。今日は、仕事になるのか? いや、ふだんの仕事を人一倍こなしておかないと、いざ応援のために休んだり、土日出勤を断ったりできないから、よけいに熱心に仕事をしているのか。

 国立競技場の千駄ヶ谷門には、順番取りのシートを張りに来た人向けに、この前日抽選を知らせるチラシが張ってあった。用意は周到だ。

 明日はこの何倍ものサポーターと会う。
 帰りに何人と笑顔で握手できるだろうか。
EXTRA
 明日のナビスコ杯決勝MDP特別号は、午前7時半から9時45分まで、国立競技場千駄ヶ谷門の当日券ブースで販売します(レッドボルテージでは午前7時から)。写真左側のところです(赤と黄色は明日の対戦カードではなくtotoの看板で、シャッターが開くと見えなくなりますから、これは目印になりません)。
 混雑緩和のために仲間に届けるのを手伝ってくれる人は7時に、ここへ来てください。
 ただし本日中に清尾まで連絡を。hag03546@nifty.com

(2013年11月1日)

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